売り手市場にチャンスあり


顧客満足度97%


驚異的、といえる数字を出しているのがアンカー社。群馬県桐生市を中心にデザイナーズ賃貸を手がける不動産屋さんである。同社は

デザイン化された上質な内外装から、カードキーをはじめとするセキュリティー対策まで取り入れ、群馬県内で圧倒的な人気を集めている。自社物件に暮らす入居者に対して顧客満足度調査を実施し、物件のハードとソフトの両面で高度化を図り、オーナーに対しては収益率を高めるアドバイスをしている。
日経MJ新聞2007年11月14日付け3面)


その調査の結果が、冒頭の数字となって表れている。


これまで47年の人生で借家生活を送ってきた期間がほぼ40年になる。親が公務員だったために幼い頃から物心つくまでは公務員宿舎(今にして思えば特別待遇の借家だ)に暮らし、高三の夏休みから大学を卒業するまでの7年足らずが持ち家生活であった(といっても自分のではなく親の家に過ぎないけれど)。就職して以降は、ずっと賃貸住宅に住み続けている。


独り立ちして以降これまでに移り住んだのは京都の北白川に一乗寺、大阪は内本町と天満橋そして奈良・学園前。どの住まいにも不満はないが、顧客満足度97%にはほど遠い。いま住んでいるところが一番良いとは思うけれども、それがベストの選択かと問われれば疑問である。この家を決めるときにも、そもそもじっくり選べるほど他の選択肢はなかったわけだから。唯一あやめ池の分譲の賃貸貸しマンション最上階(ベランダがめっちゃ広くて若草山が見えて)が、もう一つの候補ではあったけれど、一軒家の魅力の前には勝負にならなかった。


というぐらい都市部では賃貸住宅に関して選択肢が限られているのだ。需給バランスでみれば、明らかな売り手市場ということだろう。そして日経MJ紙の記事によれば、基本的に大都市(奈良が大都市だとは思わないけれど)では賃貸住宅は売り手市場であり、地方都市は買い手市場となっているらしい。だから冒頭のように群馬県桐生市のような地方都市(なのかな、本当に?)では、買い手の満足度を真剣に考える不動産屋さんが大成功する。


ということは、大都市でもし顧客のことを親身に考える賃貸業者がいれば、簡単に大成功するということではないのか。売り手市場では否応なく弱者のポジションに立たされるのは買い手、つまり顧客である。買い手は、選択肢が限られている、あるいは情報の不均衡があるために実際には選択肢があるのかもしれないが、とりあえずはその選択肢に自由にリーチできない。そのために不満を抱えながらも仕方なく、限られた選択肢の中からチョイスした住まいに暮らし続けているケースが多い。


そこには、実に豊かなマーケットチャンスがある。と思うのだけれど、どうなのだろう。


たとえば、何でもかんでも団塊頼みにするのは気が引けるのだが、やはりメインターゲットとして浮かんでくるのは、この世代の方たちだ。子どもが独立した今となっては、郊外の広い一戸建てに住む必要はまずない。むしろ、これから身体機能が低下して行くことを考えれば、クルマに頼らざるを得ないような住宅地にいるよりも、何かと便利な都市に暮らす方がうんと快適である。歳を取って最も気になる医療設備にしても、圧倒的に都市の方が充実している。


買い物も、食事をするのにも、さらには持て余す時間を過ごす娯楽にしても地方と都市では暮らし易さはまったく異なる。そこで団塊の方たちのための専用スペックを備えた賃貸住宅を手当てする。それは最近、都心部に増えている大規模、超高層マンションなどでは決してなくて、たとえばいまコインパーキングとなっている土地の別の活用法としてこじんまりとしたメゾネットみたいなものを建てるのもありなんじゃないんだろうか。


周辺環境を吟味して、立地条件がよいところを探せばそんなスペースはいくらでもあると思う。そしてそうした賃貸住宅は何も団塊世代向けだけに限ることもない。我々のような子育て世代で仕事場が都心にある人たち向けの、暮らしやすくて安心・安全な借家がもっともっと増えれば、これは日本経済にとってもとても良いことではないだろうか。


だって、一生の重荷となる住宅ローンを背負わなくてよいということは、可処分所得が増えることにつながるはずだ。いい加減、分譲価格の二倍ぐらいをローンで支払って、しかもローンを払い終わった30年後ぐらいには資産価値ゼロ(となるケースが多い)マイホーム幻想から離れて、日本ももっと本格的な借家時代になれば良いのにと個人的な期待も込めて強く思う。



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