下手なバイトよりまし?


従業員充足率、低い方から85%、89%、93%


居酒屋が最も低く、続いてファミレス、喫茶となる(日経産業新聞4月13日)。深夜労働が多くて、仕事もきつい。ついでに職場の先輩も厳しいイメージがある。おまけに客は基本的に酔っぱらっている。言いがかりをつけられることだってあるかもしれないし、そもそもまともに話が通じないこともある。


ということで居酒屋は職場として人気がない。仕方がないと思う。


客の立場からみても、特にチェーン店系居酒屋の接客で感じよい思いをすることは滅多にない。さすがに『和民』などではまだ、バイト教育もきちんとされているみたいだけれど、たいていはおざなりである。ひどいところなどは、バイトの店員さんが香水ぷんぷんだったり、靴のかかとを踏んづけてぺたぺた歩いてたり。そんな店員さんに当たったら、こっちがげんなりさせられる。


人手不足と従業員教育は居酒屋チェーンのアキレス腱、ということはそこにビジネスチャンスがあるということだ。


そこでチェーン各社に導入を働きかけているのがセルフ注文端末である。これについては3年ぐらい前、居酒屋チェーンの仕事に関わっていたころに端末メーカーの人から話を直接聞いたことがある。さすがに当時はまだ、接客を機械に任せていいのかといった拒否反応が居酒屋各社には強かったようで「正直、なかなか厳しいです」とおっしゃっていたのが印象に残っている。


しかし、背に腹は代えられない状況に追い込まれてきたのだろう。ニュートーキョー、コロワイドなどがタッチパネル式の端末導入に踏みきり、コロワイドでは410店舗で1万3千台が稼働中だという。


コロワイドでは「セルフ端末がパート従業員1〜2人分の働きをしてくれ、しかも人件費は3%減、ついでに客単価も5〜10%アップ」と良いこと尽くめのようだ。客層の中にはもしかすると、生身の人間に接客されるよりも「ケータイ」端末の方が気楽で良いという人たちが出てきているんじゃないだろうか。


ケータイ世代である。


彼らはケータイの、しかもメールでのコミュニケーションを何より得意とし好む。であるなら、居酒屋での注文もケータイでやることに何の苦も不満も感じないだろう。むしろ、その方が彼らにとっては慣れ親しんだコミュニケーションメディアではあるぶん気安く使える。しかも、そうした世代に受けるようなゲームや占いなどのコンテンツがセルフ端末には組み込まれている。ケータイ世代にはうってつけのメディアといえる。


そして、やがてはこれがもっと上の世代にも受け入れられる可能性も否定できない。それは冒頭に述べたように特に安い居酒屋チェーンでの接客がひどいからだ。


態度が悪いぐらいなら、少々我慢もする。が、そういう店員さんに頼むときに何が不安かといって、注文がちゃんと通っているかどうかがものすごく不安なのだ。居酒屋で注文をきちんと伝えるなんてことは、イロハのイではあるが、それすら安心できないのであれば、自分で頼む方がよほど心落ち着いていられるではないか。


しかも自分で調理場に直接頼むとなると、何をどのタイミングで頼むかを自分でコントロールできる。店員さんが少ない居酒屋なんかだと、とりあえず一回注文を聞いてもらうときに、あれもこれもと全部を頼んでしまいがちだ。だって次にいつ注文できるかわからないとなると、どうしてもそんな注文の仕方になるでしょう。おかげでテーブルの上は満杯、しかもおよそお酒をじっくり楽しみながらの食事とはいえないようなカオス状態がテーブル上に展開されてしまう。


これが自分で「しか」と注文を伝えられるなら、最初は「このあたりをアテにして、軽くビールを飲んで」と、自分のペースでじっくりと流れを組立てることができる。それより何より酒飲みにとっては、アテだけがあって飲み物のがないという破滅的な状況を避けることができる。


たとえばビールを飲んでいるなら、ジョッキのお代わりを注文するタイミングは非常に難しい。ジョッキが空になっているのをすぐに見つけてくれるお店なら何の問題もない。さらにいいお店は、残りがグラスの5分の1ぐらいになったら、ごく自然に「お代わりはいかがですか」と声をかけてくれる。ところがジョッキが空になってから声をかけているのに、いつまで経っても気づいてくれない店もある。最悪である。


ビールから他のお酒へ移るときも同じだ。というぐらいに難しいドリンクオーダーのタイミングを、自分でコントロールできることは何より心強いではないか。


ということは下手におばかな従業員を雇うぐらいなら、セルフ注文端末の方が店にとって「良く」、客にとっても「マシ」なのだ。とはいえ、よく気のつく人にきちんと接客してもらうのが、よりうれしくくつろげることもまた確かである。居酒屋業界は今後、極端な二極化が進んでいくのかもしれない。とりあえず中途半端なところがサービスにおいても、また経費構造的にみても厳しい状況に追い込まれることは間違いなさそうだ。



昨日のI/O

In:
Out:

昨日の稽古: