相談相手は誰?


相談相手が職場にいない人14.6%


国民生活白書』の調査結果である(日経産業新聞7月2日)。

相談相手の人数を尋ねると、平均は5.76人だった。そのうちパート・アルバイトだけを取り出すと4.49人と少ない。
(同紙)


仕事の意欲を高めるためには、相談相手がいる方がよいと考える人は多い。特に若い人ほど、そうした傾向が強くなるようだ。確かに仕事のイロハもわからない上に、社会人としてのマナーもさっぱりでは不安で仕方がないことだろう。


しかし相談相手というのもあいまいな用語だ。相談相手がいない人でもたぶん、話し相手ぐらいはいるのだと思う。愚痴や悩みをぐだぐだとぶつける相手、それをふんふんと聞いてくれたり、同意・同情してくれる相手である。が、そんな相手に話すことはある種のカタルシスにはなるとしても、その場でソリューションは得られない。若い人が求めているのは、そういう相手ではない。アンケートに言う相談相手とは、おそらく抱えている問題に対して何からの明確な解を示してくれる人のことだろう。


しかし、今どき自分が抱えている問題を即座にクリアに解決できる知恵を出してくれる相手がどれほどいるだろうか。たとえば20代の方々にとっては、当然30代以上の相手が相談相手となるのだろうが、彼らにそんなソリューション提供能力が果たしてあるだろうか。もちろん、持っている方もいらっしゃるには違いないだろうが、その数は極めて少ないのではないか。


そもそもみんな、人のことに親身になっていられるほど暇じゃない。恐らくは成果報酬制度が取り入れられたり、それとセットで終身雇用制度がなし崩しになりつつある今、上の者が下の者の相談にいちいち真剣に関わりあうだけのモチベーションがあるのだろうか。極端な話、成果報酬制度が採用されている職場ならば下の者の取り分まで自分の手柄にしてしまえば、それだけ自分の評価が上がるわけだ。あるいは逆に下の者が自分を上回る成績を上げてしまったりすると、自分を飛び越されてしまうリスクだってある。


だから「ぼく、困ってるんです〜。だれか、相談に乗ってくれませんか」的受け身スタンスでは、たぶん誰からも相手にされなくなったというのが現実じゃないのだろうか。逆に考えれば、だからこそチャンスだとも思う。まずはベーシックに、上司はこちらが待っているだけで相談に乗ってくれるような相手ではないと認識すれば良いのだ。その上で、上司とのコミュニケーション戦略をきちんと考える。ここがミソである。


とはいえ単に相談に乗ってもらうだけではダメである。コミュニケーションの大原則は相互互恵なのだから、相談に乗ってもらったら「自分はこうなる、それによって相手にもこんなメリットがある」ということを示せなければ話は成立しない。ということは、上司に持ちかける相談はそのままセールスの勉強になるではないか。


一昔前は、部下からどれだけ相談されるかが上司の評価基準の一つであった。それがこれからは、自分から持ちかけた相談に対して、どれだけまともに答えてもらえるかが部下としての評価基準になるといってもいい。


個人的には会社員であることをやめた15年前から上司は存在しない。従って上司に相談して問題を解決してもらうこともあり得ない。ただし仮想メンターだけは数多く持っている。


とりあえずクライアントは間違いなくメンターである。この仕事ぶりでクライアントはどう評価してくれるのか、納得してくれるのかどうか。このハードルを常に意識することで、自分のアウトプットを検証するように心がけている。


またインターネットのおかげで仮想メンターならいくらでも見つけることができる。滅多にやらないけれど「この人は」と思った仮想メンターのブログにコメントを書き込めばいい。それだけで十分なソリューション効果を得ることができる。つまり書き込んだコメントに対して返答してもらえるかどうかは、まったく問題ではないのだ。自分がコメントを書き込むために考えることが、すでにその仮想メンターに相談したのと同じ効果になるというわけだ。


だって、そうでしょう。


理想の相談って、最終的には相手から「あ〜したらどうなの、こうしなさいよ」といってもらえればベストなわけだ。でも、そのソリューションなるものは、元々自分でもチラチラ見えている解決策を、相談相手に発見してもらい言葉に表わしてもらうことに他ならない。早い話が自分がすでに思いついている解決策を目の前の相手から言ってもらって確認することにこそ相談の意味はある。だからバーチャル相談相手で十分だという話もある。


良い時代である。




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