なぜ若者はクルマを買わないのか


前年比0.4%減、全体の27.2%


今年の春に就職する予定の18〜24歳の社会人1000人を対象としたインターネット調査の結果である(日経産業新聞2008年3月19日15面)。同紙によれば「今後一年間で自家用車を購入する具体的な予定がある」と回答した人が上記の数字となった。車を買う予定のある若者は、ざっと4人に1人しかいない勘定になる。


18から24歳ぐらいといえば、以前なら自分の車を一番欲しがった年代だ。しかもアンケート対象者はこれから社会人になる人だから、自分でお金を稼げるしローンだって組める人たちである。それでも車を買う予定のない人が4分の3を占める。要するに車なんていらないか、あるいはクルマを買うよりも他のことにお金を使いたいと考えているわけだ。


エントリーユーザーがどんどん減る傾向にあるのだから、国内での自動車販売数が増えないのも無理はない。もっとも、移動手段としての車に対する必要度は居住エリアによって大きく差が出る。だから上記のインターネットアンケートの結果は、アンケート対象者の居住地によって大きな差が出ると思う。


が、とりあえず都市圏、すなわち公共交通機関での移動がほぼスムーズに可能なエリアに話を絞れば、車が必要ないと考える人はもっと増えるだろう。特に若い世代にとっては、車よりも他にお金を使った方がより効率的だ。


ここで効率的というのは、たとえばコスト・ファン(エンターテイメント)係数というものを仮に設定したらの話である。つまり同じだけのお金をかけるとして、何が一番楽しいかという基準値を持ち込んでみてはどうか。


するとおそらくクルマのコスト・ファン係数はいま、相当に低くなっていると思う。早い話がクルマに乗ってもちっともおもしろくないんじゃないか。過去の自分を振りかえってみると、20歳ぐらいのときにはクルマやバイクが欲しくてたまらなかった。学生だった故にクルマを買うほどのお金はなく、バイクに乗っていたがそれでも十分に楽しかった。


自分で好きなときに好きなところへ自由に移動できる。しかも移動自体が楽しい。バイクやクルマの価値はそこにあった。ポイントは運転そのものを楽しめる余地があったことだと思う。これに対していまは、クルマの運転なんて楽しいことはちっともなく、むしろ苦痛であることの方が多い。特に都市部では渋滞が慢性化しているからだ。


ちなみに、この20年ぐらいの間にクルマの数がどう変わったか。乗用車の保有台数に限ってみれば
1985年:約2700万台
2007年:約5750万台
(→ http://www.airia.or.jp/number/pdf/03_1.pdf
実に倍以上、3000万台も増えている。この間にせっせと道路も造られたのだろうが、少なくとも都市部にはもうそんなに道を作る余地がないことを考えれば、道が混むのも当たり前だ。


混むのは道路ばかりではない。駐車場だって不足するだろう。にも関わらず駐車禁止の取り締まりは厳しくなり(罰金高いし)、飲酒運転の取り締まりだってめっちゃ厳しくなっている(罰金チョー高いし)。しかも都市部に住んでいれば、絶対にクルマが必要なんて状況はまずない。若い人たちがどちらかといえば都市部をめざすことを考えれば、彼らがクルマを買わなくなるのも当然ではないか。


クルマを動かすためにはガソリンが必要である。ではガソリン代はどうなったか。20年前と比べれば倍以上になっているのではないか。この20年間、いろんなものの価格が上がったり下がったりしている中で、ガソリンはダントツの値上がり組だ。コスト/ファン係数に敏感な若い人が、わざわざクルマに投資する理由はほとんどない。


かたやこの20年間でクルマに取って代わるモノが登場した。パソコン(インターネット)であり、ケータイであり、ゲームである。クルマにお金(=コスト)かけるよりも、こうしたモノにお金をかける方がよほど満足度は高い。これが今の若い人たちの感覚ではないだろうか。


おそらくクルマは今後、もっと売れなくなると思う。


昨日のI/O

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『逆立ち日本論/養老孟司内田樹
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