若者はなぜ転職するのか


90年代前半20%→03年卒約36%


入社3年以内に退職する大卒者の比率だ(日本経済新聞2007年8月3日朝刊)。特に今年4月に入社した人たちは、早くも転職を望む人が急増中らしい。リクルートエージェントをはじめとする人材紹介各社には新社会人が転職希望を続々と登録している。


せっかく入った会社なのに、なぜ早々と見切りをつけるのか。あるいは見切ることができるのか。


景気回復&団塊世代の大量退職などで売り手市場になっていることが原因の一つなのは間違いないだろう。年功序列制度/終身雇用制度が完全に崩れてしまい、一度入った会社で定年まで勤め上げる意識がほぼなくなったことも要因だと思う。この二つが環境的な要素だとすれば、辞めていく本人達はどうなのか。以前(たとえば90年代)の新社会人と2003年卒の新社会人では何が違ってきているのだろうか。


次の3点が大きく変わってきているのではないか。


まずは就職活動の開始時期と継続期間である。いわゆる就活スタートがどんどん早くなっている。これが一つ。だから当然、就活期間も長い。しかも昔はなかったインターン制度などもできている。その結果学生は4年間しっかり遊ぶ、ことができなくなっているのだ。もしかしたら今の新社会人さんは学生のときに遊び足らなかったんじゃないか。だから、会社へ入ってはみたものの全然遊ぶひまとかなくて、それがイヤになってやめる。


次に彼らが得る情報量が幾何級数的に増えてしまったこと。会社選びの段階からネットを調べれば、その会社に対する情報が相当に手に入るようになってきた。就職活動中にも就活掲示板などで盛んに情報交換が行なわれる。もちろん企業サイドがオフィシャルに提供する情報も、以前とは比べ物にならないぐらい増えている。だから入社前に、その会社に対して相当な知識を得たつもりになる。


ところが、会社なんてところは入ってみなければわからないことがいくらでもある。自分が「こうなんだ、この会社は」とかなり確定したイメージを持って入社すれば、そのイメージとの差異は恐らくはマイナス方向の要素として働くであろう。だから辞めたくなる。これは転職理由の上位を占める「会社が合わない」とか「配属が不満」といったことにつながっているのではないだろうか。


そして、もう一つ。特に2003年ぐらいから後の世代は、ケータイメール世代だということ。ケータイを電話ではなくメールツールとして使い始めた最初の世代が彼らではないだろうか。推測だけれど、彼らはPCメールよりもケータイメールをコミュニケーションツールとして圧倒的に好む世代だとも思う。


ということは彼らのコミュニケーションスキルや感度が、それ以前の世代とはラジカルな変化を遂げている可能性がある。ケータイを含む電話でぐだぐだ話すより、PCで比較的長文(ケータイメールに比べればという意味です)の
メールをやり取りして文章をきちんと書けないがためにうまくコミュニケーションを取れないことで悩むより、ケータイメールの気楽さを彼らは選んだ。


ケータイメールの気楽さとは、所詮それほどのことは伝わりっこないといった諦念をベースとして、コミュニケーションを積み上げることにある。だからぐちゃぐちゃしたことは言わない(正確には書かない、より正確には書けない)。それよりも瞬間的な気分を、いろいろな絵文字やデコメールなどで刹那的に交換しあう。コミュニケーション頻度だけは高いので、何となくわかりあえた気分にはなれる。


良い悪いの問題ではなく、そうしたコミュニケーションが彼らの基本的なマナーとなっているのではないか。


しかし、ビジネスで必要とされるコミュニケーションは、まだそこまで簡略化されていない。だってビジネスで向き合う相手は、自分たちと同じケータイ世代ではないのだから。いまの30代や40代の人たちがコミュニケーション上手だとはあまり思えないけれども、かといってケータイメールの投げ合いで仕事を進められるほど乱暴でもないだろう。


人は自分が所属している集団内でまともにコミュニケーションできないとき、もっとも強烈な疎外感を感じるはずだ。だからケータイコミュニケーションに慣れた(というか、それがコミュニケーションの一つのベースとなっている)若者たちが、就職先で大きな疎外感を味わっていることは想像に難くない。そうした若者たちの割合が、現時点では新入社員のうちの3分の1ぐらいということなのだろう。


企業サイドとしては一人当たり数百万円のハードコストに加えて、リクルーターの活動などのコストも加えれば、たぶん新入社員一人獲得するのに一千万ぐらいのコストをかけているのだから、そうそう簡単に辞められては困る。ということで事前研修を徹底したり、メンターを付けたりしているようだが、ちょっとそれは的外れな対策なんじゃないだろうか。


そもそも、まず新入社員がどんなコミュニケーションスタイルを持っているのか。そのスキルと不快なコミュニケーションに対する耐性はどれぐらいあるのか。さらにはビジネスで求められるコミュニケーションへの対応力はどれぐらいの可能性を秘めているのか。


こうした点をしっかり見極めない限り、今後入社即転職希望となる若者はどんどん増えていくように思う。だって、これからはそうしたケータイコミュニケーション若者が、どんどん増えてくるんだから。





昨日のI/O

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昨日の稽古:

・レッシュ式腹筋、腕立て伏せ
・ジョギング