チキンラーメン4ミリの差


8ミリから12ミリへ


くぼみの深さがわずかに4ミリではあるが深くなった。チキンラーメンである。少しだけおさらいしておくと、このチキンラーメンは世界初のインスタントラーメンである。発売されたのは今から約50年前、なんと私よりも長寿商品である。私(現在48歳)の世代ぐらいの方は「すぐおいしい〜、すごくおいしい〜」というテーマソングを覚えている方もいらっしゃるのではないだろうか。


このチキンラーメンが実は発売45周年を記念して、微妙にリニューアルされていた。どこが変わっていたかといえば「たまごポケット」が付けられていたのだ。このたまごポケットとは、チキンラーメンにとってそれこそ文字通りコロンブスの卵的なアイデアだった。


世の中の人すべてが、チキンラーメンの食べ方において、自分と作法を同じくするとは思わない。そんな大それたことは夢想もしないけれど、とりあえず自分のまわりではチキンラーメンといえば生卵を乗せ、それにお湯をかけて3分待ち、然る後にネギをドサッとかけて食べるというのが正しい食し方である。


問題は、この生卵乗せ&熱湯かけという一連の動作にあった。理想はでき上がったラーメンの真ん中で、生だった卵が半熟状態にまで熱を加えられ、白身がややカタチになりつつアリ、黄身は生より少々固形化していてほしい。これがなかなかに難しいのである。


よって幼い頃、我が家では父親がラーメン(正確にはチキンラーメン)奉行を勤めていた。父は慎重に、最初は別の器に卵を割り、それを丼にできる限り水平に置いた麺の上にそっと、本当に細心の注意を払って乗せていた。白身が広がらぬように、間違っても黄身が潰れたりせぬように。そうやって卵が安定したことを確認してから、おもむろにお湯をかけていく。このさじ加減に奉行ならではのノウハウがあったのだ。


お湯を注ぎ終わるやいなやお皿でフタをする。これも忘れてはならない儀式である。そして待つこと3分、フタを開けるとそこには麺の真ん中ににっこりと笑ったような卵が乗っかったチキンラーメンの出来上がりとなる。これをいきなり卵を崩してかき混ぜ乱暴に食べるのが妹であり、私はといえば卵はできる限り最後まで残しておいて麺があと「一すべ」となった時点で卵を潰し、麺に絡め、またスープに絡めて一気にいただくといった食べ方をしていた。


三つ子の魂百までとはよく言ったもので、今でもチキンラーメンのこの食べ方は子どもの頃と変わっていない。


えらく話が脱線してしまった。ポイントはたまごポケットである。これが付けられたことによって、がさつな私でも親父と同じような出来映えのチキンラーメンを作ることができるようになったのだ。ありがたいことではあるのだが、このポケットができるまでに日清食品では実に45年もの歳月を要したのである。ここまで時間がかかった理由を推測してみるに、おそらく日清さんはたまごポケットがあれば便利なことぐらいは相当早くから気づいていたのだと思う。


しかし、実際に完成した麺の真ん中にそうしたくぼみを付けることで必要となるコストを考えると、これまでの技術力では採算ベースに乗らなかったのではないだろうか。ところが何らかの技術的なブレイクスルーが起こったため、くぼみを低コストでつけられるようになった。技術力バンザイである。


ここまでが5年前の話。が、そこからさらにチキンラーメンは進化したのだ。5年後にリニューアルされたチキンラーメンのポケットは、なんと「Wたまごポケット」となった。すなわち白身用のポケットをまわりにつけ、さらに黄身ポケットを麺のセンターに配したというわけだ。その結果、くぼみ自体も4ミリ深くなった。すばらしい!


これで

たまごの黄身が中央に収まるので、たまごがずれない、落ちない、さらに見た目もおいしそうなチキンラーメンがお楽しみいただけます(→ http://www.nissinfoods.co.jp/com/news/news_release.html?yr=2008&mn=4&nid=1309

ということになったわけだ。


このリニューアルなったチキンラーメンの発売は5月から。早く食べたいぞ、Newチキンラーメン。そしてわずか4ミリのくぼみにこだわり、カイゼンを続けてくれたチキンラーメン開発スタッフの方々はきっと「神は細部に宿る/ミース・ファン・デル・ローエ」という真理をご存知なのに違いない。いや、早く現物を見たいものだ。





昨日のI/O

In:
『勝間式利益の方程式/勝間和代
Out:
InsightNow原稿


メルマガ最新号よりのマーケティングヒント

音声認識技術の可能性」
http://blog.mag2.com/m/log/0000190025/
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□InsightNow最新エントリー
 「空手バカ一代じゃないけれど」
http://www.insightnow.jp/article/1258

昨日の稽古:

・懸垂、カーツトレーニン