古材流通ビジネス


日本26年、アメリカ44年、イギリス75年


住宅の平気寿命である。日本が際立って短い。私の実家はいまちょうど、築26年目に入ろうとしている。今のところ、幸いなことに目だったガタは出ていないがとりあえず資産価値はゼロだろう。というか、ここを処分して売りに出すとすれば値段がつくのは土地だけ。上物は処分代を取られるのがオチだ。


これに対してアメリカでは、年月が経っても資産価値が日本のように劇落することはまずない。家を手に入れるとみんな、せっせと手入れ(もしかして手に入れることは手入れをすることと同源だったのだろうか)をする。中古で買った家などは、買った値段よりも高く売ろうとする。もちろんそれなりの価値をきちんと付けて。


なぜ日本の家だけが、歳月を経るうちにガラクタと化するのか。高温多湿という気象条件が影響していることは間違いないだろうし、家の手入れをほとんどやらない日本の住み手の意識も関係しているだろう。また、そもそも住宅メーカーがあまり長持ちしないような家を作って売っている可能性も大いに考えられる。仮に一度建ててしまえば百年はもつ家と、だいたい25年ぐらいで建て直さなきゃいけない家のいずれがいいかといえば、住宅メーカーの経営戦略的には25年で建て直してもらう方がいいに決まっている。


とりあえずわずかに四半世紀で建替えられていく家からは古材が出る。この古材に目を付けたのが、四国のヴィンテージアイモクだ。同社はもともと松山市内で材木店を営んでいたが、2000年から古材の販売を始めた。単なる古材販売ではない。そもそも古材に関しては、それが流通する市場そのものがなかったのだ。そこに同社の井上社長はブルーオーシャンを見出した。つまり古材の流通市場を日本に創りだした。


井上社長によれば

木は伐採されて百年後に最も強くなる。だが住宅の平均寿命は二十六年。強くなる前に捨てられている
日経産業新聞2007年8月1日付け)

となる。そして戦後、建てられたたくさんの家がこれから、続々と建替え時期を迎えることになる。そこにビジネスチャンスありとみた。


古材のリユースはこれまでにも、細々とではあるが行なわれてきた。最近では新築の家に一部、古材を使うことがデザインアクセントとして流行の兆しを見せてもいる。そこでヴィンテージアイモク社は一気呵成に勝負に出た。古材の流通市場創りに乗り出したのだ。


ここで井上社長は知恵を出している。いくら目の付けどころが良くても、四国・松山の小さな会社があるカテゴリーの流通市場を単独で創りだすのは難しい。だから古材売り買いの店「古材倉庫」を全国にFC展開することにした。これが古材流通市場を育み仕組みである。FCなら自社にリソースが足りなくても、一気に全国展開へと持っていける。


ただし、そのためにはFC加盟へと人を引きつける何かがいる。井上氏は明確なミッションを打ち出した。同社のホームページによれば、そのミッションは「古材のリユース文化を創造し、本物の家づくりを推し進めることを通して、豊な社会の形成を目指す」とある。シンプルだけれど志が伝わってくるビシッと伝わってくる言葉ではないか。


さらに、それだけでは参入障壁がまったくないので、FC加盟希望者に対して「古材鑑定士」という独自資格の取得を義務づけた。


恐らくは、この鑑定士取得のための研修ではさまざまな実践的なノウハウが授与されるのだろう。そして、このノウハウこそが材木店を営み、古材に目を付けてきた井上社長のとんがった強みである。さらに今でも月に一回のペースで研修会を開いているという。そこではFC加盟店との緊密なコミュニケーションが展開されていることがわかる。いまでは「古材鑑定士」は95人もいるという。これでたとえばそこそこの資本力をもつ企業が、同じことをやろうとしてもヴィンテージアイモクが先行して占めているポジションをくつがえすことは相当に難しい。


古材倉庫ではとりあえず当初は古材の買い取りにミッションを集中してきたが、在庫が二万本を超えた今年5月から工務店などを対象とした販売を始めた。さらには用途拡大を狙って、古材を使った住宅の新築・改築提案も始めている。これが昨年4月からスタートして、すでに施工数が400件を超えているという。


同社が打ち出しているのは「古材を買い、売り、生かす」こと。単なる売り買いにとどめず、古材を「生かす」視点を打ち出していることが強いと思う。追い風は、日経産業の記事にも書かれていたように強い。この追い風を受けて、どこまで成長していけるのか。ポイントは古材の活用提案とその啓蒙ににあると思う。





昨日のI/O

In:
Out:


メルマガ最新号よりのマーケティングヒント

「コンベヤをなくせ」
http://blog.mag2.com/m/log/0000190025/
よろしければ、こちらも。

□InsightNow最新エントリー
 「営業はスピンしよう」
http://www.insightnow.jp/article/364

FPN最新エントリー
 「十代にとってのケータイ」
http://www.future-planning.net/x/modules/news/article.php?storyid=2571
 ※週間人気トップ2にランクされています。

昨日の稽古: