女性を見る目は進化するのか


天地真理浅田美代子


テレビを見ていて「うわぁ〜、この女の人きれいやな」と思った原体験のお話。今から35年ぐらい前のことだ。中学校に入ったころにはちょうど三人娘(といってもご存じない方の方が多いかもしれない。山口百恵桜田順子、森昌子をその頃こう呼んでいたのだ)とかキャンディーズがデビューした。たぶんキャンディーズのファーストシングル『あなたに夢中』は、実家のレコード棚のどこかにあるはずだ。


ちなみにデビュー当時は蘭ちゃんではなくスーちゃんが真ん中のリードボーカルだった。さらにどうでもいい話を続けると、私はデビュー当時からスーちゃんが一等好きというか、ほかの二人には目もくれなかった。だから後期の人気が出た頃のキャンディーズは蘭ちゃんがリードを取っていたので好きではなかった。そして最近、ときおりテレビドラマなどにスーちゃん(田中好子さんというべきだろうな、もはや)が、上品かつ優しげな女性としてとても佳い歳の重ね方をしておられる姿を見て、自分の目の確かさを少し誇りに思ったりしている。


何の話かといえば、女性を見る目の話である。


人間は歳を取るごとに、いろんなことについての経験値を増して行く。だから若い頃より少しは人の気持ちの動きの機微を理解できるようになったり、あるいは同じ本を読んでも昔より行間に込められた作者の思いを感じれるようになったりする。あるいは文章を書くことについても、ささやかではあるけれども書けば書くほどにわかりやすい文を書けるようになってきているのではないだろうか(というのは希望的観測で、もしかしたら全然下手になってる可能性も否定できないけれど)。


もちろん年齢を重ねることは老化にもつながる。瞬間的な筋力などは当然、若い頃に比べるべくもない。持久力も同様だろう。何歳ぐらいから老いが始まるのかはわからないのだけれど、気付いたときには確実に自分が歳を取ったことを知り愕然とする。歳を取るというのはそういうことだ。


で審美眼である。


とりあえず視力は衰えている。それはさておきこれが絵を見る力となると、自分の中でも意見の分かれるところではある。たとえば素直に絵の本来の美しさを純粋に感じとる能力は、もうない。何も知らない子どものように絵とストレートに対峙することができなくなっているからだ。それは余計な知識を取り込みすぎたがために、どの絵と向かい合っても何らかの予備知識なしにはその絵を見ることができないからだ。


ただし知識をもっているがために、絵が描かれた時代背景や作者の思い、その絵に込められたテーマの意味などを理解して絵と向かい合うこともできる。絵の論理的な読み方も、一応は知っている。何も知らないよりは絵を深く読み取ることができる可能性もある。


では女性に対する審美眼はどうなのだろう。


未だに次々と現れる女性タレントを見ては「ええなあ〜、かわいいなあ。きれいやなあ」と惚けてしまうのは一体どうしたことか。女性を見る目も年齢とともにそれなりにアップグレードされているとすれば「この子、別嬪や」と思う女性の数は減って然るべきではないのか。にも関わらず毎年のように「ああ、今年はこの子を見ることができてよかった。今年も納得の一年」的シンボルとなるタレント、歌手が最低一年に2、3人はいる。総数で言えば相当に増えている(もちろん結婚して対象外となられたり、引退されたり、いつの間にか消えていく女性も多いのだけれど)。


ここで考えられるのは二つ。一つは、自分の女性審美眼の進化に合わせて、毎年女性も美的レベルが進化していること。もう一つは、少なくとも女性を見る目については、物心ついた時からほとんどその基準が変わっていないこと。このどちらかではないのか。


だとすれば、女性の美的レベルがそれほど画期的に進化していることはあり得ないので、自分が「きれいだ」と思う女性像は小学校高学年ぐらいからあまり変化していないということになる。ほんまやろか。


まあ、さすがに歳を取りたくさんの人と話をしてきた成果はあって、いくら上っ面がきれいでも、プロポーションが素敵だとしても、じかに少し話を聞けばその女性の内面がどうなのかってことぐらいは何となくわかるようになってきた。そしておぼろげではあるけれども、そうやって少し話をして掴んだ相手の内面像というのは、長く付き合ってみると大筋では間違っていないこともわかってきた。


そうやって女性を内外から見ると、なるほど内面というものがたいていの場合は外面にも何らかの形で出ていることもわかるような気はするのだけれど。でも家人に言わせると「お父さんは、全然女の人を見る目がない」とバッサリ切られてしまう。これは一体どうしてなのでしょうか? 謎である。



昨日のI/O

In:
『思考のエシックス鷲田清一
Out:
ポルタウォーキングコピー原稿

メルマガ最新号よりのマーケティングヒント

スカイプの時代」
http://blog.mag2.com/m/log/0000190025/
よろしければ、こちらも。

□InsightNow最新エントリー
 「京都企業、強さの秘密」
http://www.insightnow.jp/article/531

昨日の稽古: