ドライバーの民度


一旦、道を渡り始めたら必ず同じペースで歩いてください


12年ほど前イタリアに旅行に行った時、ローマでガイドさんに言われたのがこのセリフだった。車が来たからといって間違ってもあわてて小走りしたり、立ち止まったりしちゃいけないと。なぜならドライバーは歩行者を見つけると、その歩くスピードをちゃんと計算して、うまく避けられるように運転するから。


「おぉ〜、なるほど」と思いましたね。さすがに車が生活文化の一つとして根付いている国は違うものだと。結構荒っぽい運転をしているように見えて、きちんと歩行者最優先の考え方は染み付いているのだと感心した。とはいえあの国ではベンツでさえもオートマチックではなく、マニュアルだった。ちなみにそのベンツには空港からローマ市内まで送ってもらったのだけれど、やたらシフトダウン(=ギアを落としての加速、つまり追い越し)するドライバーだったことも覚えている。


ところ変われば運転も変わる。道路の渡り方も、もちろん変わる。


同じく10年ほど前に初めて中国へ行ったときには、まったく違うアドバイスを受けた。すなわち「道を渡るときには、用心の上にも用心を重ねて、左右からやってくる車の状況を確認し、安全だと確信しない限り絶対に道路に出てはいけない」と。彼の地では道をおたおたと歩いていると、平気で車はぶつかってくる(まあ平気ということはないのでしょうが、とりあえず避けない人の方が悪いという感覚は確かにあった)。


何しろ、道を走っている車のほとんどがとりあえずクラクション鳴らしっ放しである。どの車も「そこどけ、そこどけ、オレ様が通る」状態なのだ。そのやかましいことったら。その時は首都北京から天津まで高速道路を2時間ほど走り、天津市内を知人の工場まで連れて行ってもらったのだが、高速道路でもクラクションをずっと鳴らし続けるドライビングに驚き、さらには人口が一千万人に届こうかという大都市天津で市内に信号がまだ十カ所もないと聞かされてたまげた。


もちろんそんな道路事情であり、さらには運転状況であるために、車で10分も走ればたいがいは事故を目にすることになる。交差点などでの右折・左折も恐怖である。彼らのドライビングマナーでは右左折時には中心まで行って直角に曲がる、わけではないのだ。では、どうやって曲がるのか。交差点のかなり手前から対向車線を斜めに横切って曲がって行ったりする。これで事故が多発しないわけがない。というような恐ろしい道路/運転状況も年を重ねるごとに改善されて行き、3年ほど前に上海に行ったときにはもう完全に日本並みぐらいまでにはなっていた。


その日本である。


このところ普通に道を走っていてよく「恐いなあ」とか「ちょっと、あんまりやないの」と感じることがよくある。たとえば対向車線の道ばたを自転車が走っているところを思い浮かべてください。その後ろから車が来る。その車の挙動が問題なのだ。ごくノーマルな感覚なら、自分の前に自転車が走っていれば少々センターラインをはみ出しても、その自転車を避けるだろう。自動車学校でもそのように教えられる。もとより、これは間違いではない。


しかしである。そのとき対向車が来ていたらどうするのか。選択肢は三つある。一つは、そしてもっともルールオリエンティッドな運転は無理に自転車を追い越さずにいったん減速し、対向車が行き過ぎるのを待つ。然る後に安全な間隔をとって自転車をパスする。二つめ、少々危険ではあるが自転車との間隔がギリギリとなっても避けずにそのまま直進する。この場合は、自分が自転車と接触するリスクがある。三つめ、対向車に減速を強いる形で堂々と対向車線にはみ出し、自転車を追い越して行く。


私が住んでいる地域特有の状況なのかもしれないのだが、最近、この三つめのオプションをチョイスされるドライバーがとても増えているように思う。「うわっちゃ、アブな! どんな奴が運転しとんねん(ケッ)」と腹を立てながらドライバーを確認すると、これが銀髪の上品そうなおじいさま、おばあさまだったりするのだ。そういう方は例の落ち葉マーク(というのかな?)を車の後部にはり付けておられるケースが多々ある。


この落ち葉マークドライバーについては、ほかにもヤダなあと思うことがある。時速制限40キロぐらいの道を30キロぐらいで走っておられることがある。そしてカーブ、坂道で必ず「おぉ〜っとっと。当たるやんか」と言いたくなるぐらいにまで減速されるのだ。でありながらそういうドライバーに限って黄信号ではほぼ必ずと言っていいぐらいかなり過激に加速して交差点に突っ込んで行かれたりもする。その運転ぶりたるや相当にジコチューである。


ジコチュードライバーは何も高齢者だけではない。十代後半から二十代後半ぐらいの方にも相当に自己中心的な車の運転を平然とされる人が多い。恐ろしいことだ。


まず何よりも自動車はあっけないぐらい簡単に凶器となり得る乗り物であること。道路を使用しているのは自分だけではなく、まわりにたくさんのほかの車が動いていること、さらにはその中でもっとも大切にすべきは歩行者の安全であり、引いては人の命であること。そうした自動車を用いるにあたってのベーシックなマナーと知識を、せめて中学校ぐらいからしっかり教える必要があるのではないだろうか。仮に自動車の運転に民度が表れるとしたら、今の日本はちょっと危機的な状況であるように思う。




昨日のI/O

In:
村上春樹にご用心/内田樹
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リフォーム業界動向分析


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昨日の稽古:

・レッシュ式腹筋、拳立て