不正を誘うマクドのクーポン


既存店売上高21ヶ月連続プラス


マクドが絶好調である。14ヶ月連続で月間客数記録も更新し、一時の不振から完全に脱したかに見えたのだが。「好事魔多し」の言葉通りのことが起こってしまった。このところ飲食・食品業界で大流行の兆しを見せている賞味期限偽装だ。


27日、東京都内のフランチャイズチェーン4店舗で、売れ残ったサラダの調理日時を改ざんしていたことが明らかになった。しかも賞味期限切れの食材を利用した疑いももたれている(日経産業新聞2007年11月28日付け28面)。


マクドナルド社の原田CEOは「あくまでもフランチャイズチェーン店が単独で犯した過ちであり、組織ぐるみの犯罪では絶対にない」と謝罪したらしい。それは、確かにその通りだろう。


では、なぜ東京のフランチャイズチェーン店が偽装に手を染めたのだろうか。実は、ここにマクドの構造的な問題が潜んでいるようだ。その問題はマクドのビジネスモデルそのものと、ここ一連のマーケティング施策に関わっている。


まずビジネスモデルの問題について。マクドでは味の管理のために食材廃棄までの時間を厳密に指示している。たとえば

ポテトはフライにして七分、ビーフパティは調理後十五分たつと廃棄
(前掲紙)

といった案配だ。


それで結果的には食材のロス率が売上高の1〜2%ぐらい。これに対してFCの利益率は1%あるかないかレベルだという。そこまでギリギリの利益率で走っているFCとすれば、売れ残ったサラダを次の日に売るかどうかが利益が出るか出ないかの分かれ目になったりするはずだ。つまりマクドナルドはそのビジネスモデル自体が食品偽装を誘発しやすい構造になっている可能性がある。


しかも、それでなくとも利益がゼロレベルに近いFC店に新しく展開したプロモーションが決定的な追い討ちをかけた。ケータイを使った電子クーポンの導入である。


ケータイ会員は昨年12月の100万人から今年9月には500万人に急増した。従来のようなチラシを切り取って使うクーポンは、主に子ども連れの主婦層が使っていたと推測される。となると、こうしたクーポンが使われるのは基本的には郊外の住宅地エリアだろう。ところがケータイクーポンとなるとユーザー層が一気に拡大する。ケータイを日常的に使っているのは主婦層もそうだが、10代から20代の若者層もヘビーユーザーである。


何しろケータイクーポンを見せるだけで、セット商品を100円以上安く買えるのだ。お腹を空かせていて、かつお小遣いに限りのある学生たちにとっては、こんなにうれしい話はない。では、こうした若者がユーザーとなっている店はどこにあるか。まさに今回問題を起こした都心部立地ではないか。


つまり、都心部立地のFC店はこれまでならあまり影響を受けなかったクーポンのダメージを、ケータイクーポン作戦が展開されたことによってもろに受けることになった。ただでさえ利益率が1%を切りかけている店にとっては、このケータイクーポンがトドメを刺した可能性がある。


そこで、もちろんやってはならないことだけれども、調理日時を少しだけ改ざんしてしまった。というのが今回のマクド事件の背景となっているようだ。


穿ちすぎた見方かもしれないが、仮にマクドFC店の利益が本当に1%ぐらいしかなくて、今回のケータイクーポンによるダメージを都心立地の店が同じように受けているとすれば、今回発覚したサラダ調理日時偽装事件は氷山の一角という恐れもある。


そして、やはりここまで偽装事件が相次いで起こるということは、偽装に対する歯止めが弱いことの証でもあるだろう。そうした流れが、昨日のエントリーでも書いたように法改正への流れを引き起こすのではないだろうか。



昨日のI/O

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昨日の稽古:

・懸垂