タクシー値上げの成否は


91年度約2兆8千億円が05年度には2兆円に


タクシー(ハイヤーを含む)のマーケットサイズである(日本経済新聞4月22日)。15年でほぼ4分の3にまで縮んでいる。思い起こせばバブル華やかし80年代後半、忘年会シーズンに何が困るといって、帰りのタクシーが見つからないことがいちばん頭が痛い問題だった。


忘年会である、だから当然季節は12月である。寒いのである。しかもタクシーしか帰宅手段がない時間帯である。よけいに冷えるのである。おまけにほろ酔い(というか、むしろ泥酔気味か)なので、寒気にさらされているうちに、どんどん体の芯から凍えてくるのである。その頃は底冷えの町京都に住んでいたから、夜中にタクシーが見つからないのは余計に応えた。


ところが時代は変わり、今や夜の繁華街にはタクシーが列をなしている。これはこれでタクシーに乗る側にそれなりの覚悟を求められる。大阪や京都から「奈良まで行ってんか」などという場合は何も問題はない。それこそふんぞり返っていれば良いのである。いや「奈良までやけど、なんぼにしてくれる?」なんて交渉もありである。


然るにこれが梅田から天満橋あたりまでだとどうなるか。「すみません(といきなり低姿勢から入らなければならない)。近くらしいので申し訳ないのですが(あくまで、地理に疎いのだというストレンジャーを装いながら、さらにすまないという誠意を示すべきである)、天満橋というところまで(目的地を知らないフリを装う)お願いできますか(徹頭徹尾標準語を通し、関西人でないことを暗示する)」ぐらいの配慮をした方がトラブルに逢う確率を下げることができる。


何しろ運ちゃんの方は、客が少なくてイライラしてるんである。時間帯によっては、そろそろその日の水揚げが決まりかけていることもある。ここらで一発、ロングの客を拾わんかったら今日もオケラやないかい、ぐらいにテンパっているドライバーもいるだろう。そのために新地の出口で粘ること2時間「ええ客来たってや〜ほんまに、たのんまっせ」気分から「どないなっとんねん、しょうもない客やったらはったっすぞ」モードに入っている方も多いことだろう。


そんなところに「悪いけど、天満橋まで行ったってや」なんていうのはわざわざトラブルの種をまいているようなものだ。


運転手さんの機嫌が悪いのももっともな話である。何しろタクシーはこの10年間、値段が据え置かれたままだった。むしろ大阪、京都などのタクシー激戦区では値下げ競争が行われてきたぐらいである。おかげで5000円以上割引制度なんてことまでやっている。そのタクシー運賃がいよいよ値上げに転じるという。


タクシー業界は2002年に制度改正があり、タクシー台数が増え新規参入も自由化した(だから競争が熾烈化した)。自由化はとりあえず価格競争への流れを作り出す。特に付加価値での勝負が難しい業界では、よりそうしたコスト競争への傾向が強まる。ユーザーにとっては競争の結果、価格が下がることは(たとえば安全性など他の諸要素に悪影響が出ない限り)喜ばしい限りである。


ところがタクシー業界の動きは、その逆となっている。競争が厳しくなりどうにもならなくなってきたので(日銭商売でつねにキャッシュを持っているタクシー会社は,運転手さんの経済状況はともかく、経営状態は非常によいはずだけれど)業界として一致して値上げをしたいと。


このあたりに規制で保護されてきた業界の弱さを見る。


いわゆる護送船団方式でやってきた業界というのは、こうまでも弱いものかと。コスト競争が起こっている状況こそを、なぜチャンスと見なせないのか。競争が起これば、そこにユーザーの関心も集まる。これこそが絶好のチャンスではないか。


競争が起こっていなければ、ユーザーも何も感じないはずだ。だから、少々差別化をしたところで気づいてもらえない可能性が高い。ところが競争が激しくなれば,ユーザーだって少しでも良い条件を求めるようになる。


最初は単純な価格競争からスタートしたとしても、今どきのユーザーは馬鹿じゃない。その判断基準には必ず価値/対価バランスがある。仮にキッカケは価格競争だったとしても、賢いユーザーほど「この価格で、この価値は妥当なのか?」と考えるようになる。


であるなら、逆張りだって十分に戦略オプションとなってくるはずだ。つまりこういう価値を理解してくれるお客様に、これぐらいの対価を求めて、きっちり納得、満足していただく作戦である。そして、そういう理解力ある客こそが上客、リピーターとなってくれることはほぼ間違いないだろう。


だからマーケット環境が厳しくなっている今こそ、タクシー業界は自社を「ダントツ化」できる千載一遇のチャンスが巡ってきていると思う。ということをMKタクシーは考えてきたのじゃないだろうか。



昨日のI/O

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昨日の稽古:西部生涯スポーツセンター

・移動稽古
・型稽古(太極一、太極三、足技太極一、平安一)
・受け返し稽古(突き・蹴りに対して)
・二人の敵を想定したミット稽古
・二人の敵を想定した組み手稽古
・組み手稽古