2030年のビジネスチャンス


働く人が1000万人減る


マクロ環境を分析することは、マーケティング戦略を考える時の絶対条件となる。ポイントは現状ではなく、今後を読むこと。これはかなり難しくて最終的には直観で「えいやっ!」て感じで決めることも多い。


しかし不確定な未来の中でもほぼ確定している要素もある。人口だ。冒頭の数字は2030年の労働力人口である(日本経済新聞2007年11月29日付け3面)。厚生労働省がまとめた推計によれば、日本の2030年の労働力人口(15歳以上の就業者と求職者)は、5584万人になる。これは現在の6657万人からざっと1000万人も減る勘定になる。


これはほぼ確定した未来である。


総人口については今後、また新たなベビーブームが起こって日本の人口が増える方向に向かう可能性がゼロではない。だから総人口については確定した未来はない。しかし20年後の15歳以上人口となると、ほぼ確定した数字を読むことはできる(もちろん、まだ生まれていない子どもたちの人口もカウントされているわけだから、完全に正確とは言いきれないけれど)。


記事には、労働人口が1000万人、現状ベースで考えれば15%も減ったらどんな影響が出るかが書かれている。働く人が減れば、賃金をもらう人も減るわけで、当然消費も減る。日本の国内マーケットは縮んでいくことになるだろう。もちろん税収も減る。国家財政がとんでもなく厳しいレベルに追い込まれることも予想されるのではないか。


とまあ、暗い未来を読んでも楽しくないので、じゃあそれぐらい働き手が減りそうな日本にはどんなビジネスチャンスがあるのかを考えてみたい。


とりあえず課題を「いかにして働き手を増やすか」と置いてみる。するとすぐに考えられるのが、本来働けるにも関わらず働くのを辞めたり、働いていない人たちに働いてもらうためのサービスがある。高齢者と女性だ。


今年から団塊世代の大量リタイアが始まっているけれども、定年を迎えたからといって仕事を辞める必要は本来まったくない。そもそも定年制度そのものが、後からどんどん若い労働力が永続的に入社してくることを前提として作られた制度である。前提条件が崩れてしまった今、定年制を維持しなければならない理由はまったくない。


だから働くことができる間は、いつまでも会社にいてもらえば良いのだ。とはいえ、肉体的にはいろいろな面で衰えが出てくるのだから、そこをサポートできるようなサービス・製品があればいいではないか。と考えれば衣食住だけでも、いくらでもアイデアは浮かんでくる。面白いなあと思うのが、ロボットスーツだろう。これを身につければ肉体的には若い人と変わらないぐらいの動きができるのだ。現状ではかなり高価でそう簡単には手を出せないけれども、これも会社が一括購入して希望者にレンタルするといった方法もある。


あるいは家庭に入ってしまった女性にもう一度復帰してもらうのも一案だ。ということは家事や育児関連のサービスにチャンスがあるわけだ。


そして注目したいのが教育関連のサービスだろう。厚労省の統計によれば現時点でいわゆるニートが62万人、フリーターが187万人、あわせて約200万人分の若い労働力が有効に活用されていない。すでにニート・フリーター化してしまった若い人たちの就業サポートにチャンスがあることは言うまでもない。


加えて、これから大切なのは18歳ぐらいになったときにニートやフリーターを選ばないように子どもたちを導く教育(というか躾けというか、とりあえず本来なら家庭で行なわれていたもの)を提供するサービスにもかなりなニーズが見込めるだろう。


さらには日本には人がいなくても海外には余っているところがある。法規制もおそらく今後変わり、海外から労働力を引っ張ってくる可能性を考えるなら、たとえば中国で日本への人材派遣業を手がけることが考えられる。たしか東北部には日本語学校が集まっている都市があり、そこには中国全土から日本語を学びたい一心で多くの若者が集まっている。彼らに日本へ来てもらい、日本で心地よく働いてもらい、可能なら日本に根付いてもらうような研修を行なった上で日本へ送り込む。


中国の日本語学校と提携することも考えられるだろう。また相手先は何も中国だけに限った話ではない。今後、人口爆発が予想されて日本人と親和性がありそうな国、たとえばベトナムやフィリピンで同じような事業を展開することもありではないか。


2030年といえば、70歳である。医療技術の画期的な進化が期待できるから、まだまだ元気に働いていられる可能性がある。今から何か準備して始めてちょうどいいぐらいかもしれない。




昨日のI/O

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