理に適った稽古


歩く時の足の幅を考えてみなさい


塾長の言葉である。自然に、きれいに歩ける人は骨盤の幅となっているはずだ。もし骨盤の幅以上に広がっていたり、逆に狭まっていたり、あるいは左右どちらかに偏った歩き方を長年続けていると、体のバランスが狂う恐れがある。人間の体は極めて微妙かつ巧妙に均衡を保つことで健康状態が維持されるようにできているので、不均衡な状態を長い年月続けている体全体の機能に悪影響が及ぼされることもある。


その歩く時の足の幅が組手立ちの時の足の幅である。それ以上に足を開いて少し腰を落として構えたりすれば、何となく安定したような気分になれるかもしれないが武道的にはデメリットの方が多い。何よりもっとも自然で動きやすいのが骨盤の幅である。それよりも幅が広ければ動きが一瞬遅れるだろう。私のような凡人レベルではその一瞬の動きはさして影響せずとも、これが達人の域に達すれば即座に命取りとなる。もとより達人になれるはずもないが、凡人なりに上達を目指すなら達人の動きを真似るべきである。


なぜなら達人の動きとは理に適った動きの集大成であるからだ。


組手立ちに関して言えば、後ろ足を斜めに開くのもよくない。この姿勢はまっすぐ前に動くための構えではない。お互いが斜めになって対峙する姿勢、これはあくまでも試合の際に向かい合う構え方だ。従って武道的な空手を追求する場合は、できるだけ正面を向いているべきである。


なぜなら、武道的ということはさまざまな相手を想定しなければならないからだ。相手が必ず空手の技で、しかも顔面には手での攻撃を加えない(フルコンタクトの試合ルールはこうなっている)と決まっているのならば、フルコンタクト空手で一般的な組手立ちでも構わないが、実際に何らかのトラブルで身を守らなければならないときにそんなことはあり得ない。


そんなときにどちらかの足に重心が偏っているのは命取りになる。まずタックルされたときには、片足に重心が乗っていると一発でひっくり返される。どちらかに動く場合でも、両足に均等に重心が乗っていないとワンテンポ動きが遅れる。これが理である。

 
あるいは前屈立ちから前蹴上げの稽古をするとき。とにかく足を高くあげることだけを意識して蹴上げをすると、前足の膝がどうしても外に開きがちだ。足を高くあげるために後ろから体を少し捻って持ってくると、その勢いを前足だけでは支えきれなくなり、膝が外を向くというわけだ。これは明らかに理に適っていない動きとなる。


前蹴上げは真ん前にいる相手の顎を下から蹴り上げる技である。にも関わらず前足(=軸足)が外に開いてしまうと体の勢いは、真ん前ではなく斜め前に向かおうとすることになる。その姿勢から真ん前を蹴り上げるためには体に余分な捻りをかけなければならない。軸足の膝にも斜め方向に力がかかりながら、蹴り足を前に持っていこうとするために余分な力がかかることになるだろう。それを続けていると膝を壊したり、腰を痛めたりする。


勢いをつけて蹴ろうとすると、どうしてもこうなる。


ところがまず軸足に重心を移動し、その移動に自然な形で蹴り足を引いてくるとどうなるか。蹴り足が自然に浮いてくる。このとき軸足の膝はまっすぐ前へ向けておくことを意識する。そして膝を曲げないようにして浮いた蹴り足の付け根の部分を折り曲げる。自然に蹴り足はまっすぐ前に上がって行く。最初の間は勢いがつかないから蹴りにくさを覚えるかもしれないが、長い目で見れば自然な、すなわち理に適った動きをしている方が文字通り無理なく、結果的には威力のある蹴りをできるようになるだろう。


理に適った動きをすること。居着かないこと。またまた空手の奥の深さをすこし垣間見ることができたような気がする。




昨日のI/O

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『思考のエシックス鷲田清一
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