オリンピックをPCで見る日


テレビのCMにご注目あれ


といってもテレビCM全体の話ではない。「テレビの」CMである。最近のテレビのCMを見ていて何かお気付きにならないだろうか。


オリンピックにちなんだCMを流しているメーカーが何社あるか。たったの一社だけである。それが、どこのメーカーかご存知だろうか。「オリンピックの感動を〜」といったCMを、唯一流しているのがパナソニックである。家電メーカーの中で北京オリンピックの公式スポンサーとなっているのは松下だけだから、当然と言えばそうなのだろう。


以前ならオリンピックは、テレビを拡販する最高のチャンスだった。4年に1度というサイクルは、テレビの買い替えサイクルにもぴったりと合っていたわけだ。


「どないでっしゃろ。そろそろオリンピックやし、テレビも新しい、したら。販促重点期間やから、勉強しときまっせ」みたいなセールストークが、各社系列の町の電気屋さんを通じて行なわれていた。その手のセールストークマニュアルに各種店頭販促物、さらにはお客さんを訪問する時のドアオープンツールを、何回か企画したことがある。


というぐらいの販促絶好タイミングだったオリンピックが目の前に迫ってきているのに、今のところ少なくとも「テレビの」CMが盛り上がっているようには思えない。推測だが、もしかしたらメーカー各社ともに、水面下で進む構造的変化を敏感に嗅ぎ取っているのではないだろうか。


今年のオリンピックはおそらく歴史上初めて、テレビではなくPCで見る人が、かなり出てくるものと推測している。すなわちYouTubeを筆頭とする動画配信サイト経由で見る人である。著作権問題を各サイトがどのように扱うかが読めないので、間違いなくとまで言い切ることはできない。ただ少なくとも自分自身に限るなら、サイトで見れるならその方が圧倒的に便利だと思う。


なぜなら、ものすごく初歩的なことだけれども、テレビでオリンピックを見ようと思えば選択肢は次の三つ。リアルタイムで見るか、録画中継を見るか、あるいはビデオやDVDなどに録画して見るかのいずれかになる。そのうちの放送を見るとなると「その時間」にテレビの前にいなければならない。果たして、そんな時間的なゆとりがあるかどうかといえば、おそらくない。


ならば録画して好きなときに見ればいいわけだが、それはそれで面倒である。まあ、録画そのものは何とかできたとして、録画をきっちり見ようと思えば、放送時間の分だけテレビの前にいなければならないことに変わりはない。イニシアティブはテレビサイド(ちょっと妙な表現だけれど)にある。


ところが、これがYouTubeで見るとなると、まずイニシアティブは完全にこちらのものである。加えて利便性がコペルニクス的転回を遂げることになる。


まず、いつ見るのかを決めるのはコンプリートリー・マイセルフ、すなわち自分だ。PCの前にいるときなら、いつでも好きなときに見れば良い。場所だって自宅PCに限られているわけじゃない。ノートパソコンを持っていれば、街中のアクセスポイントでみることができる。最近ではケータイでだってYouTubeを見ることができるのだ。となれば電車の中だって観戦可能である。


さらに。仮にオリンピックがYouTubeにアップされるとすれば、それはどんなシーンになるかを考えてみよう。恐らくは各競技の最もおいしいシーンを中心とした10分程度になるだろう。とっても便利である。もしかしたらそんなシーンだけを見るのでは、本当にそのスポーツを味わったことにならない。と、マニアの方から叱責されるかもしれない。それは確かにそうだと思う。


とはいえ、一つの競技を最初から最後まで(最低でも30分ぐらいはかかるだろう)じっと見ていることができるほど暇じゃない人が増えている。ましてや今の若い人たちは『ザッピング世代』である。


ええとこだけを見たい人が増えていることは間違いないだろう。そういう人たちが、たとえばサッカーをじっくり90分間、テレビの前でじっくり見るとは考えられない。そんな面倒なことをせずとも、サクッとYouTubeでポイントとなるシーンだけを抑えておけば、見るべきシーンだけは少なくとも見逃さなくて済むわけで、ちゃんと友達との会話にも付いていくことができるだろう。


ということで今回のオリンピックは、TVではなくPC観戦する人が出てくるんじゃないだろうか。それがどれぐらいのパーセンテージになるのかは、非常に興味深いポイントである。その数字によっては、こうした見方をする人がこれからどれぐらいの増え方をするのかが占えるはずだ。それがわかれば、テレビや広告の未来が少し読めるんじゃないだろうか。



昨日のI/O

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O社社長インタビュー
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