豚肉かガソリンか


わずか一ヶ月での価格上昇率26%


中国で豚肉が激しく値上がりしている。一方、アメリカではトウモロコシの作付け面積が前年対比15%増となった。豚肉とトウモロコシ、中国とアメリカ。一見、何の関係もないように思えるが、豚肉の価格高騰とアメリカでのトウモロコシ増産は密接に関連している可能性がある。


いささか「風が吹けば桶屋が儲かる」的連鎖ではあるが、その背景には国際的に張り巡らされている資源ネットワークの存在がある。


中国で飼われている豚の餌はトウモロコシである。単純に考えれば、餌となるトウモロコシをアメリカで増産しているなら、需給バランスを考えればその市場価格は下がるはずであり、中国で豚の飼料が上がることもあり得ない。ところが現実にはアメリカでは大規模なトウモロコシ増産が行われているにもかかわらず、飼料用トウモロコシの価格は上がっている。


なぜならアメリカで作られているトウモロコシは、飼料用から別の用途にシフトしつつあるからだ。ではトウモロコシは、一体何に使われているのか。エタノールの原料である。エタノールとは温暖化ガス削減に役立つ代替エネルギーの一つ、日本でも最近エタノールガソリンが登場した。アメリカではブッシュ大統領エタノールの利用を奨励したためにトウモロコシを原料としたエタノール生産が盛んになっている。


アメリカがエタノール生産に力を入れるのは、何も温暖化対策のためだけではない。そもそもアメリカは京都議定書の枠組みに入っていないわけで、目的は他にある。ガソリンの確保である。いま輸入石油への依存度引き下げは、アメリカにとっては国家保障上の最大のといってもいいくらいの重要課題となっている。アメリカも石油を自給できないのだ。


なぜ、それほどまでにガソリン確保が重要なのかは、アメリカへ行ったことのある人ならすぐにわかるはずだ。アメリカはもはや車なしでは生活が成り立たない社会になっている。あの国で今からもう一度、個人の自動車ではなく鉄道やバスなどの公共交通機関を基本的な社会的インフラとして整備し直す、なんてことはおよそ不可能である。だから車を動かすためのガソリンは、アメリカにとっての命綱的資源といえる。


その意味では燃料電池や水素燃料エンジンによる次世代自動車の完成をもっとも強く待ち望んでいる国は、間違いなくアメリカである。そして「バラフライ理論」ではないが、アメリカでトウモロコシをたくさん作ると中国の豚が餓える世の中になっているのである。


もっとも中国で豚肉の値段が上がっているのは、飼料価格が上がっているからではない。その背景にはもっと恐ろしい要因が控えている可能性がある。今朝の日経新聞によれば

口蹄疫や原因不明の高熱で昨年、多くの農家が養豚をあきらめたことがこれに重なった
日本経済新聞6月17日)

とある。


ここで気になるのは「原因不明の高熱」である。一ヶ月ほど前の「CHINA BUSINESS INFOCENTER」にも、中国南東部で豚が疫病で大量に死んでいると伝えられていた(→ http://www.cbiz.cn/newsletter/daily/07/05/18.htm#1)。今のところSARSとの関連性はないようだけれど、だからといってまったく無関係だと決まったわけでもない。だからどうなんだと突っ込まれても、どうしようもないわけで、隣国の住人としてはSARSじゃないことを祈るしかないのだけれど。


ともかくアメリカがガソリンを確保しようとすると、中国では豚肉が大幅に値上がりする。そんな世の中になっていることだけはまちがいなさそうだ。そういうことを見通せるぐらいの鳥瞰的な視点を持っていることが、これからは必要になるのかもしれない。というか少なくとも資源小国の日本で政治家をやっておられる方々には、ぜひとも持っていただきたいと強く願う。





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某ソフト開発物語
テクノクラフト齋藤社長インタビュー原稿

昨日の稽古:西部生涯スポーツセンター

・ミット百本稽古(回し蹴り・逆突き)
・膝を高く上げる回し蹴りのミット稽古
・全力で蹴り、突くミット稽古
・補強運動
・ストレッチ