減価しない家


都圏6000戸、近畿圏2300戸


マンション在庫が膨らんでいる。そこでというわけでもないのだろうが、大手銀行が住宅ローンを引き上げた。金利上昇はこれまでなら、住宅購入を考えている人の背中を押す効果があったが、果たして今回はどうか。今のところ、どうも思惑通りにことが運びそうにはないようだ。

三菱地所は07年度当初、前年度実績の1.7倍にあたる4300戸の販売を計画していたが、結果はほぼ半分の約2300戸にとどまった。「売れる価格にまで何とか値下げしようと交渉したため、発売時期がずれ込んだ」(同社)という(日経産業新聞2008年6月3日付24面)


マンションのエントリーユーザーと期待される団塊ジュニア層の購買行動が変わってきているらしい。これがマンションの売れ行きに大きな影響を与えているという。以前なら年収の5倍がマンション購買価格の目安だったのに対して、今では3倍にまで下がっている。


ちなみに首都圏のマンションの発売価格は07年度で5136万円である(前掲紙)。約5100万円を3倍以内に収めるために必要な年収は1700万円。団塊ジュニアの方でここまでの高給取りはそうはいらっしゃらないだろう。マンションが売れなくなるのも、むべなるかなだ。


ポイントは、対年収比で考えるマンション価格の基準にある。以前なら5倍まで許せたものが、なぜ3倍に下がってしまったのか。背景としてはいろいろな要素が考えられるが、イチバンにはマンションは減価するものだという認識が定着したことが挙げられるのではないだろうか。


以前なら都心部にマンションを持つこと=資産を持つこと=いずれ値上がり益を期待できるかもしれない、といった連想が働いた。実際にそうやって利益を得た方も以前にはいた。しかし、今やそんな甘い期待を持つだけムダである。


なぜなら期待をぶち壊すような要因が、次から次へと出てきたからだ。何より大きいのは需要と供給のバランスだろう。少子高齢化、人口減が確定している日本ではこの先、ほぼ間違いなく住宅は余ってくる。つまり需要<供給となるのだから、いま買うマンションがこの先値上がりすることなどまずあり得ない。


さらに耐震偽装問題も潜在心理に影響を与えているのではないだろうか。もちろんきちんとしたデベロッパーが建てたマンションの多くは、耐震強度について何の問題もない「はず」である。が、完全に信用できるか、といえば、できないかもと考える人もいるはずだ。しかも、いつかはわからないけれども、いま30代の人なら生きている間に大きな地震が来る確率もちょっとはある。


需要供給バランスで考える以外にも、マンションはほぼ確実に減価することがわかってきた。それは、これまでに建てられた多くのマンションを見ていると明らかなこと。数年ごとに大規模な改修をしても、少なくともこれまでの日本のマンションはきっちりぼろくなっていく。外装はまだごまかせるのだ。しかし内部の構造部分や配管などがやられるとお手上げである。


その配管も鉄筋も材料メーカーがかなりいい加減なことをしている可能性が高い。やっぱり危ない。


まだある。今の30代ぐらいの方は経済に明るい方が増えている(と思う)。だからローンを組んで、劣化する資産に投資することのデメリットを理解されている方も多いはずだ。仮に4000万円のマンションをローンを組んで購入し、トータルで6000万円以上のお金をかけて、ローンを払い終わったときには資産価値ゼロ(に近い)マンションに投資するぐらいなら、お金はもっと賢く使いたいと考える人もいるだろう。


だから、マンションが売れないのはある意味当然なのだ。では、絶対にマンションはこれから先も売れないのだろうか。


決してそんなことはないと思う。理想は増価するマンション、最低でも減価しないマンションである。そんな切り口でアピールできる物件があれば、きっと売れる。そんなマンションがあるのか? ある。アイデアはいくつかある。キーワードは「異・移・医」の3つ。たぶん、今のマンションとはかなり違った形態になると思うけれど。



昨日のI/O

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シナジーマーケティング谷井社長インタビューメモ
長尾真氏取材原稿


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昨日の稽古:

・懸垂、カーツトレーニン