とっても賢いプリペイド


利子のいらない資金50億ゲット!


あまりにもユーザー希望者が殺到して、一時新規受付をストップしているパスモでは、入会時に500円のデポジットを取られる。もちろんデポジットなので退会時には返してもらえる。このパスモ、カードの手当が付かないのがネックになっているようだが、いずれ早い時期に1000万人を突破すると予測されている(「プレジデント」6月19日号)。


すると、どうなるか。


一週間ほど前のエントリーでテレフォンカードの巧妙なカラクリについて書いた。テレフォンカードの場合は、カードが死蔵される分だけNTTさんが丸儲けみたいな話だった。このパスモデポジットモデルも相当に強烈である。ここでは規模の経済によるレバレッジ効果が強烈に効いてくる。すなわち500円×1000万人がいくらになるか、といった話がプレジデント誌に書いてあった。


実に50億円です。では、この50億円はどう考えればいいか。パスモサイドからすれば、いずれは返さなければならない(原理的にはね、実際に何年か経ってみてパスモをやめようかって人が、わずか500円を返してくれというかどうかは非常に微妙な問題だと思うけれど)。返さなければならないとはいえ、利子をつけて返す必要はない。


ということは仮に会員数が1000万人になったとすれば、パスモは利子不要で50億もの資金を調達できることになる。しかも、そのうちの何割か(ざっと半分ぐらいと推測します)は、たぶん返さなくてもいいことになりそうである。これがどれぐらいすごいことか。


仮に50億円を金利3%で借り入れたとしたら、その返済額は1億5千万になる。つまり金利の付いた借り入れなら、毎年利益が1億5千万だけ減ることになる。パスモビジネスがどれぐらいの利益率を見込んでいるのかはわからないけれども、粗利率が10%程度だと仮定すれば売上ベースでは15億は稼がなければならない。


ホテルでデポジットといわれれば、どうせ明日か明後日には清算するのだから、まあ仕方がないわねとそれなりの額を事前に預けることにも抵抗はない。というぐらいにはデポジット制度が普及してきていることを前提としてパスモが、デポジットを取っているのだとしたらうまいなあと思う。


しかもその額が500円というのが絶妙ではないか。500円といえば今ではワンコインと表現されるぐらいの感覚である。要するに大したことはない。だがパスモのように会員数で勝負するビジネスでは、この「チリも積もれば山となる」作戦が効果的だ。


これまた以前にも書いたように、この「チリ山」ビジネスの典型がGoogleである。彼らの基本的な考え方は、一人の人間から一億円をいただくのではなく、一億人の人間から一円ずついだたくモデルである。誰だって一円ぐらいなら出していいよって考えるわけだが、このビジネスが成立するためには一億人から一円ずつ徴収するコストをゼロに近づけなければならない。そこをコンピューターサイエンスの粋を駆使して解決したところにGoogleの優位性がある。


ネットの世界でもマイクロペイメントやドネーションなど多くの人から少額でソフトなりコンテンツなりを買ってもらうモデルが模索されてきたが、結局はそれほど成立していない(もしかしたら成立しているケースもあるのかもしれないけれど)。その理由は集金にコストがかかるからだ。


もちろんパスモサイドからすれば「このサービスを始めるために、一体どんだけ初期投資がかかった思てんねん!」と反論されそうだけれど。でも、どんなビジネスでもイニシャルコストはかかる。さらにいえばある程度ビジネスが軌道に乗るまではそれなりのランニングコストも覚悟しておかなければならない。そこをたいていの場合は、融資を受けたり(=利子がかかってくる)、投資を受けたり(=当然リターンを求められる)してまかなうことになる。そして、何とかビジネスを始めたとしても運転資金をやり繰りすることができないがために、成功が見えているにもかかわらずポシャっていくケースが多々ある(一時、黒字倒産なんてイヤな言葉が流行ったでしょう)。


ということを思えば「まず、デポジットをもらいましょうや。それも欲張ったらあきまへんで。きっちりワンコイン、これぽっきりでっせ。たった500円やったら、誰かてほいほいいうてだしてくれますわ。そやけどもし1000万人ぐらい申し込んでくれたらどないまります。50億でっせ、50億。どないでっしゃろ」なんて会話がどこかで交わされたとしたら、これを考えた人はすごいなあと思う。


デポジット、チリも積もれば、山となる」これである。


昨日のI/O

In:
大阪天満宮宮司さん取材
Out:
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某社ソフト添付小冊子原稿

昨日の稽古:

・レッシュ式腹筋、腕立て