店の空気は人が作る


豚のしょうが焼き定食780円


ホワイティ梅田の奥の方(東の方ということです)にある洋食屋さん『開明軒』である。昼ごはんを食べに行って、久しぶりに「大確幸」を感じた。しょうが焼きが美味しかったことはもちろん、ごはんもきっちりと炊けていた。みそ汁もしっかりとダシの効いた味をしている。


全体的にいい味を出している。料理の味が確かなことももちろん、大確幸を感じた理由なのだが、それだけではない。この店は、中に入った瞬間に感じる空気感がなんとも良いのだ。


「いらっしゃいませぇ。お一人さん? カウンターでお願いしますね」と、これが最初のお迎えのことばである。語尾に添えられている「ね」が効いていると思いませんか。別に好みの容姿を備えた見目麗しき女性が発したから、というわけではない。実際には、店内の照明や明るい木目調のカウンターなどが基調となった色合いが、なんだかやさしげな感じを醸し出しているなとぼんやり思っていて、その女性の顔などまともに見てもいないのだから。


案内されたカウンターに座ってみて気がつくことがある。広いのである。カウンターの奥行が広い。これなら、もしたくさん料理を頼んだとしても、自分の前にゆったりと置くことができるだろう。また、隣の席とのスペースもかなり広めに取ってある。地下街に多い「とにかく効率重視、特に昼メシ時などは何回転できるかが勝負、だから少々狭い目のレイアウトで、食べたらすぐ出て行ってね」的配置の対極といっていいだろう。


私が店に入ったのが12時半ぐらいだった。おそらくは、その時間ぐらいが一つの潮目となっているのだろう。私に続いて何人かの客が入った後は、少し店内に余裕ができてきた。


すると、店内の状況に応じて「お一人さん、そちらの二人席にどうぞ」とか「お二人さん、こちらの四人用席をお使いください」といった案配で客の案内を巧みに変えている。相変わらず案内のことばは、傍で聞いている私にも心地よく響く類いのサウンドだ。


満席で30人ぐらい入るホールを女性二人でみている。この二人が実に良く気がつく。というか、いつもお客様の様子をさりげなく見ているのだろう、水が減ってくるとさっと注いでくれる。ごはんがなくなったお客様には「お代わりはいかがですか」と声をかけている(ごはんのお代わりは自由である)。


そして極めつけ。私が食べ終わったのを見計らったように、ツマヨウジを持ってきてくれた。これで最初、店に入った時に感じた小確幸は一気に大確幸に転じた。サービス批評記的なるブログを書いているぐらいなので、飲食店の振る舞いにはかなり気を配って見ている。おかげで店の人に直接言うことはないが、サービスに関してはかなりな文句言いと化している。しかし、未だかつて「ここ」というタイミングでツマヨウジを持ってきてくれた店は一軒もない。


これではっきりとわかったのだ、このお店の空気の良さが。よく見ていると、ここで働いてる人みんなが、このお店で働いていることに心地よさを感じていることがわかる。厨房の頭マッ金々のお兄ちゃんも、並んでフライパンを振っている女性も(この方はスラッとしていて、鼻筋もピッと通った美形であった)。


だからこそ無理に大きな声を出したり(無理矢理なでかい声で「いらっしゃいませ〜」と叫ぶことを従業員に強制する店もある)、妙な作り笑いをしたり(スマイル0円と言いながら、最近はスマイルらしいスマイルを見せてくれない店もある)はいっさいなし。


でもよい空気が流れていて、食事がおいしくて、食べ終わってお金を払ってお店を出た後で「よかったあ、おいしかったあ,幸せだったあ」
と思える。久しぶりに、感激ものの昼ご飯だった。


ただ一つだけ。みそ汁がカップに入っていたのには少し違和感があるが、そこはまあ洋食屋さんだからということで目をつぶろう。



昨日のI/O

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ポルタウォーキング・コラム
金沢T社インタビュー記事


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昨日の稽古: