裁判員になれといわれたら


裁判員として参加したいかについて
「参加したい」(25.6%)
「参加したくない」(70.0%)

内閣府世論調査、2005年2月実施→ http://ja.wikipedia.org/wiki/裁判員制度


2年後にスタートする裁判員制度である。もし、運悪く「裁判員」に選任されたらどうなるか。「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号)」に基づく一種の国からの命令に逆らうことは、基本的には許されない。


次のようなケースに当てはまる場合は証明書を提出すれば辞退できるそうだが、たぶん私の場合は(今のところ)該当しないだろう。
・70歳以上
地方自治体の議員(会期中に限る)
・学生や生徒(通信制の場合等は除く)
・過去5年間に裁判員を経験
・重い病気
・親族の介護・養育
・その他政令(未制定)で定める上記に準ずる事由


だから本当に運悪く「くじ」で当たってしまったらやらなきゃならないようだ。でも、そんなの本当にできるんだろうか。


しかもこの制度が適用されるのは、地方裁判所で行われる刑事裁判のうち傷害致死、殺人事件などだという。殺人事件の際に裁判員になったりしたら死刑の是非を判断しなければならないケースに当たる可能性もある。地方裁判所なのでそこで刑が確定するわけではないが、そんな人の生き死にに対して自分が判断を下すというのはどういうことなのか。まったく想像もつかない。


もとより法律を勉強したことなどない。恐らくは裁判員選任制度の対象となる方の90%以上がそういう方達だろう。仮に自分に問題を限定したとして、法律を知らない人間が法律に基づいて人を裁くことに合理性があるんだろうか。ここが最大の疑問である。


裁判員は審理に参加して証拠の取り調べも行なうらしいが、これも一体どうやってやるのだろう。中には裁判員に選任されたことを機に法律を学ばれるまじめな方だっているだろう。一方では「法律なんて知らねえよ、なんかよくわかんねえけど、黒か白かはっきり決着つけりゃいいんだろ」的なスタンスで審理に臨まれる方も当然いらっしゃるだろう。当然、この両者では判断の基本的な水準が違ってくるはずだ。


どういう方が選ばれるのかは、あくまでも「くじ」によるという。そんないい加減なことでいいんだろうか。仮に純粋なくじであるなら、どれぐらいの確率で裁判員が当たる可能性があるのか。


最高裁判所によれば、平成17年に日本全国の地方裁判所で受理した事件の概数111,724件のうち、裁判員制度が施行されていれば対象となり得た事件の数は3,629件だという。基本的に裁判員は一つの事件について6人必要とされるから、一年間でざっと2万人。20歳以上70歳未満人口が9000万人ぐらいだから確率にして0.02%。1万人に二人といったところだろうか。


2005年の交通事故死亡者数がだいたい7000人弱だから、その三倍ぐらいになる。これは結構な数ではないか。


私のような個人(超零細)商店の場合、裁判員に運悪く選任されてしまったら、それは間違いなく死活問題となるだろう。仮にインタビューの取材日と裁判員として招集される日が重なったらどうなるのか。正当な理由なく出廷しない場合は10万円以下の過料が課されるらしい。単純に数字だけの計算をするなら、仮に過料が10万円だとすれば仕事を選んだ場合はまずたいていの場合は赤字だ。


逆に裁判員に選ばれているからといって仕事の方を断れば、それはそれで大きなリスクを抱えることにもなる。フリーランサーが仕事を断れば、その分の収入は当然入って来ない。しかも被害はそれだけにとどまらない。いちど仕事を断ると、その仕事は別の人に振られるので次からは来なくなるリスクだってある。


ということで裁判員制度は、この制度専用の有給休暇制度を導入できるような大企業の社員(たとえば東京電力トヨタにあるらしい)ならともかく、我々のような個人事業者にとっては生活に甚大な影響を及ぼすことも考えられる。そこまでして裁判員をやらなければならないとなった場合、果たして冷静かつ公正な判断ができるんだろうか。


万が一、自分が裁かれる立場にあると仮定した場合、そういう人が裁判員に当たってほしくはない。裁判が公正に行われると信じることができるのは、裁く側にいる人間がプロフェッショナルであるからだ。しかし裁判員制度がスタートすれば、プロどころかとんでもない人に裁かれなきゃならないリスクだってあるわけだ。


オォ〜、ここで気がついた。もしかしたら裁判員制度導入の真の狙いは、これからは裁判がそれぐらいアバウトなものになるから、滅多なことで刑事事件を起こしてはなりませんよ、という国民への警告であったのか。なるほど、お国の考えることは奥が不快。




昨日のI/O

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某社ソフト添付小冊子原稿

昨日の稽古: