モバゲーがんばれ
株価が一気に10万円安（ストップ安）
今日、マザーズから東証一部へと指定替えが予定されていたディー・エヌ・エー（DeNA）の話である。といってもピンと来ないかもしれないが、あの「モバゲータウン」の運営会社といえばご存知の方も多いだろう。
DeNAはもともとネットオークションサイトとしてスタートした。マッキンゼー出身の女性社長が起こしたベンチャーという話題性もあり、創業当初から秘かに注目していた。南場智子社長は個人的にはめちゃ才色兼備だと思う。トップエリートともいえるコンサルタントでありながら、あたりがやわらかそうに見えてとても好感が持てた。
だから私が関わっているいろんなメディアの取材候補として何回も提案してきた（残念ながら未だに実現するに到っていないが）。というぐらいに注目はしていたのだが、正直なところオークションサイトとしては堅実に地道ではあるけれども、それほどの伸びも見られない、といったポジションに甘んじていた。
そんなDeNAが急激に伸びたのは、ケータイサイト「モバゲータウン」をオープンしてからだ。無料でケータイで遊べるサイト、おもしろいゲームがたくさん揃っていて、SNS的な要素も備えていったサイトは、積極的な広告展開に打って出たことも相まって見事な（爆発的とさえいえる）ヒットとなった。
今やモバゲータウンの会員数は800万人を超え、まさに順風満帆。ケータイマーケティングの運営会社へとDeNAはが舵を切った矢先、現時点でのビジネスモデルに相当なダメージを与えそうなマクロ環境の変化が起こった。ケータイから有害サイトを見ることができなくなるようにする「フィルタリングサービス」の導入である。
ケータイ各キャリアが未成年ユーザーを対象としてフィルタリングサービスの原則加入を実施すれば、公式サイト以外へのアクセスが100％遮断されてしまう。DeNAのモバゲータウン会員は、その4割が未成年ユーザーであり、恐らくはこの未成年ユーザーが同サイトのヘビーユーザーでもあるはず。この層がサイトにアクセスできなくなれば、モバゲータウンの広告メディアとしての価値は大きく損なわれる。
といった連想が働いての株価下落となったのだろう。
もちろん、こうした動きがあることはDeNAでも読んでいたはずだし、それなりの手も考えていたと思う。が、今回の措置が確定的になったのはつい二日前に増田総務大臣がケータイ各社にフィルタリング普及促進を要請したからだ。
法律の改定、あるいは新法の施行などはある程度準備期間があるために、変更による影響を抑えたり、あるいはそこに新たなチャンスを見出してビジネスモデルを開発することが可能だ。しかし、今回のように一大臣の思惑で、しかも法改訂という明確なカタチではなく大臣からの突然の要請でビジネスモデルの前提が変えられてしまうとどうにも対応のしようがない。
裏読みをするならば、そうした措置の背景には誰かが得をする仕掛けが隠されていたりするケースも多々ある。今回の措置について、そうした裏の事情があるのかどうかは知らないけれど、ともかくDeNAが窮地に陥ったことは確かだろう。そしてこの措置はDeNAと並んで、ケータイ通販で伸びてきているゼイヴェルにも何らかの影響を及ぼすかもしれない。
ただしである。今回の一方的な措置は、遠くない将来に緩和、修正される可能性が高いと思う。なぜなら、この措置にはユーザーのことがまったく考えられていないからだ。
もちろん未成年者を有害サイトから守ること、犯罪被害に遭わないようにすることに異を唱えるわけではない。しかし、だからといってケータイキャリアの公式サイトにしかアクセスできなくする、というのもあまりにもユーザー不在の考え方に基づいた施策であることは明らかだ。
現実問題としてユーザーがアクセスしているサイトの割合が、公式サイトと一般サイトでどうなっているのか。詳しくは知らないが恐らくは一般サイトの方が倍ぐらいには多いのではないだろうか。特に未成年ユーザー、すなわち無料サイトを好むユーザー（＝一般サイトユーザーである）に限れば、一般サイトの比率が圧倒的に高かったはずだ。ということは、この措置はDeNAのようなコンテンツプロバイダーだけでなく、ケータイキャリアにとっても自殺行為となるリスクが生まれる。
ユーザーを無視した策は、決して真っ当なものとはいえない。だから一時的に苦境に陥ったとしてもDeNAは、必ず復活すると思う。南場社長がDeNAを率いている限り、きっとそうなると思う。もし自分に潤沢な資金があれば、今こそDeNAの株を仕込むときだぐらいにも思う。残念ながら手元不如意なために投資することはできないので、せめてエールを送ります「DeNA（そして南場社長）、がんばれ！」
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