タイムマシンモデル


94年からの10年間でほぼ半減


従業員20人以下の中規模事業所の数である。中小企業が苦しんでいる。大企業は景気回復の恩恵をたっぷりと受けているが、そのおこぼれにも中小企業は預かれていないのが現状だろう。では、今後も日本の中小企業は凋落の一途をたどるしかないのだろうか。


ここで思い起こすべきは、ソフトバンク孫正義社長の『タイムマシン経営』ではないか。孫社長のタイムマシンとは、IT先進国アメリカと遅れている日本の間の時差をフル活用することを意味する。つまりアメリカで続々と登場する最先端のビジネスモデルを片っ端から仕入れて、それを日本に持ち込んて展開する。


もちろん、すべてが成功するとは限らない。失敗に終わるモデルの方が多いのは覚悟の上だ。ベンチャーキャピタルでさえ打率3割(株式公開)をキープできれば上出来とされる世界である。よりリスクの高いタイムマシンも出るなら1割でも御の字というところだろう。事実、ソフトバンクを支えているのはYahoo!だけではないか。


その意味では、現代中小企業版タイムマシンモデルは、ソフトバンクモデルよりその成功率ははるかに高い。すなわち産業先進国日本で製造業を支えてきた中小企業の技術力を、遅れているBRICs諸国に持ち込むのである。


そんなこと、もう10年以上前から中国でやってるじゃないかと言うなかれ。当時の中国進出ブームは、大企業主導型ではなかったか。すなわち自動車ならトヨタが中国進出する、家電なら松下が中国に行く。だからそうした大企業と上下関係にある企業もこぞって中国詣でをしなければならない。


大企業と下請けの関係は、国内の図式がまったくそのままに中国に持ち込まれてきた。これではタイムマシンもへったくれもない。そうではなくて、今度は自社が単独で、自社の技術力を武器に、現地マーケットを目指して進出するのである。もちろん、これは単なるバクチではない。BRICs諸国の経済、産業の発展状況を踏まえての話である。


いまBRICs諸国はおそらく、日本のおおむね60年代ぐらいの状況にまで来ている。すなわち「とにかくモノがない」時代が一段落し、今後は「質の高いモノ」を消費者が求める時代への転換期とみていい。そこでいちばん求められるものは何だろうか。


高品質のモノを作り出すための生産材、産業材などではないか。そこに日本の中小企業のチャンスがあると思う。人件費などの低コストメリットを求めての進出ではない。勝負する土俵はBRICs諸国である。現地の産業材、生産材マーケットに殴り込みをかけるぐらいの意気込みで進出するのである。


07年版中小企業白書では「メッシュ化」という言葉が使われているそうだ。これは中小企業が生き残りを賭けて、国内での上下関係や系列を抜け出し、海外に網の目のように広がっていくことを意味するらしい(日本経済新聞5月13日)。国内で大企業の系列化に入っていたのでは、多くの中小企業にとって今後の生き残りの目はあまりない。


もちろん競争環境はよりシビアになっていくだろう。そして競争相手は国内同業に限らず、今度は逆にBRICs諸国が相手として台頭してくることも考えられる。さらには人材確保の問題もある。国内でこれから(大学全入時代を迎える)確保できる人材の質とそれにかかるコストと、たとえばBRICs諸国で獲得可能な人材の質と獲得コストを秤にかけたとき、中小企業の生き残り戦略としてはどちらが有利なのか。


存続を考える中小企業にとってはBRICs諸国を狙ったタイムマシン戦略は、有望な戦略オプションだと思う。


昨日のI/O

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