コンサルタントの「質問力」
- 作者: 野口吉昭
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2008/03/19
- メディア: 新書
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インタビューの大切さを講演に行く朝に出会った本である
以前からいわゆる「押しの営業」の限界を強く意識していた。特にBtoBでは、これまでいわれてきたクロージング話法などがほとんど通じていないことも実感するようになった。そしてキーエンスに取材に行って以来、こうした実感は確信に変わっている。つまり売り込んでは売れないのだ。これはBtoBで、しかもそこそこ大型の商談になってくると鉄則といっていい。
すなわち営業とは売り込みではなく、聴き込みなのである。
二日前の朝、今日の講演ではそんな話をしようと思いながら新幹線に乗り、カバンから取り出した本がこれである。当たり前の話ではあるが、誰か何かを聴こうと思えば質問をしなければならない。そりゃ中にはこちらが何もしゃべらなくとも一方的に話してくれる人もいる。しかし、そういう人は得てして、こちらが聴きたいことを語ってはくれない。だから質問力が大切なのだ。
とはいえ、以前何社かお手伝いをした中小の産業材メーカーさんで営業をされている方はおしなべて話をするのが苦手である。これもまた仕方がないところがある。なぜならそうしたメーカーで営業をされている方は、元々は技術系の方が多いからだ。つまり人と話すのがどちらかといえば本職ではない。かといっていわゆる本職としての営業職を雇うだけの余力が企業にないケースが多々ある。
そして,恐らくはプロの営業マンを雇った経験があっても、あまりうまくいかなかった印象を会社としてお持ちなのではないか。そのために専門の営業職を雇っておられないケースもあると推察する。これまた無理のないことだろう。いわゆるプロの営業マンはたくさんいらっしゃるのだろうが、BtoBでの本当のプロとなると滅多にいないはずだ。仮にそんなプロがいたなら、その人が務めている企業が手離すはずがない。
そこで『頼まれインタビュアー』としてお声がかかることになる。こちらはインタビューについてはプロである。幸い、かなり多様な分野でトップレベルの方からお話を伺って来たので、広く&ちょっと深くぐらいの知識は一通りある。もちろん実際のインタビューにかかる前に、プレ取材もするし自分なりにいろいろ調べもする。そして、これまたインタビュアーとしては当然のことではあるが、あらかじめインタビューのシナリオを組み立ててもいる。
だから、中小メーカーの営業さんと同行して商社や代理店インタビューを請け負うと「これまで話してもらえなかったことを聞けました」とか「まさか、そんな不具合が起こっていたとは思いもよりませんでした」と感謝されることになる。
ということで、本書から参考になると思ったところをメモっておく。自分なりにこれまで意識して実践して来たこと、意識していなかったけれど明文化されることによって改めて認識できたこと、参考になるなと思ったことが混ざっています。
「どこでもいいから三分間に一度、必ずうなずいてください。それで私のモチベーションが上がりますから」(同書、30P)
「この部屋は暑いね」
「そうだね」
「この部屋は暑いね」
「クーラーを入れましょうか」
相手の真意を読み取ること。人が何か発言したときに、そこにどんなメッセージや思いが込められているかを会話の文脈の中で読み取れるようになることも、質問力やコミュニケーション力を高める上で重要なことである。(同書、48P)
上司や部下、顧客のナラティブなレベルの語りにまで耳を傾け、メモする人はほとんどいないのではないか。(同書、58P)
仮説がなければ漠然とした質問しかできない。漠然とした質問に対しては、人は漠然とした答しか返さないものだ。(同書、66P)
事前リサーチのときには、まずはセカンダリーデータの収集を中心におこなうといい。そして仮説を立て、目標を明確にしたうえで、プライマリーデータの収集を始める。(同書、79P)
今回のインタビューのテーマは○○である」という仮説を立てたら、そのテーマを聞き出すための具体的な質問事項を考える。これはブレイクダウン型のロジックツリーを使っておこなう。(同書、86P)
自分が想像する者には目を向けやすく、想定外のことは無意識に考えないようにするものである。仮説を立てながら、仮説を捨てる。(同書、98P)
三歩先を読み、二歩先を語り、一歩先を照らす/藤沢武夫のことば(同書、111P)
質問は、「なにを聞くか」とともに、「どんな思いをもって聞くか」がとても重要になるのである。(同書、124P)
「えー」「あー」などの「言葉のひげ」を削ぎ落とすだけで、話す時間はずいぶん短縮される。(同書、167P)
インタビュー中にとるメモも、3C分析、4P分析、SWOT分析やらPPM分析などのフレームワークだらけになる。たとえば相手の話を聞きながら、「今の彼の話をSWOT分析の四象限に位置づけると、強みと機会についてだな」などと考える。(同書、177P)
質問をしてそれに答えてもらうプロセスの中で、インタビューの対象者自身でさえこれまで言語化できていなかった潜在的な問題意識や感情が引き出せる瞬間がある。(同書、181P)
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