3Kマーケット

atutake2007-07-02



市場規模1兆1千億円、過去5年間での成長率14%


総体的縮小傾向にある日本のマーケットの中で例外的に伸びているのがペットマーケットである(日経産業新聞6月29日)。なぜ、ペットマーケットが伸びているのかといえば、要因は三つある。いずれも一昔前には考えられなかった要因だ。


その一。少子高齢化の影響で単身世帯が増えている。言うまでもなく一人暮らしは淋しい。そこでペットと一緒に暮らす人が増えているわけだ。


その二は、一匹あたりにかけるお金が増えていること。ひと昔(というか正確には二昔ぐらい前だけれど)にも、もちろんペットを飼う人はいた。しかし、彼らはそれほどペットにお金をかけてはいない。エサは基本的に自分たちの食事の残り物であり、狂犬病フィラリアの予防注射ぐらいはきちんと受けさせるものの、今どきのペット様のようにやれエステだ、トリミングだシャンプーだとお金をかけることはなかったはずだ。ところが今の飼い主は昔と比べてリッチである。子どもの代わりと思えば、ペットにかける少々の出費など痛くも何ともないのだろう。


さらには住宅環境も変わってきている。これまた昔はペットといえば一戸建て住宅でしか飼うことはできなかった。マンションなどの集合住宅でペットを飼うなどまったくの御法度である。ところが最近では「ペット可」のマンションが増えている。それもこれも、やはりペット一緒に暮らしたい人が増えていればこそ。ペットには確かなニーズがあるのだ。


というわけでスケールアップしているペットマーケットを制するためのキーワードが実は3Kであるという。3K、すなわち「小型」「健康」「共生」である。


「小型」とは文字通り、犬でもセントバーナードのような大型犬ではなくせいぜい豆柴ぐらいの小さな犬が好まれることを意味する。何しろペット愛好家の多くが団塊の世代以上のお年寄りである。いくらペットとはいえでかい犬だと散歩の時など引っ張られて大変なのだ。60過ぎの女性でもひょいと軽く抱っこできるぐらいのコンパクトさが何よりというわけである。


小型化が望まれるのは、ペットの生活環境にも関係がある。マンションなどの集合住宅は当然だが、一戸建て住宅でも室内で飼う人が増えている。たとえばせっかくお金をかけてていねいにグルーミングしてもらっても犬の方ではそんなの知ったこっちゃないから、雨でもふればずぶ濡れになり濡れるとそれなりのニオイも放つ。慣れれば一応「くせえなあ」とは思うけれども、ちっとも苦にはならないけれど。


これが一日中家の中で飼うとなると、また話は変わってくる。つまり、いつも清潔にしておいて(だから雨の日などはお散歩にも行かないで)、きれいきれいちっともクサくないわよ状態を保つためには家の中で育てることになる。すなわち「共生」が前提となるわけで、そのためにも小型犬の方が扱いやすい。


そして「健康」である。そうやって家の中でペットと接している時間が長ければ、ちょっとした体調の悪化にも気付きやすくなる。近所にお住まいの方は、愛犬の具合がちょっと悪くなるとタクシーを飛ばして病院へ連れて行ってらっしゃる。これが庭で好き放題にさせているなら、昼間ペットの異常に気付くことなどまずない。せいぜい散歩の時のうんちの様子、あるいは歩いてるときの状況などでよほどおかしい時は「晩ご飯、抜いとこ」といった処置を下すことになる。本当なら野生動物は食事を抜くことで回復に向かうのだが、そうもいってられない。


いまやペットだってヘルシーフードを食べる時代なのだ。ついでにいえばペット用の水とかクリスマスやお正月にはペット用のワインにおせち、なんてものまで用意されている。


といった具合で成熟社会日本だからこそのペットマーケット、その今後はどう読むべきだろうか。ペットの数そのものはまだまだ伸びると読む。その理由はやはり少子高齢化だ。少子ということは一人っ子が増えることでもある。兄弟の代わりにペットを求める子どものニーズがある(実は我が家もそうだ)。当然、室外で飼うより共生する方が、いつもペットと触れ合えるのだから楽しい。従って小型犬を室内で飼うケースが増えるだろう。


ということは、やはりペットの健康問題がクローズアップされてくる。人間サイドからすれば、家の中でペットを「かわい、かわい」とやるのは心癒される行為ではあるが、それはペットの側からみればどうなのか。思うように運動できなかったり、風の動かない室内に閉じ込められたりするのは想像以上にストレスがかかるのではないだろうか。ストレスは病気につながる。だから獣医さんに対するニーズはまだまだ増えるだろうし、飼い主の高齢化に伴って散歩が大変になったりもするだろうか「お散歩代行業」なんてサービスがもっと増えてくるのかもしれない。


いずれにしても当分の間はペットマーケット、きっとまだまだ安泰である。



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