お一人様ビジネス


ヒトカラ」が秘かなブームとなっている


知らなかった。ヒトカラ、すなわち一人カラオケである。一人でカラオケボックスなどに行って思う存分に歌う。ヒトカラをする人たちを「ヒトカラー」と呼ぶのだそうだ。ちなみに多人数で行くのは「タカラ」という。
(→ http://ja.wikipedia.org/wiki/ヒトカラ)


カラオケ人口は94年の5890万人をピークに減少傾向にある。05年の統計では4700万人と絶頂時からは一千万人以上も減ってしまった。カラオケの数自体も減ってきており、同じく05年で13万5000室となっているようだ(毎日新聞7月10日)。


本来カラオケボックスは、一人での利用を想定していない。最低でも二人以上での利用を前提として設計されているはずのボックスを一人で占拠されるとなるとスペース効率が悪いし、恐らくは光熱費などの採算も合わなくなる可能性がある。つまり一人客は歓迎されざる客であったわけだ。


しかし、そんなことも言ってられない状況となりつつある。


元々カラオケボックスは曜日・時間による需給変動の大きいビジネスである。たいてい週末の夜が一番の稼ぎ時であり、平日の昼間は閑古鳥が鳴くといったパターンが多いはずだ。しかも郊外ロードサイド型立地なら、飲酒取り締まり強化が客足を遠のかせていることは想像に難くない。集客がカラオケ業にとっては喫緊の課題なのである。


そこで「お一人様」を受け入れる店が出てきた。部屋を空っぽで開けているぐらいなら、たとえわずかでも売上が立つ方がマシ、という判断だろう。ところが、これが意外に受けたというのが「ヒトカラ」ブーム(といえるほどのものなのかどうかは?が付くけれど)につながっているのだろう。


受け皿サイドの問題が解消されると、実は「ヒトカラ」にはそれなりのニーズがあったことがわかる。そんな一人でカラオケがなっておもろいかあ、と思わないでもないが、他人に拘束されずに自由に歌いたい欲求を抱えている人は結構いるようだ。


確かに歌う、もしくは大きな声を出すことがメンタルヘルス上良いことであるのは間違いない。とりあえずスッとする。ということはストレス発散になるということだ。空手の稽古でも目一杯「気合い」を出すと、悩みなんかどっか行っちゃうし肩こりだって治る(ような気がする)。腹の底から声を出す効果である。


お客さんとの付き合い上、どうしてもカラオケで歌わなければならないけれどもどうにも歌が下手だって人には一人で練習したいニーズがあったのかもしれない。あるいは一人ですることがなくて、ついでにお金もあんまりなくて、でもとりあえず涼しくて(冬なら暖かくて)静かな(あるいは自分の好きな曲を聞ける)場所を求める人たちにもカラオケはフィットした可能性がある。


ここで一つ心にとどめておくべきは「お一人様マーケット」の今後である。


まず大前提として「一人」で行動する人が増えていることがある。その理由には深く突っ込まないが、子どもの頃から一人っ子であった人たちが増えていることや、対面コミュニケーションの苦手な人が増えていることなどが関係しているのだろう。もちろん高齢者では連れ添いがなくなられている方もいらっしゃる。


ということで衣食住遊学などの切り口×お一人様でマーケットを見たとき、意外とここにはいろんなチャンスが見つかるはずだ。


すでに一人旅やスパなどのエンターテイメント系では、お一人様マーケットが顕在化している。あるいは以前取り上げたことのある食堂「宮本むなし」では、一人客が居心地よくご飯を食べられるようなセッティングがきちんとできている。女性が一人でフラッと入れるバー、なんてのも出てきている。


従来なら二人以上が普通だったシチュエーションだけれども、実は「一人でも気軽に利用できるのならやってみたかった」ってケースは案外たくさんあるのかもしれない。ポイントは「独り者を集めてみんなで何かしよう」ではなく、「一人でも完結できる、楽しめる(=価値ある時間を過ごせる)こと」だろう。


もちろん団塊の世代が、ここでもクローズアップされてくるだろう。そもそもこの世代には単身世帯の割合が多い。しかもそこそこ可処分所得を持ってもいる。彼らの「お一人様ニーズ」をうまくすくいあげられれば、そこにはたぶんビジネスチャンスがあるはずだ。


余談だけれどもカラオケボックスを一人で気軽に利用できるのなら、たとえば一人ブレストや原稿を書く場所として使えるような気もする。ブレストということなら、何も一人に限ることもない。カジュアルな気分でブレストをやるにはカラオケボックスなどはもしかしたら最高のスペースの一つとさえいえるのかもしれない。


ヒトカラ」ブーム、いろんな気づきを与えてくれる。



昨日のI/O

In:
滋賀県庁取材
Out:
奥出直人教授インタビュー原稿
某ソフト開発物語
某ソフトユーザーインタビュー原稿


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「伏兵を使え」
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昨日の稽古:富雄中学校体育館

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