中国餃子問題の本質


この10年で3倍


中国からの冷凍食品輸入である。この冷凍食品がどこまでの範囲を示すのかは知らない。が、これがもし餃子をはじめとする完成品輸入に限られた数字だとすると、ことは深刻だ。話をわかりやすくするために、餃子に絞って考えてみる。


今回、問題となっているのは中国でパッケージングまでされた餃子である。では、中国産のたとえばニラやキャベツにニンニク、あるいはその他具材を使い、国内で製造された餃子はどうなるのか。これは当然、冷凍食品輸入分には含まれていない。そうして食品は中国産とも表記されない。最終加工地が国内ならば日本産となるわけだ。


となれば、もしかしたらわが愛する王将の餃子にも、中国産の具材が使われている可能性がある。もしそうなら、中国からの輸入量はもっと増えることになるだろう。そうした食材の中に、毒物が混入している(故意に混入されたとの指摘もあるようだが)かもしれないというわけだ。これは由々しき事態である。昨日のエントリーで書いたように新聞各紙が責任の所在を問うのもむべなるかなだ。


しかしである。とりあえず昨日の新聞を読んだ限りでは、各紙とも決定的に重要なポイントが抜け落ちていたように思う。


問題の本質は、中国から輸入された食品の安全性ではなく、日本の食料確保問題である。仮に中国からの食品輸入が止まったらどうなるのか。ことはすなわち日本の食の安全保障に関わる問題だと思うのだが、違うのだろうか。


あり得ない話ではあるが、仮に今回の事件を中国サイドが「日本側のいちゃもん」だと判断したとしよう。その判断に対する報復措置として中国が、冷凍を含む日本への食品輸出を禁じたらどうなるのか。数字がうろ覚えなのが申し訳ないが、たしか輸入されている冷凍食品の8割程度が中国産のはずだ。それが止まる。


もちろん現時点では、中国以外からの輸入が可能かもしれない。しかし、中国より製造コストが安く、物流コストも低く抑えられる国からの代替輸入でない限り確実に価格は上がる。それでも、まだ代替輸入できればそれで良しとすべきなのだ。なぜならたとえばトウモロコシに限れば、アメリカはすでに海外に輸出するより自国でエタノール燃料に転換する方が高収益となる仕組みを政府主導で進めている。そうなればトウモロコシを日本がアメリカから輸入することは難しくなるだろう。


トウモロコシなんて、そんなしょっちゅ食べるもんじゃないし、という問題ではない。輸入トウモロコシは発泡酒の原料となり、あるいは牛や豚の飼料となっているはず。だからトウモロコシを輸入できなくなると、牛や豚を国内で飼育することが難しくなるわけだ。


話を餃子に戻せば、中国からの輸入が止まるとなると中にいれる具材を今のコストで手当てすることは不可能だろう。もちろんことは餃子だけにとどまらない。冷凍食品のほとんどが同じ状況となるはずだ。さらには外食産業にも深刻なダメージが及ぶ。ファミレスチェーンなどの食材も、そのほとんどが中国産のはずだから。


つまり、中国からの食品輸入が止まれば、今のようなコストで今のようにぜいたくな食生活を維持することはほぼ確実に不可能。日本の食料自給率がわずかに4割しかない、というのはそういうことである。


今のところ中国は、その品質に少々難はあるとはいえい、食品を海外に輸出してくれている。なぜなら、中国国内での需給バランスをみるとまだまだ供給量の方が上回っているし、さらには日本に輸出する方が高く売れるからだ。ということは、中国の国内需要がもっと増え、さらに国内で販売しても輸出するのと変わらないぐらいの価格で売れるようになるとどうなるのか。


今回の餃子問題を契機に、こうした日本の食料自給事情を真剣に考えるべきだと思う。現に中国サイドでは次のような声も出ている。

「日本人は、中国の安い原料と人件費を食い物にしているのだから、問題が起きたら自己責任だ」「嫌だったら輸入しないで、自分で食べ物を作ったら」(朝日新聞2008年2月2日付朝刊2面)。


中国が日本にさまざまな食料品を輸出しているのは、人道上の意義を感じているからでは決してない。中国が輸出しなければ日本は食べていけないから、ここはやはり隣国として助けてあげなければならないと考えているわけではないのだ。日本を輸出先としている理由は、それが経済合理性にかなっているからに過ぎない。すなわち日本を輸出先とすることに経済合理性がなくなれば、日本への輸出はあっさりと止まるだろう。


日中間にはさまざまな問題があるけれども、日本にとって中国は今や最大の(より正確には生命線を握っているといっても良いぐらいの)食料供給国であることを決して忘れてはいけないとも思う。




昨日のI/O

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