ビールか、ガソリンか


穀物としての国内生産量ゼロ


これが何だと尋ねられたら、正解をいえる人はたくさんいるのではないだろうか。食料自給率の極めて低い日本のことである。さすがにお米だけはたくさん作っているけれども、国内生産量ゼロの穀物なんていくらでもある(んじゃないだろうか、詳しくは知らないけれど)。


とりあえずトウモロコシである。


そのトウモロコシを日本はどこから買っているか。アメリカである。ところが、トウモロコシの安定供給がどうもあやしくなってきた。アメリカがエタノール生産を2017年までに現在の10倍にまで増やす政策を決めたからだ。現時点でエタノール用に回されているトウモロコシは全体の約2割らしい。ちなみにアメリカ産トウモロコシの同じく約2割が輸出用となっている。


ということはトウモロコシの生産量がこれ以上増えないとしたら、アメリカで作られるトウモロコシは今後、すべてエタノール用に回されることになり、日本はトウモロコシを輸入したくてもできなくなる。


現時点では中国からも割合は小さいがトウモロコシを買っている。しかし中国もいつまでもよその国に輸出していられるほどのんきな状況にはない。いずれはおそらく石油と同じ道を辿るのだろう。つまり以前、日本は中国から石油を輸入していた。が、中国国内での石油消費量が増えるに従って、日本向け輸出に回す余裕がなくなり、今では中国自身が石油に関しては輸入国となっている。


トウモロコシまた然りである。


日本に輸入されたトウモロコシの用途はといえば、飼料用が7割がたを占めている。残りはコーンスターチ用ということで、これは発泡酒第三のビールの原料となっている。ということは、アメリカからトウモロコシが入らなくなれば、こうした発泡酒第三のビールを日本では作れなくなるということだ。


仮にそんなことになれば、日本はまた別の材料から新たなビール(今でもすでに第四のビールというのがあるらしいが、それがいかなるものかは知らないし興味もない)を造り出すのかもしれない。原材料の安定供給を考えるなら、米から作るビールというのがいちばんありそうな線だと思うけれど、そんなコトが可能なのかどうかはまったくわからない。


ただ一つ、ほぼはっきりしているのはアメリカ人のガソリンを作るために、日本人は発泡酒やビールを飲めなくなりそうだということ。いや被害は何もこうした飲み物だけとは限らないだろう。飼料用のトウモロコシも入って来なくなるわけだから、牛、豚、ニワトリなどを国内で育てることも難しくなる恐れがある。いうまでもなくこちらの方がうんと困ったことになる。


日本に食料危機が訪れるかもしれないことは、以前からいろんな形で指摘されてきた。そもそも全世界が水不足に悩まされているのに、いつまで日本だけがじゃんじゃん水を輸入し続けられるかとは早くから警告はされていたはずだ。日本が輸入している水とは、もちろんリアルな水ではない。バーチャルウォーター、つまり食料である。


食料を育てるのには水が必要だ。だから食料を輸入することは、水を輸入しているのと同じである。やがては、食料の形で日本が水を大量に輸入していることが世界的な問題になるだろうと予言されていた。


円が暴落して購買力が落ちるのが先か、あるいは水不足に悩む国々が(その筆頭が中国であり、中国は日本にとっては食料をたくさん売ってくれる相手である)これ以上外国に水資源を持ち出すことはできないと言い出すのが先か。いずれにしても何らかの対策を早く講じないと大変なことになるのだけは間違いない。


と思っていたら、とんでもない環境トレードオフがあったというわけだ。要するにアメリカの人々が石油に替わるガソリンを求めるために、日本に食料が入って来なくなるというカラクリである。エタノール入りのガソリンが先日、日本でも発売された。それを使うことが環境にやさしいなどと言われてもいる。確かに一理はあるのかもしれないけれど、トウモロコシを原料とするエタノールを使うのなら、それは食料とのトレードオフになっていることを意識しておいた方がいいと思う。


アメリカは、クルマなしでは人々の暮らしが成り立たない社会となっている。だからあちこちで戦争してまで石油利権を確保しようとしているわけだけれど、頼みの石油もどうやら先が見えてきた今、トウモロコシをガソリンに変える戦略に舵を切った。


これを放置していると日本の未来像は明るいものとは決してならない。といってアメリカの人々のクルマをベースとしたライフスタイルを根底から覆すことも無理である。ここは一つトヨタさんにがんばってもらって、エタノール以外で走るクルマを一刻も速く開発してもらいたい。切に願う。




昨日のI/O

In:
Out:
某社ソフト添付小冊子原稿
某ショッピングモール情報誌用原稿
某社情報誌対談原稿


昨日の稽古:

・レッシュ式懸垂、腹筋