ブルドック経営陣の責任は

８月１０日４６６円→８月１３日４４０円

ブルドックソースの株価である。どんどん下がっている。スティール社が提示しているTOB価格４２５円まで、もう一歩というところだ。もしかして、この先スティール社によるTOBが成立したりする可能性もあるのだろうか。

どうも、このブルドックの一連の動きはよくわからない。スティール社の意図も不明瞭だけれど、もっとわからないのが同社の株主と経営陣の動きだ。マスコミで盛んに報道されたのは法廷闘争のニュースばかりで経営陣の経営責任を追求している論評は一つも見ることがなかった。

しかし、同社は０８年３月期決算で従来予想の５億円の黒字から約１０億円の赤字に転落すると発表している（日本経済新聞２００７年８月８日付朝刊）。前年度は黒字であり、本業で特に損失が発生するような要因はない。赤字に転落する理由は、要するにTOB対策に巨額のコストをかけるからだ。

弁護士事務所や証券会社に約７億円（これだけで前期の黒字５億４０００万円を超えている）支払い、さらにスティール社からは新株予約権を２１億円で買い取る。これだけ巨額の損失を出している経営陣に対して、何のお咎めもないというのがとても不思議だ。

お咎めがないということは、同社の株主さんたちは「現在の経営陣の経営でよし」とされているということなのだろう。しかし、これも妙だ。新株発行が決まる前の株価と新株発行後（3.7倍程度に株数が膨らむ）の理論的な株価から考えれば、現在の４４０円は妥当というかやや高値と考えられる。だからブルドック経営陣の取った新株予約権発行という対策は、現時点では一応納得できる策だったのかもしれない。

とはいえ株価はトレンドで見れば明らかに下落傾向にある。仮にスティール社のTOB価格４２５円を下回ってきたときに、同社の株主たちは一体どう動くのだろうか。

これまでの流れからすれば、巨額の赤字を出してまで自らの保身のための買収防衛策を取った経営陣を支持しているのだから、たとえ株価が３００円台に落ちたとしても同社の株主さんたちはTOBに応じたりはしないのだろう。だとすれば、同社の株主は同社経営陣にとって素晴らしい存在以外の何ものでもない。

業績が赤字転落しようが、株価がTOB価格を切ってしまおうが、何が何でも現経営陣を支持する。ほとんど理解を超えた信頼関係とでもいうしかない。

しかし、日本にはこうした株主さんたちがいることを天下に知らしめる効果は絶大だろう。これで今後、合理的に物事を考え判断する投資ファンドが、日本企業に手を出す可能性はうんと減るんじゃないだろうか。日本の株主には理屈が通じない。ついでにいえば、もしかしたら裁判所にも理屈は通じない。理屈が通じないところにお金を突っ込むのは極めてリスキーである。そんな危ない投資をファンドの資金の出し手が認めるはずもない。

海外の投資家に対して今回のブルドック買収騒動は、それぐらインパクトの強い教訓を与えたはずだと思うのだけれど、どうなんだろうか。

とりあえず今回の一連の騒動で儲かった人、損した人ははっきりしている。間違いなく儲かったのは、まずスティール社だろう。続いてブルドックに付いた弁護士と証券会社。もしかしたら、今まで通りの役員報酬を得るブルドック社の経営陣も損しなかったという意味では儲かったといえるのかもしれない。

逆に損した人ははっきりしている。ブルドックの株主である。ということは、ブルドックの株主だけが損して、ほかの関係者はみんな儲かったのだろうか。従業員はどうなんだろう。業績悪化のあおりを受けて、もしかしたら賞与削減なんて目にあうのだろうか。でも、従業員こそ何の関係もない話だと思うのだけれど、これから先、ブルドック社の経営陣はどう動くんだろう。

もし、現在の流れのままでブルドック社の株価が、スティール社のTOB価格を大幅に下回ったりしたら、そのときはどうなるのだろう？

このあたりのことは、よくわからないので、どなたか詳しい人がいれば教えてもらえると幸いです。

昨日のI/O

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