せんとくん対まんとくん


5,440票


まんとくん」が集めた票数である。その結果、平城遷都1300年祭の民間キャラクターにまんとくんが選ばれた。パチパチ。


もともと平城遷都1300年祭には「せんとくん」という官製キャラクターがいる。が、このせんとくんが県民の間では物議を醸していたのだ。その理由は大きく二つ。


一つにはせんとくんの選考課程が県民にはまったく公開されなかったこと。県庁が大手広告代理店(こういうのを仕切るのはたいていD社だと思うけれど)に発注し、代理店が何人かのデザイナーにコンペをかけた。その中から選ばれたのがせんとくんである。


この間の発注から決定に至る過程は完全な非公開であり、そこに県民の意見はまったく反映されていない。税金を使っていながら、納税者の声を聞かないのはけしからんではないか、というわけだ。手続き論+いささかの感情論も入ってはいるが、筋の通った主張だと思う。


こうしたまっとうな反論に対して県庁サイドが、まともな議論を返すことなど当然できるわけもなく、できるのは「県民の皆さまのご理解を求める」という訳のわからないコメントを出すことだけである。


さらにせんとくんに対しては、奈良のお寺さんからもクレームがついた。せんとくんはどう見ても、仏さまを連想させるキャラクターである。にも関わらず頭から鹿の角が生えている。これは仏に対する冒涜ではないか、というわけだ。


確かにせんとくんは、小僧さん、お坊さん、仏さんなどを感じさせるデザインとなっている。逆に考えれば、このキャラクターを創りだしたデザイナーは、そのモチーフとして「奈良、奈良時代、お寺、仏教、鹿(の角)」などを頭に置いていたはずだ。


だから、お寺さんの指摘にある「仏さまを連想させるキャラクター」に見えるのは、当たり前である。その頭に角を生えさせたのは、奈良を意識するた故のこと。デザイナーに対して宗教的配慮が足りなかったといえば、確かにそうである。従って宗教論的な立場からの反論としては、これもまたまっとうな反論だと思う。


つまり「せんとくん」はその成立過程における手続き論からみても、また奈良という土地に特有の宗教論的な観点からみても、受け入れられがたいポジションに立たされていた、というわけだ。


ところが、ここで意外な追い風が吹いた。デザイナーら作る民間団体「クリエイターズ会議・大和」が、せんとくんに対するこうしたバッシングを受けて、自分たちでキャラクターを募集し、そこから市民が選んだキャラクターを立てようとしたのだ。なぜ、この活動が意図に反してせんとくんの追い風となったかを考えてみたい。


クリエイターズ会議・大和には619点のキャラクターデザイン案が寄せられた。それぞれに対してウェブと街頭で投票が行なわれ、投票総数5万4千票のうちトップとなったのが「まんとくん」というわけだ。


そして昨日、このまんとくんがお披露目されたのを見て、これまでせんとくんにいささかなりとも反感を覚えていた県民の方も、これならせんとくんの方がマシかもと思われたんじゃないだろうか。


もちろん、まんとくんだって悪くはないと思う。せんとくんに対してまんとくんというネーミングはどうよ、と思わないことはないけれども、キャラクターとしてかわいいことは間違いない。しかしである。あくまでも個人的な見方であるけれども、デザイン的にみればせんとくんまんとくんの完成度の違いは明らかだと思う。


勝手な推測かもしれないが、現状のまんとくんは、せんとくんの初期のラフデザインレベルの完成度だと思う。当たり前である。おカネのかかり方が違うのだから。


ここが不透明だとして県民からクレームが出たポイントでもあるのだが、せんとくんの選考課程では数百万円から一千万円を超える(どのあたりが本当なのかはよくわからない)経費が、県から代理店に支払われている。そこからデザイナーに対するコンペ参加フィーも出ているはずだ。


さらにはせんとくんは、最終選考を通ったわけである。つまり、デザイナーには賞金が支払われ、その見返りとしてせんとくんに対する徹底的なブラッシュアップがかけられたはずだ。


これに対してクリエイターズ会議・大和の方は、最高でも採用された作品1点に対して賞金が5万円(+賞金カンパ全額)である。おカネのかかり方が違うのだ。お金を出せば必ずしもよいデザインが上がるとは限らないが、お金をかければある程度のレベルにあるデザインをさらにブラッシュアップすることは確実にできる。


デザイン論的に見れば、まんとくんが出てきた時点でおそらくせんとくん陣営は、これなら負けることはありえないと思ったはずだ。だから「せんとくん」を真っ当な手続き論や宗教論の土俵ではなく、デザイン論の土俵に乗せてしまったまんとくんは、せんとくんの追い風となった。そう思う。




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