男性用化粧品の売り方


2006年度142億円


男性向け顔用スキンケア商品の販売額である(日経産業新聞2007年10月16日付け)。2兆2000億円程度ある化粧品マーケット全体から見れば、わずかに0.7%ぐらい。けし粒以下の存在に過ぎない。とはいえ、前年対比では約10%伸びている。これをどう捉えるかがポイントである。


マーケティングでよく引き合いに出されるたとえ話に、アフリカに靴を売りに行った二人の対照的なセールスマンの例がある。アフリカの人たちは誰も靴を履いていない、だからこの地では靴は売れないと考えた悲観的なセールスマンがいる。もう一方には、アフリカではまだ誰も靴を履いていない、だからみんなが靴を履くようになったらとんでもないマーケットが誕生すると考えたポジティブなセールスマン。マーケッターとしてどちらの考え方を支持するのかといえば、当然後者だろう。


このたとえ話にならうなら、日本の男性向け顔用化粧品マーケットだって捨てたものじゃないかもしれない。現時点で月に2000円以上スキンケア化粧品を使う男性の割合は、全世代トータルで見ても20%を切っている。仮にこれが7割ぐらいまで伸びるとしたら、市場規模も現在の3倍は軽く超えるだろう。そうなると化粧品マーケットの2%強、それなりのポジションになってくる。


果たして、そんな可能性はあるのだろうか?


あると思う。そう思う理由は、50代以上がこうした化粧品を結構使っているからだ。彼らが化粧品を使う目的は「仕事上の印象を良くする」が半分弱(前掲紙)となっている。ビジネス上での付き合いで悪印象を相手に与えないために、それなりの身だしなみを気にする50代が多いわけだ。20代が化粧品を使う理由と好対照である。


20代男性が化粧品を使うのは「女性に好かれたいから」。とてもわかりやすい。これに対して50代以上の男性の場合はおそらく、女性はほとんど関係がない。仕事上の印象を良くしたい相手に女性が含まれないことはないだろうが、少なくとも女性にもてたいために化粧品を使うのではない。


では、50代以上の男性にもっと化粧品を使ってもらい、あわよくばその下の世代に控える男性陣をも化粧品ユーザーとするためにはどんなSPを展開すべきなのだろうか。


ここはオーソドックスに、ビジネスシーンでのマナーを啓蒙していくべきだと思う。『品格』なる言葉が一般化しているようなので「男の顔の品格」みたいな特集で雑誌のタイアップ記事でも組むのが良い。これは何も男性化粧品メーカーが一社単独でやる必要もない。メーカーが協力してのタイアップとなれば、雑誌だって乗りやすいだろう。


ただし、メディアチョイスはきっちりやりたいところだ。いわゆる「ちょい悪」路線で売っている『LEON』は間違ってもダメである。ターゲットが明らかに違う。この手の雑誌にはあまり詳しくないが、たとえば『GOETHE』とか『日経ビジネス』、『ダイヤモンド』あたりが良いのではないか。


こうした雑誌群にはときどき、ファッション特集や腕時計の特集(もちろんタイアップ広告)が掲載されている。が、スキンケアなどの化粧品特集は未だ見たことがない。それなりの年齢になってきた男性がとるべきスキンケアを記事として読ませる。特に顔の見せ方についてのマナー(そんなものがあるとすればの話だけれど)についての蘊蓄を語る。感度の高い男性は反応するのではないか。


この切り口から入れば、加齢臭問題もダメージングな話題としてではなく、マナーの問題として切り込める可能性がある。加齢臭の原因がなんであるのかは知らないが、想像するに食生活の欧米化によって日本人の体臭自体が総体的に強くなっていることは間違いないだろう。そうしたニオイを抑えるためには、まず毎日シャワーを浴びるなどして体を清潔に保つことが一つ。食生活を昔の(年寄りだからといってやたら臭いなどとは言われなかった時代の)和食中心としたものに戻すことが一つ。それでもダメなら、欧米風に男性もニオイ消しの香水でも使うしかない。


そして意外にこの切り口、つまり加齢臭対策としてのニオイ消し香水=高齢男性に必須のマナー訴求、があるように思うのだけれど、どうだろうか。


とりあえず自分の異臭を、基本的に自分では異臭として認知できないように人のメカニズムはできている。ちょっときついかもしれないけれど身近な人に「おれ、臭くない?」と聞く勇気をもつことから加齢臭対策は始まる。ということを現実問題として考えなければならない歳になってきた。あんまりうれしいことではないけれども・・・。




昨日のI/O

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・腹筋