ヒルズの凶相
３社の共通項は何か。六本木ヒルズにオフィスがあり（あった）、経営者が住んでいる（住んでいた）企業である。もう一つ、共通項がある。いずれも裁判で罪は確定してはいないが、誰が見ても「悪いこと」をしでかした企業でもある。
だから、何なんだという話ではあるのだが、どうも六本木ヒルズが嫌いだ。東京イケイケベンチャー企業の社長さんたち７人を取材して対談ブログを書く、なんて仕事をしていた時期があって、その頃はヒルズの前を良く通った。タクシーで通り過ぎることもあり、地下鉄から地上に出てヒルズの前を歩くこともあった。
が、どうにもその場からはイヤな感じがした。その感覚が何だったのかはわからない。どこかのブログで誰かが書いていた（それがどこだったのかは覚えていないし、そもそも書いてあったかどうかさえ記憶自体が定かではないのだけれど）のが、あそこは風水的に見て最悪だといったこと。そこで「風水 六本木ヒルズ」でググってみると、確かに墓地の後だったとか風水的によくないといった記事もあるようだ。
基本的に霊感ゼロを自覚しているので、ヒルズで霊的なものを感じたわけではないと思う。あえていうなら、あの外見がどうにもグロテスクに思えて仕方なかったことは確かだ。何となく「バベルの塔」という言葉が頭に浮かんだこともある。
もちろん風水的によくないから、三社（者）が悪いことをしでかしたというつもりはない。そんな因果関係が成り立つのなら、ヒルズに入っているほかの企業や経営者も次々と悪事に染まっていくはずである（と考えてみると、もしかするとこの因果関係が成り立ちそうに思えてしまうのが恐いところではあるが）。
でも、冷静に考えれば元から悪いことに走る資質を持った人たち（誰でも少しは持っているはずだ）が、ヒルズで長い時間を過ごすことで、その資質を開花させてしまったぐらいのことはいえるのかもしれない。
ところでヒルズとは正反対に、訪れるたびに何かいいなあ、ここは心が伸びやかになるなあと感じる場所もある。これまでに近畿を転々としてきたなかでは、やはり京都にそういうものを感じさせる場所が多い。なかでも御所であり、下鴨神社である。奈良にもある。興福寺、東大寺などがそうだ。
コピーライター丁稚奉公をしていた頃の事務所が、御所のすぐ近くにあった。そこで「ちょっとアイデア考えてきます」なんて言い訳をしては、よく御所へ散歩しにいった。気分のいい場所を歩くと素晴らしいコピーがバンバン生まれた、なんてことはまったくなかったのだけれど、そこにいるだけで何かいい気持ちになれることは確かだった。
１年ぐらい前に京大防災研のえらい先生に話を伺ったら、御所は風水的に最高の位置にあるとおっしゃっていた。その先生は風水だけではなく、たとえば地下水の流れだとか岩盤の安定度合いなどから判断しても御所は実に良い場所を選んでいると言っていた。いまから１２００年も昔のことだからボーリング調査などをやったはずはなく、にもかかわらずおそらく京都盆地の中でもっとも良い場所を選んだ昔の人の知恵というか感覚のすごさを話しておられたのが印象に残っている。
たぶん、場所の善し悪しをかぎわける感覚を人は本質的に持っているのだと思う。何となく嫌な感じのする場所、逆にいい感じのする場所ってわかるものだ。そうした感覚はある程度共有されるはずで、共有されるのならばそこから共通項を見出すことができるのだろう。その共通項は何かと考えていった末に、風水学なるものが中国で成立したのではないだろうか。
ありきたりな言い方で申し訳ないが、都会の中だけで暮らしているとやはりそういう感覚が鈍っていくのではないだろうか。そして自分が住まう場に対する感覚が鈍麻すると、それはいろんな判断感覚をも麻痺させていくのではないだろうか。じゃなければ折口会長のように、明らかにまともな介護をしていなかったケースが多かったにも関わらず、それでも「自分は介護をやるべきだ」などとおかしなことを口走ったりはしないだろう。折口会長は「自分がいないと事業が成り立たない」と言ってるらしいが、彼には「自分の売上至上主義的考え方があるからこそ、コムスンが悪事を働いた」と考えることはないのだろう。
堀江さんしかり、村上さんも同じ。名前は出せないけれども、同じくヒルズ族＆上場ベンチャー組のある社長が話していたことも、明らかにまともな感覚ではなかった。風水はよくわからないけれども、ヤバいなと感じる場所にはとりあえず近寄らないようにした方がいいし、その前に「この場所は、ヤバいのかヤバくないのか」とか「ここは何か気持ちがいい」と感じられるセンサーをなくさないようにしたい。
In：
テクノクラフト齋藤社長インタビュー
Out：
キダタロー氏インタビューメモ
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