シャーロック・ホームズの視点でマルチを解剖すると


直感的におかしいことは明らかなのだ


マルチビジネスである。アムウェイニュースキンなどはネットワークビジネスと呼び方を変えることで、うさん臭さを少しでも消そうとしているようだが本質がマルチであることに変わりはない。これにハマる人がいる。


そりゃマルチで儲かるなら、会社勤めをするように毎日満員電車に詰め込まれて決まった時間にどこかへでかけていく必要はない。すなわち上司にガミガミ言われることもない。ホームパーティでも開いて、お友だちを招き、優雅に自分の下部会員を増やしていく。ある程度会員数が増えれば、あとは左ウチワ、何もしなくとも子会員、孫会員、ひ孫会員が稼いでくれる。おいしいといえば、これ以上おいしい仕事はないかもしれない。


しかも単なるマルチ商法とは違う(と本部は強調する)。曰く、その違いは商品そのものに価値があること(だと本部は必ずくどいほどに強調する)。だから優れた商品を広めていくという意味においては、社会的にも意義のある仕事をしているのだ、と錯覚することもできる。


といった誘いを過去に受けたことがある。アムウェイを筆頭に話を聞いたことは何度かあるのだが、正直なところそれぞれの違いがよくわからなかった。聞き終わった結果共通するのが「それって変!」という感想である。絶対におかしい、という直感である。ついでに言っておけば、成功者の例としてこれまたほぼ共通して高級外車に乗っていることを写真で見せられた。


ただし、こちらの直感だけで推薦者をやり込めることはできない。彼らだって必死なのだ。しかも優秀な奴ほどきっちりと理論武装している。生半可な知識で論破することは難しい。


でも、どう言われてもおかしいのだ。と思い続けて何年にもなるのだが、遂になぜマルチがおかしいのかを納得させてくれる合理的な説明を見つけた。山口揚平氏のブログである。

一度、ディストリビュータの持つ在庫を含めた「連結」決算を見てみれば、マルチ商法を行なう会社がどれだけの債務超過になっているかが分かるだろう。要するにマルチ商法の本部は、連結外しによって本体の収益を底上げしているだけだからだ。
どのような言い訳をしようとも、マルチ商法の胴元は、「モノがいいならなぜ代理店制度をやらないのか?」という究極の質問に答えることはできない。なぜなら彼らの富の源泉は価値の提供対価として受け取る利益ではなく、その流通機構(=会員)の欲望を巧みに利用し、そこからお金を吸い上げることにあるからだ。
(人はなぜマルチ商法にはまるのか?
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0712/11/news023.html


お見事、一刀両断である。ついでに昨日聞いた話(キーエンスに取材に行ってきました)を踏まえるなら「モノがいいなら直販しないのか?」という質問を加えてもよいだろう。


なぜ山口氏の主張が、自分にはストンと腑に落ちるのかを考えていたときに、以前紹介した野口悠紀雄氏の三つの視点の話を思い出した。野口氏が語っておられたのはシャーロック・ホームズの視点、シュテファン・ツバイクの視点、絵を見る時の野口悠紀雄の視点だが、ことマルチ商法に関してはシャーロック・ホームズとシュテファン・ツバイクの視点が役に立つ。


何よりもまずシュテファン・ツバイク、すなわち純粋経済学的な視点である。経済合理的にマルチ商法を見ればどうなるのか。この視点を徹底したときに見えてくるのが、上に引いた山口氏の論点だろう。経済合理に徹して価値と対価のバランスに集中してマルチをみたとき、ディスリビューターが何の価値も生み出していないことは明らかである。百歩(感覚的には万歩ぐらいだけれども)譲るならば、アムウェイなりなんなりの優れた製品を世に広める行為こそがディストリビューターの価値だという強弁は成立するのかもしれない。


しかし、である。本当に優れ価値をそれらの製品が持つのなら、胴元はディストリビューターなどという閉鎖的なシステムを使わずもっとオープンな形でその製品を世に知らしめるべきであろう。およそこれまでに存在したまともなメーカーはみな、そうしているではないか。


そこでシャーロック・ホームズの視点が活きてくる。本来優れた製品であるならば、メーカーは広告を打ち、一人でも多くの人に、できるなら少しでも安く(もちろん自社の正当な利益を確保した上で)販売しようとするはずだ。それをネットワーク系の商品(マルチビジネスといってもいい)はやらない。やらない理由は何か?


それをしてしまっては、彼らつまり胴元の利益が冒されるからである。この場合の胴元とは、末端会員以上の会員すべてを含むと言っていいだろう。早い話が一番最後に会員になった人がババを引くシステムになっているわけだ。あるいは広告をして他社製品と比較してしまえば、マルチ各社が主張している商品の優位性がいかにあやふやなモノかが白日の下にさらされてしまうからである。


ということでネットワークビジネスマルチ商法に対する個人的な直感「これってダメじゃん」に、自分としては納得のいく合理的な説明がついた。あぁ〜、すっとした。



昨日のI/O

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キーエンス広報・インタビュー
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