ソトアサが流行るわけ


40歳代で21%


週平均60時間働く人の割合だ(日本経済新聞2007年10月3日朝刊)。この10年で見ると5ポイント増えているという。ちなみに週60時間ということは週休二日制だとして一日12時間である。余計なおせっかいかもしれないが、それで通勤に往復2時間(首都圏ならもっとかかるんだろう)かけているなら、残り時間は10時間。睡眠時間を6時間取るとして、自由に使える(といってもその間に朝ご飯、晩ご飯を食べたりお風呂に入ったりしなきゃならないわけだけれど)時間はわずかに4時間しかない。


これまでなら一日12時間仕事をする、すなわち4時間は残業するとなれば、それは規定就業時間後にというのが相場だった。しかし最近、そうそう簡単に会社に居残って仕事を続けることはできなくなっている。企業サイドが残業を嫌うのである。なぜ残業を快く認めないのかと言えば、おそらくは会社認定残業となればさまざまなコストを覚悟しなければならないからだろう。


もっとも大きなのは残業代である。労働基準法によれば残業代には割り増しを付けよというような一文が記されているはずだ(たぶん)。しかも残業時間が夜ということは光熱費だって余計にかかる。ギリギリのコスト削減競争をしている企業にとっては、こうしたコストも当然できる限りカットしたい。そんなこんなで夜間残業禁止に踏み切る企業が出てきているらしい。


会社が残業を禁止しているんだから、しょうがない。夜は定時で帰るしかない。したくてもできないんだから、その日のうちにやるべき仕事をこなしきれず次の日に回すしかないですね、などと開き直りでもしたらどうなるか。そうか、残業できなかったんだから仕方ないね、と許してくれるはずがないのだ。当然、そんな言い訳をする社員には「できない奴」といったレッテルが貼られることになる。昇給、ボーナス査定、出世などなどに悪影響を及ぼすだろう。


そこで少し論理の飛躍があるかもしれないが「ソトアサ」が流行ることになる。「ソトアサ」とは外で食べる朝ご飯のことである(らしい)。所定時間内にはこなしきれないほどの仕事を抱えており、かといって夜遅くまでの残業をできなくなった人たちがどうしているかといえば、早朝出勤して仕事に取り組んでいるのである。これを早朝残業というらしい。何と気の毒なことか。


おかげで最近では東京駅に新たな混雑のピークができているそうだ。朝の6時である。こんな時間に都心までたどり着こうと思えば、当然家を出るのは5時ぐらいとなるだろう。そんな時間に朝ご飯を作ってもらえる幸せな人がどれぐらいいることか。ましてやそれが40代働き盛りとなれば、家には育ち盛りの子どもさんがいる確率も高いだろう。子どもには手がかかるのである。


手のかかる子どもをを抱えていて(ということは、後始末だなんだで奥さんが眠りにつける時間も遅くなるということだ)、なおかつご主人の食事を作るために5時前に起きるという奥様は極めて少数派、たとえるならイリオモテヤマネコのような存在ではないか。


必定、ビジネスパーソンたちはお腹をすかせて都心にやってくることになる。仕事にかかる前にせめて何かを食べたいというのは、極めてまっとうな欲求だろう。もちろんコンビニでおにぎりを買ってちゃっちゃと済ます選択肢もある。それだとおにぎり2個とお茶を買って400円ぐらいでまかなえるだろう。が、一日の始めである。しかも超・早起きして会社まで出てきて、早朝残業にとりかかろうとしているのである。せめて朝ご飯ぐらいあったかいものを取って元気をつけたいではないか。ということで「ソトアサ」である。


幸いなことに私はウチアサである。起床時間でみれば、ソトアサをされている方たちとほとんど変わらないか、もしかしたら少し早いぐらいかもしれない。ただそれぐらいの時間に起きて、すぐに家で仕事にかかれるのがラッキーと言えばそうである。


とはいえもう少しすれば(あと3年ぐらいだろうか)そんな早朝にわざわざ会社まで出向いて仕事をしなければならない、なんて状況は変わってくる可能性が高い。光回線などのインフラ整備が進んで、情報管理がきちんとできるようになればきっとテレワークが普及してくるはずだ。そうなったときには、たとえば鉄道や都心部ビジネスパーソンをターゲットとしているビジネスが大きく変わるのではないだろうか。


個人的にはソトアサしてまで会社に尽くすワークスタイルなど早くなくなってしまえばいいのにと強く思う。ソトアサをかき込み早朝残業で会社に尽くす意味をもっと考えればよいのだ。考えてみてバカらしいと思えば自営業などを目指す人ももっと出てくるだろうし、そうしてお仲間が増えるのはうれしい限りだ。



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