朝令暮改の奨め


「整理した方がいい」が6割


新銀行東京について東京中小企業同友会が今月実施した緊急アンケート(有効回答200社)の答である(日経産業新聞2008年3月26日付36面)。


中小企業支援をその役割として設立された銀行が、そのターゲット顧客である中小企業から必要ないと言われている。にも関わらず東京都は400億円もの追加融資をほぼ決定したようだ。最後まで頭を下げることを拒んでいた知事もついに謝罪した。そのとき都の職員は知事に「いいですか、1秒で100億ですから」などと頭を下げる時間を吹き込んだ。そんな話がまことしやかに報道されていた。

石原知事は25日、「追加出資は(清算など)選択肢の中で最も都民の負担が少ない。困難な道だが、ここで投げ出すわけにはいかない」と訴えた(前掲紙)。


この「最も都民の負担が少ない」というのがくせものではないか。なぜなら、この解答にはこうした金融の問題を考えるときに絶対に欠かせない時間の概念が抜けているからだ。まず「都民の負担」とはいつを起点にして、どれぐらい先のことまでを言っているのだろうか。10年先か100年先か、それとも石原知事が引退するまでのことか。


おさらいをしておくと銀行というビジネスモデルは、預金を集めて、それを誰かに貸出し、金利をいただくことによって成立する。ただし集めた預金に対しては利息をつけてあげなければならない。だから貸し出した金利と利息の差がおおざっぱにいえば銀行の粗利である。そこから人件費やその他の経費をさっ引く。これが通常のモデルである。


が、お金を貸し出せば、貸し出した先が倒産することもある。そうなると貸し出したお金を全額回収できないリスクがある。実際のところ、新銀行東京はこうした貸し倒れがあまりにも多く出たために、追加出資が必要となったわけだ。


ということは、すでにこれまでの時点で、この銀行は銀行としてのビジネスが成立していないということである。ところが、とりあえずいま400億追加出資すれば、都民の負担は最も少なくなるという。そこがおかしい。


つまり、これまでうまくいっていなかった「新銀行東京」式銀行ビジネスモデルを、これから先どう変えていくのかが説明されていない。もちろんこれまでのやり方を踏襲していたのでは、これまで通りうまくいかないことは誰だってわかる。だから、これから先はきっとうまくいくという(だから将来は負担が少なくなるはずだ)のなら、そのやり方を教えてもらわないことには、都民の将来にとって400億の追加融資が最も負担が少ないかどうかなんて判断できない。


変ではないでしょうか?


しかも本来ならこの銀行からお金を借りる立場にあるとされている中小企業の人たちの半数以上が「いらない」と言っているのにである。一体誰が、この銀行からお金を借りて、ここが大切なのだけれど、きちんと返してくれるのだろう。


仮にいま清算するとなると一千億ぐらいかかるという話がある。それでも、この5年先(知事が引退した後ぐらいでしょうか)に2000億とか3000億とかが必要になるのだったら、いま潰してしまった方がよいという判断も成り立つはずなんだけれど。そこはマスコミも、あまり強く突っ込んでいかない。


なぜだろう。とても不思議だ。


このままではマズい。うまくいきそうにない。そう判断したときには、仮にいま相当の痛手を負うことになっても、とにかく撤退するのが得策。だということを日本人は90年代のバブル処理を通じて学んだはずではないんだろうか。朝令暮改が良くないなどというのは情報伝達が極めてスローモーだった時代の話であり、いまは朝令暮改を毅然とやり遂げるぐらいのリーダーシップが指導者には求められる時代だと思う。


東京都があと何年か先に転けたりしたら、日本にとってはけっこうな痛手になるはずだから、いま何とかすべきだと思いました。もしかした石原さんが熱心に招聘している東京オリンピック誘致とことが絡んでたりしないことを祈るばかりだ。




昨日のI/O

In:
『質問する力/大前研一
Out:
姫路獨協大学福田教授インタビューメモ

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昨日の稽古:

・腹筋、懸垂、スクワット