花粉症ブルーオーシャン


平均33万円


花粉症を治すためにいくらなら払うか。そんなアンケートをグラクソ・スミス・クラインが実施した。対象は全国の部下を持つビジネスパーソン男女412名(年齢20〜39歳)である(→ http://contac.jp/soken/images/Contac600_ResearchReport_February2008.pdf)。


これがなかなか興味深く、また実感のこもった調査結果となっている。まず花粉症が業務遂行上どんな影響を及ぼしているか。ダントツのトップは「長時間のミーティングに集中できない・中座してしまう」で約56%。鼻が詰まってボーッとする、あるいは意識していないのにも関わらず鼻水がツーっと流れてくるといった状況では、打合せに気が入らないのもむべなるかなだ。


花粉症を理由に仕事を休みたいと考える人も半数近くに上っている。とはいえさすがに花粉症を理由に仕事を休むわけにはいかないと考える人も多いようだ。ただ花粉症が本当にひどい人の悩みは昼間のことだけではない。より深刻なのはむしろ、夜ぐっすりと眠れないことにあるのではないだろうか。要するに鼻が詰まるためにきちんと呼吸することができず、眠りが非常に浅くなる。これは一種の睡眠障害となるわけで、ただでさえ花粉症の影響で昼間ぼやっとしがちな意識が眠気の攻撃を受けて集中力ずたずた状態まで悪化する。


神経を使う仕事をしている人にはたまったもんじゃないだろう。花粉症がひどい人にとっては、これは相当な苦しみとなる。それ故に花粉症がなくなるのなら高級外車やブランド時計・バッグなどは失っても惜しくないと答える人が40%ぐらいいる。ちょっと妙な例えだけれど、花粉症を治すこととのトレードオフならこれらをあきらめても良いということなのだろう。


調査レポートではまだいろんな質問が続いた後に、冒頭の花粉症がなくなるのならいくらまで払うかという質問に至る。これが平均33万円となった。結構な投資額ではないか。ざくっとした感覚ではおそらくアンケートに答えたビジネスパーソンのほぼ1ヶ月分の給料ぐらいに相当する額だろう。それぐらい切実ということだ。


すなわちここには明らかなマーケットがある。鼻炎薬として錠剤タイプやスプレータイプなどがドラッグストアで売られているが、これらの薬品とはまったく違った次元での出費を、本当に花粉症で悩んでいる人は厭わないとはっきり言っているわけだ。


花粉症の治療には減感作療法もある。花粉症を引き起こすアレルゲンをほんの少しずつ注射によって体内にいれ、その量を徐々に増やしていくことで過敏な反応を減らす治療法だ(→ http://allabout.co.jp/children/childrenshealth/closeup/CU20060306A/)。これが花粉症を医学的に「治す」方法である。しかし時間のかかることがビジネスパーソンにとってはマイナス要素となる。


あるいはレーザー治療もある。麻酔をして30分程度で終わり、費用も1万円ちょいぐらいだという。手術後は個人差があるがかなり鼻の具合はよくなるらしい。ただし、これも人によりけりだが効果が持続するのは2年から長くて4年ぐらいらしい。忙しいビジネスパーソンには案外、これが良いのかもしれない。


ただ顧客サイドでは30万出しても良い、といってるのだからもう少しマシな提案があっても良さそうだ。ターゲットがビジネスパーソン、すなわち時間を最も優先する人たちなのだから、ポイントは時間パフォーマンスの良さをいかにアピールできるか。たとえばレーザー手術後はとんでもないぐらいの鼻水が出て、外出が憚られるぐらいらしいから、一泊二日ぐらいで高級ホテル&エステサービス付きのレーザー手術コースなどがあっても良いのではないか。


これなら金曜の夜に入院して、手術を受けて、そのあとホテルでゆったりとしてマッサージなども受けて体力も気力も回復、然る後に月曜日から気分よく職場復帰といったプランを組めそうだ。あるいは減感作療法の注射を、職場なり住まいなりへ出張して打つサービスはあり得ないか。これもマックス30万円までの売上を見込めるとなれば、付帯サービスを付けてバリューアップすることが可能だと思う。


花粉症に関しては、別の調査によると

花粉症の症状が始まると「体力も気力も衰える」人は全体の50.5%、「体力は衰えないが気力は衰える」人も36.8%いた。そのため、「症状が始まると外出を控える」人は62.4%と半数を超える(日本経済新聞2008年2月28日付32面)


母集団がまったく異なるから、こちらの調査に答えた人たちが花粉症治療に30万円を出すことはないだろうが、ここにも花粉症治療マーケットがあることは間違いないわけだ。


たいていの人は花粉症が逃れることができず、といって休むこともできず非常な『不愉快・不便・不具合・不満』状態にあるのだから、ここには明らかにマーケットが存在する。もっと画期的なサービスが登場することを花粉症に悩める一人としては切に希望する。


余談だけれど今年は個人的に花粉症にほとんど苦しんでいない。去年と比較して違うことは、毎日3〜4回、お鼻の内側に「アレルシャット」なるクリームを塗りたくっている。これで鼻づまり、鼻水からは解放されている。目はしっかりかゆいので花粉症自体は発症しているはずだから、意外にこのクリームは優れものなのかもしれない。



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