Curvesの価値
半年で160店増、会員数は5万人増
フィットネスクラブ『カーブスジャパン』が相変わらず好調だ。日本一号店オープンが05年7月、そこから1年3ヶ月で260店舗、会員数5万人となったのが、昨年10月の話(→ http://d.hatena.ne.jp/atutake/20061008/1160271767)。
これを年間ベースに直せば、出店増加200店/年、会員増加4万人/年である。しかるに06年10月からの半年での伸び率で単純計算すると、年間出店数320店舗、会員増加数10万人となる。グラフにかけばかなりな急勾配の右肩上がりということになるだろう。
実際、同社社長坂本氏は日経産業新聞のインタビューで
「先行して市場が拡大した米国などの例を考えると、三年間は成長が続くだろう。当社は2010年までに国内二千店体制とし、九十万人の会員を集めたい」
(日経産業新聞4月27日・22面)
と答えている。
これが実現したときフィットネス業界に与えるインパクトはいかほどになるか。少し古いデータになるが平成16年度時点で日本のガリバー的ナンバーワン企業がコナミスポーツである。同社の店舗数が205店舗、会員数が83万人。だから坂本氏の目論見通りにことが運べば、カーブスジャパンがフィットネス業界ナンバーワン企業に躍り出る可能性がある。
その成長ぶりは、やはり尋常でない。ということは、カーブスジャパンが潜在ニーズを掘り当てたことも間違いない。ではCurvesだけが見つけることができ、これまでほかのフィットネスクラブが提供できなかった価値とは何だろうか。
価値は二つあると思う。いずれも女性心理を巧みについている。
一つは時間価値である。これは30分限定にしたことと、これまで見逃していたけれどもその立地にある。30分限定でトレーニングできることが、忙しい女性たち(主婦を含む)にとってどれだけ重要なメリットになるかはこれまでにも述べてきた。ところが立地がもたらす価値を見落としていた。
Curvesはコンパクトなスペースでも開業できる。だから従来型フィットネスクラブのように広大なスペースを必要としない。つまり狙いを定めた商圏内での主婦たちの動線を考え「買い物ついでにトレーニングでも」ニーズをくみ上げることができる。これが実はかなり大きかったはずだ。
なぜなら女性にとっては、トレーニングの行き帰りに人目を気にする必要があるかどうかが極めて大きな問題となるからである。以前、フィットネス関係の仕事をしているときに、主婦の方10人ぐらいからデプスインタビューでいろいろ話を伺ったことがある。
彼女たちはいずれも老舗クラブ(ということは施設が古く、サービスもそれほど良くはない)の会員である。そして電車で二駅のところに、最新設備とリラックススペースまで完備したフィットネスクラブがオープンする。そこでまっさらなクラブにご招待し、「どうですか? これだけの快適さがあれば、こちらに来られることは考えられませんか?」と尋ねてみた。
するとほぼ全員から同じ答えが返ってきた。「確かに何もかもが天国と地獄ぐらいの差があって、新しいところはさすがに素晴らしい。でも、スイッチする気にはならない」と。その理由が「だって行き帰りに人目を気にしなきゃなんないでしょう。それはすっごく面倒なの」だった。だから女性たちの生活圏内立地は時間価値提供の上で非常に有利に働く。
もう一つの価値は、女性たちが自分の内面と向かい合うTPOの提供ではないだろうか。Curvesで女性が取り組むのはサーキットトレーニングである。これは30秒を一区切りに、次から次へとマシンを変えて単純にトレーニングするだけ。エアロビクスや最新式のトレーニングマシを使ったトレーニングのようなおもしろさ、楽しさは皆無に等しい。
与えられたメニューを淡々とこなすだけである。しかし、そんなふうに一人で何かに一心に取り組む機会が、もしかしたら女性たちにはなかったのではないか。自分と向き合うのは、なかなかに新鮮な経験である。しかも30分というのがミソだ。
これが2時間ともなるとだれる。人間の集中力は平均的には45分ぐらいしか続かない。だからCurvesでトレーニングしているぐらいなら、集中することができる。しかもここには男性はいない。その視線を意識することもない。これもCurvesが受けている理由の一つではないだろうか。
もちろん実際的な効果も上がっているはずだ。だって一回2時間かかるフィットネスならせいぜい週に一回しか行けないけれども、30分で済むなら週に2〜3回は通えるだろう。どちらが短期間で実感できるだけの効果を出せるかは、はっきりしている。
といった要因でこれからもCurvesは順調に伸びていくのだろうか。仮にCurvesにリスクがあるとしたら、それは何だろう?(というのは、また何かの機会に考えてみます)
昨日のI/O
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・レッシュ式懸垂、腹筋、スクワット