あるITベンチャーの末路


これまでインタビューした相手は1000名を超える


ともなれば、その相手にヤバい人が混じることもある。たとえば植草一秀氏。植草・元教授は女子高生のスカートの中を手鏡でのぞこうとした疑いで逮捕された。逮捕されるちょうど2週間ほど前に、彼に取材をしたばかり。テレビニュースを観ていてびっくりし、同時にえらいことになったと思った。


取材して書いた記事にはクライアントからOKが出ており、間もなくクライアントの得意先に配布される直前だったからだ。記事が掲載されるのはクライアントが顧客サービスにと配布している情報誌である。その巻頭特集に、真偽のほどはともかくとして逮捕された教授のインタビュー記事が掲載されるのはいかにもまずい。


間に入っている代理店に連絡すると、逮捕のニュースはまだ知らなかったようで、急遽印刷さし止めとなった。そのためツッコミで別の教授にインタビューを申込、連休返上で原稿を書いた記憶がある。はた迷惑な話しである。


そして昨夜、過去にインタビュー経験のある相手の中から二人めの逮捕者が出た。現オーベン(旧社名アイ・シー・エフ)の元社長、佐藤克氏だ。


新聞報道を見て知ったのだが、インタビュー当時の彼はまだ20代だったのだ。しかし、その話し振りからは何ともいえぬ風格を漂わせていた。ベンチャー企業として上場していたこともあり、こちらが勝手に相手にカリスマ性があると思い込んでいただけかもしれない。しかし、いまも微かに残る想い出を集めて彼の人物像を再現してみても、やはり人の上に立てる器があったことは確かだと思う。


当時関わっていたのが、東京のイケイケベンチャー企業の若手社長7人に対して、毎月一回徹底インタビューを行ない、日替わり対談ブログとしてネットに掲載する、といった仕事である。だから件の社長とも月に一回、だいたい1時間程度、膝を突き合わせてじっくりと話を聞いていた。


彼の話にはリアリティがあった。大学時代にすでに起業し、その会社を潰し、苦労して再起する。やがて人に恵まれ、ベンチャー市場に上場していた企業の再生を任され、見事に成功。私がインタビューしていた時期には株価も見事に上げ基調にあり、V字回復請負人としての才覚を存分に発揮していた。


インタビューの中では、問題となっている取引のことも話に出ていた。そのときに聞いた話しと、いまマスコミが報道している内容には天と地ほどの開きがある。そのどちらが本当だったのかは、これからの時間が明らかにしてくれるのだろう。


と、ここまでくどくどと書いてきて、何を言いたいのかといえば、人を見極めることの難しさである。


たかだか月に一度、一時間ばかり話を聞いただけで何がわかるものか、という批判が出るのは重々承知。しかし、それを言うなら株主は自分が投資している企業のトップをどれだけ見極められているのだろうか。インタビュアーとインタビュイーという関係ではあるが、私は少なくとも相手と対面でみっちりとその話を聞いてきた。それでも、ころっと騙されていたかもしれないのである。


ましてやロードショーで説明を受けるだけの投資家はどうだろうか。


話を聴く相手も百戦錬磨、投資によるリターンで生業を立てている人物である。その目のシビアさは容易に想像がつく。従ってそうした相手に話すときは、彼の社長氏も相当にガードを固めていたはずである。鵜の目鷹の目で相手が自分を量っていることをわかって会っているわけだ。私のように、基本的に相手の良いところを見つけてヨイショ記事を書こうとしているライター風情と向かい合うのとは、その根本的なスタンスがまったく違うだろう。


それだけに、インタビューで彼が示した態度、話してくれた内容にはかなりな真実が含まれていたと思いたいのである。


もしかしたら何億というカネに目が眩んだのかもしれない。そりゃ、そうだろう。20代で数億ものお金を手にすれば、それで人生は一丁上がりみたいなものである。よほど下手を打たない限りは、それで一生安泰に暮らしていける。だから、魔が刺したのかもしれない。


少なくとも首謀者は彼ではない。黒幕的な人物も逮捕されているわけで、こちらが裏で糸を引いていた可能性が高い。そう思いたい。そしてインタビューを通じて知っている彼なら、きっと自らの再生もやり遂げてくれる。そう信じたい。



昨日のI/O

In:
谷町通信・ミーティング
Out:
Xavelインタビュー記事第一稿
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 「携帯メーカーは、何社生き残れるか」
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昨日の稽古: