中国が食料を輸入するとき


冷凍野菜1163億円、生鮮野菜964億円


日本の野菜の輸入額である。いずれもほぼ50%を中国からの輸入に頼っている。

日本の農産物輸入額は80年から90年までの10年で倍増したが、中国の野菜輸出額は、同じ時期に約4倍も伸びている。90年代中ごろには、(中国の)野菜輸出先の4割を日本が占めるようになった。
WEDGE、2008年4月号)


毒入りギョーザ事件で問題となった天洋食品が作っていたのはギョーザだけではない。同社製の冷凍食品は日本の33道府県で606校もの小中学校用給食材として使われていたという(前掲誌)。中国の食材は、それとは気がつかないだけであちらこちらで使われているのだ。そしてギョーザ事件がキッカケとなって、いまちょっとした手作りブームが起こっている。おかげで調理器具が売れているそうだが、所詮はブームだからそう長くは続かないだろう。


それより何より、もし中国からの野菜類の輸入が止まってしまえば手作りしたくとも野菜そのものがないわけで、どうしようもなくなる。中国産がダメなら国産野菜を食べれば良いではないか、とそんな意見も出てきそうだが、それははなから無理な話である。


先日のエントリー『冷凍食品がなくなる日(→ http://d.hatena.ne.jp/atutake/20080408/1207643918)』でも書いたように、日本の食料自給率はカロリーベースで40%を切っているような状態だ。すでに国内産の野菜だけで日本人全体の胃袋を満たすことはできない。絶対量が足りないのだ。


さて、少し歴史を振りかえってみると、食料と同じように以前は中国から輸入していたけれども、中国国内での消費が増えるにつれて輸入がストップしてしまったモノがある。石油である。「工業は大慶に学べ」というフレーズで有名になった大慶油田からは2003年まで日本に原油が輸出されていた。


その中国が石油の輸出国から輸入国に転じたのが1993年である。輸入国となりながらも、おそらく高く売れる日本相手には輸出を続けていたが、その余裕すらなくなるほど国内需要が伸びてしまったのが2003年というわけだ。ここで注目すべきは、石油の輸入国に転じてから日本への輸出が止まるまでの10年という時間である。


その中国の食料事情はどうなっているだろうか。同じく『WEDGE』2008年4月号によれば

中国は04年に食料の純輸入国になった。今年1月には、国内需要の逼迫を理由に蕎麦など一部の雑穀の輸出を抑制している.

とある。


仮に中国国内での需要増による輸出ストップが、食料でも石油と同じパターンをたどるとすれば、2014年には日本は、中国から食料を輸入することができなくなる。いま中国が世界各地で石油の買い付けに奔走していることをあわせて考えれば、同じような行動を食料でも取る可能性は否定できないだろう。


ここで考えるべきは、そうなったときにどうするかではなく、そうならないようにするために今から何ができるかだ。残された時間はまだ6年ある。


やるべきことは3つあると思う。まず手をつけるべきは国内農業の復興だろう。それも農家の方々に従来通りの苦労をお願いするといったやり方ではなく、農業のやり方を根本的に変える必要がある。農業をビジネスとして捉え、持続可能な収益の出るシステムを整備すること。儲かるから、あるいはやりがいがあるからといった理由で農業をやってみたいと考える人を増やしたい。ガソリン税は復活してもいいから、そのお金を道路作りではなく農地整備に使うべきだ。


二つめは食料の調達先を分散すること。たとえば生鮮野菜の輸入先は、中国、アメリカ、ニュージーランド、韓国、タイの順になっているけれど、ニュージーランドあたりからの輸入をもっと増やすようにしてはどうだろう。その場合の輸送コストは当然、中国から運んでくるよりも高くつくだろうけれど、それでも手に入らなくなるよりはずっとマシではないか。


そして三つめはやっぱり教育に力を入れることじゃないんだろうか。海外から食料を買うためには、当たり前の話だけれど原資が必要になる。その原資を日本はどうやって稼ぎ出すのか。優れた製品を作り、それを売るしか資源に恵まれない国の生きる道はない。では、そういう製品をどうやって開発するのかといえば、そこで効いてくるのはマンパワーしかない。


ということぐらいは(というか、もっと現実で優れた案を)、もちろん今の政府の人たちはちゃんと考えてくれていると思うのだけれど。




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