武道とスポーツの違い


昨日、本部道場の稽古に参加させてもらった


何しろ初体験である。塾長直々の指導はときどき奈良に来られたときに受けているものの本部での指導となると話は別である。齢50前のオッサンであるにもかかわらず、かなり緊張して大阪まで行ってきた。


本部道場は扇町にある。ここは懐かしの地である。今から15年ほど前に友人と独立して事務所を構えたのが、この扇町だ。本部道場はその頃毎日通っていた道筋にあるマンションの集会所だった。


昨日の稽古には塾長は残念ながら急用があって参加されなかったが、それでも師範代の指導を受けることができた。ここでの指導は二部制となっている。第一部は基礎・基本部で女性の方なども参加されてなかなか和気あいあいである。


塾長の発案でいま流行りの「ビリーズブートキャンプ」が昨日のメニューとなっていた。あれだけ話題になっているトレーニング方法だから、一度はやってみたいと思っていたのだが、正直なところきつかった。我々はビリーバンドを使わなかったけれども、それでも腕パンパンに足はダルダルである。これが一番最初の基礎メニューというのだから恐れ入る。


何しろ50分、ぶっ通しで動かなければならない。テレビで見ている限りは単純な動きで、これなら楽勝と思っていても、見るとやるとでは大違い。何が違うかというと、動きが速いのだ。めちゃめちゃ速い。だからDVDの画面を見ながら動いても、追い付かない。逆にいえば追い付くためには、それこそ必死で全速力で体を動かさなきゃならないということ。それを50分続けたら、たいがいグロッキーである。最後の方の腕立てや腹筋なんかは、ほとんどついていけなかった。


そして女性陣が引き上げた後に、いよいよ第二部の稽古が始まった。こちらはリアルな空研塾のスタイルである。ミット稽古、受け返し〜捌きの稽古と続き、最後がスパーリングである。これが新鮮というか、目からウロコというか。とにかく手も足も出なかった。


なぜかといえば、普段とまったく異なるルールでのスパーリングとなったからだ。いつもやっている組手稽古は基本的にフルコンタクトルールに基づいている。だから顔面への手による攻撃は禁止だし、金的攻撃ももちろんダメ。掴み、投げも一応認めない。ルールでそうなっているのだ。


そのルールで稽古していると、当たり前のことだけれど違うルールでの組手には当然まったく対処できない。スポーツなら、それでも構わないのだろうけれど、これが武道となるとそれじゃダメである。なぜなら武道とは本質的に「よく生きる」ための修練だから(確か、これは内田先生のおっしゃっていた言葉だと記憶する)。


よく生きるためには、まず自分の身を守ることができなければならない。すごく単純な例で説明するなら、街を歩いていて暴漢に襲われたとする。そのときに「じゃ顔面はなしにしてくださいね。それといったんお互いにちゃんと構えてから戦いましょう」などという悠長な話が通じる、わけがないのだ。そんな時でも、最低限自分が致命傷を負うことなくその場を何とかしのげること。これが武道を習う目的の一つだと思う。


ということはルールが違うからといって、ボコにされてるようではまったくお話しにならないことになる。そして、この「ルール」がいまの空手の問題点の一つなんだと思う。詳しく知らないので推測になるけれども、たぶん空手に限らず柔道にしても剣道も事情は同じではないだろうか。たしか柔道でもカニばさみとか当て身などの禁じ手があるわけだし。


空手なら流派により試合の時のルールがかなり厳密に決められている。試合に勝つためには、そのルールに従って稽古することになる。ということはつまり、ルールに反する動きはやらなくなる。これがいわゆるフルコンルールだと手技での顔面攻撃はないし(たぶん実際のケンカではもっとも多く使われる攻撃だろう)、金的への蹴りなども(おそらくケンカでは顔の次に狙われる場所だろう)御法度である。


そして昨日、私がボコにされたように首相撲で動きを封じられた上での膝蹴りなども稽古ではやらない。昨日の稽古ではあまりにこちらの動きが他愛もない状態だったので「膝をいれるのは控えました」と先輩はおっしゃってたけれど、実際には2分の組手の間に30本は顔面に膝をいれるチャンスがあったそうだ。また膝は控えてもらったものの、頭を抱えられての前蹴りは何発ももらっている。


ルールが違って対応できないのじゃ話にならないということだ。だからといって普段の組手で「じゃあ、今日は一切ルールなし。とことん実戦的にやってみましょう」というのも、少なくともほかに仕事を抱えている身としては非現実的である。武道的稽古で修業するためには、どうすればいいのか。これは相当な難題だ。そして、そういう諸々のことを踏まえた上で「心が武器になる」という塾長の理念があるんじゃないのだろうか、などと思いもした。


三ツ石師範代、愛甲先輩、本部道場に稽古に来られていた方々、昨日は本当にありがとうございました。そして大阪に稽古に来なさいと声をかけていただいた塾長、ありがとうございました。よい勉強になりました。


昨日のI/O

In:
『強い工場/後藤康浩』
Out:
遠藤秀一氏インタビューメモ

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昨日の稽古:コープ野村集会所

ビリーズブートキャンプ基礎編
・ミット稽古
・突きの受け返し〜捌きの稽古
・組手稽古
首相撲稽古