ワタミよ、お前もか


前年対比プラスはサントリーだけ


ビールの話である。2007年の大手5社の出荷数量は、前年対比で次のような結果となった(日経産業新聞2008年1月18日18面)。

アサヒビール ▼1.7%
キリンビール ▼1.5%
サッポロビール ▼0.0%
サントリー 5.0%
オリオンビール ▼5.6%


ただし、これはあくまでも「ビール」の話であり、発泡酒第三のビール(って何やねん!)は含まれていない。というか、本当のビールということであれば、この数字はもっと変わってくるだろう。以前のエントリー(→ http://d.hatena.ne.jp/atutake/20060922/1158897716)でも書いたように、ビールで『本物(本家ドイツが認める、ぐらいの意味ですね)』を名乗るのであれば、その材料は麦芽、ホップ、水のみでなければならない。


だから厳密にはアサヒ・スーパドライもキリン・一番搾りもドイツ流ビールの定義に従うなら、ビールの範疇に入れてはならないのだ。


それはさておきここでガラッと話が変わるのだが、個人的には居酒屋チェーンの中ではダントツでワタミ系を好んでいる。『和民』あるいは『わたみん家』である。ワタミを好む理由は接客(最近落ち気味だけれど)や料理の味(比較的ていねいに作られていてまずまず美味しいと思う)に加えて、何より大きいのがモルツを置いていることにある。


モルツ、すなわち麦芽100%のきちんとしたビールである。昨年からは酒屋ルートではザ・プレミアムモルツに変わってきているけれど(なぜか我が家で愛飲している小瓶ではただのモルツは製造中止となり、ザ・プレミアムモルツしかないらしい)、いずれもきちんとしたビールであることに変わりはない。すなわちワタミケイレツに行けば、ややこしいことを言わずとも、ただひと言「ビールちょうだい」で本物のビールを飲むことができたのだ。


ところが、である。


そのワタミでも『わたみん家』ではビールを飲めなくなるという。ワタミアサヒビールからの出資を受け、その見返りとして『わたみん家』では出すビール(正確にはもどき)をスーパードライに変えるからだ。「オー、マイガァ!」なんと愚かなことを。


なぜ、そんな愚行に走るのか。昨日付けの日経産業新聞には次のようなもっともらしい説明が書かれている。

スーパードライは置いていないの?」。そうした苦境にあって店舗では消費者からこんな声が寄せられた。
ビール系飲料の需要減が続く中、トップシェア商品の優位性は一段と高まる傾向にあり、スーパードライの存在感は際だつ。


ほんまですかいな? 少なくとも2007年度の販売数でいえば、スーパードライも前年対比ではマイナスとなっている。そりゃ絶対数でみればスーパードライは1億3000万ケース、これに対してモルツ(ザ・プレミアムモルツ含む)は2000万ケースしかない。確かにスーパードライを好む人が多いことはよくわかる。が、ワタミ系列を贔屓にする客にはモルツを好む人だってそれなりにいたんじゃないのだろうか。


この際、スーパードライに切り替えることによって増える客数見込みと、モルツが飲めなくなることによって減る客数見込みを『わたみん家』ではきちんと予測したのだろうか。私のようなビールファンは少数派だとは思うけれど、真剣なビールファンであるだけにモルツしか置かないワタミは立派だと思い、せっせと(少なくとも居酒屋チェーンのどれかを選ぶときには)ワタミ系列に通っていたのに。同じようなビールファンもワタミファンには相当いらっしゃるのではないか。


そもそも最大の謎は、なぜわざわざアサヒビールの資本までを受けいれる必要があったのかである。どうしてもスーパードライを飲みたい客が仮にいるのなら、モルツに加えていくらか置いておけばすむ話ではないか。もともとワタミは創業期からサントリー一筋であり、5%の出資も受けている。サントリーと二人三脚でやってきた居酒屋といっても過言ではないのだ。


にも関わらずのアサヒからの出資受け入れは、きっと裏に何かあるんじゃないのと勘ぐりたくなる。日経産業新聞も、日経MJ新聞でも「スーパードライは置いていないの?」という客の声があったことが紹介されているけれども、わざわざそんなことを強調すること自体がおかしい。絶対に変である。


いずれにしても、これから先『わたみん家』には行くことはなくなるわけで、また選択肢が一つ減った。悲しい限りだ。





昨日のI/O

In:
『国家論/佐藤優
Out:
メルマガ


昨日の稽古:

・腹筋、拳立て伏せ