任天堂が拓いたブルーオーシャン


1ヶ月で100万台


Wiiフィットが売れている。Wii用ソフトとしては最速ペースでの百万台達成とみられる(日本経済新聞2008年1月9日朝刊11面)。去年の暮れからコマーシャルで見かける「あれ」である。ちょっと見には体重計としか思えないのだが、これが売れているわけだ。


すごいと思う。


何がすごいのかといえば、体重計をゲームにしてしまったことがすごいのだ。同じく任天堂のすごさは、足し算・引き算や漢字の書き取りまでもゲームにしてしまったことだろう。これはPSPXboxなどとはまったく次元の異なるゲームではないか。というか、WiiフィットにしてもDSの計算や漢字ゲームにしても、明らかに従来のゲームとは異なりはしないか。


だからこうした任天堂のネオゲーム(と、とりあえず呼ばせてもらおう)で遊んでいる人たちも、これまでのゲーマーとは一線を画している。兆しはすでにあったのだ。確か一昨年の冬ぐらいに松嶋菜々子のコマーシャルで火が点いた『もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』である。この頃から任天堂は戦略転換を進めてきたのではないだろうか。


ゲーム作りを考える切り口を従来のではなく、まったく違った切り口でゲーム作りに取り組み始めた。それはロールプレイングゲームのようにストーリー性で魅了するのではなく、シューティング系などのアクションゲームのように映像のすごさ・リアルさで感覚を刺激的に魅了するのでもない。でも、おもしろい。


「『おもしろさ』とは何かを、うちはずっと追求しているんですよ」とは以前、同社前社長・山内溥氏からお話を伺ったときにもっとも印象に残った言葉だ。社長は交替したが『おもしろさ』を追求する姿勢は変わらず、よりその範囲を広げていった結果がいまの任天堂となっているのだろう。


任天堂がDSの脳力系ソフトやWiiでやったことは、ゲームのパラダイムシフトと言っていい。その結果、明らかにゲーム人口は増えた。当然である、これまでのゲームには関心がなかった人たちをゲームユーザーにしてしまったのだから。とはいえ当初のWiiはその操作感こそ従来のゲームにはなかったものだったけれど、ゲームの内容自体は画期的に目新しいとまでは言えなかったはずだ。


しかしWiiフィットは違う。DSが計算や漢字など従来とはまったく異質のソフト(コンテンツと表現するべきかもしれない)で勝負してきたのに対して、今度は体重計である。ブラマヨ風にいうなら「まさかなぁ、ゲームするのに体重計に乗せられるとはなぁ」である。これにより再び三たび、任天堂はゲームに新たな土俵を持ち込んだ。ここまでくればほとんど天上天下唯我独尊状態である。


ここで一連の任天堂のネオゲームに共通する価値があることに気がつく。つまりゲーム自体を楽しみながら、さらなる付加価値がきちんと計算されていることだ。脳力はボケ防止になる。計算や漢字もボケ防止になるし、もちろん適応年齢の子どもたちの学習能力向上にも役立つ。そしてWiiフィットは健康(実際のところ、どれぐらいの効果があるのかはこれからの話になるのだろうけれど)だ。あるいはWiiそのものはゲームを通じた家族の(失われていた)会話を取り戻す価値もあったかもしれない。


こうしたゲームは、少なくとも任天堂の直接の競合からは出てきていない(と思う、たぶん)。そして、これら一連のゲームは『おもしろさとは何か』をいろんなターゲットを想定して突き詰めていった結果、生まれたのだとも思う。ここが任天堂のすごさだろう。


Wiiについては、そのユーザーインターフェイスも画期的である。これについては、こうしたデバイスができたから今のようなソフト/遊び方が登場したのか、それとも初めにコンセプトありきで、今のWiiのような遊び方をするためにはこうしたデバイスが必須だとして開発されたのか。ニワトリが先か卵が先かみたいな話になるけれども、ここは本当のところどちらが先だったのかが非常に興味を引かれるところだ。


このあたりのことについては、ぜひ一度開発者にお会いしてじっくりと話を聞いてみたい。どこか、任天堂をきっちり特集してみたいのでに、京都近辺のインタビュアーを使って徹底取材してみようというメディアはありませんかね。





昨日のI/O

In:
『崖っぷち弱小大学物語/杉山幸丸
『危ない大学、消える大学/島野清志』
『潰れる大学、潰れない大学/読売新聞大阪本社
Out:
メルマガ


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ボリュームディスカウント
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□InsightNow最新エントリー
「誤解され続けてきた和の精神」
http://www.insightnow.jp/article/856

昨日の稽古:

・加圧ジョギング