見立ての力
ひと言でいうと、どうなる?
あるいは、自分の考えはどんな図で表わせるか。
仕事の本質を理解しているかどうかは、こんなことでチェックできます。事象の本質をつかむデッサン力は絵の世界にとどまらず、ビジネスの世界でも役立つのです(by佐藤可士和/日経産業新聞2008年6月10日付23面)。
やっぱり。方程式ではなく、面積図なのだ(→ http://d.hatena.ne.jp/atutake/20080609/1212991256)。方程式では解を得ることはできても、問題の本質を理解しづらいのかもしれない。一方で、問題をきちんと図示できれば、それはほとんど解けたということになるはず。図を描いてみることは、ことほど左様に重要なのだろう。
さらに佐藤氏は「見立て」の力を強調している。
なぜ見立てが重要かというと、「〜みたい」と言い換えたところが、その本質をつかんでいることが多いからです。そして分かりやすい。僕もアートディレクターという職業を説明するときに、患者の問診をして治療方法を探す医者や、素材から料理を作る料理人に例えます(前掲紙)。
おお、そうか。では、私が自称しているコミュニケーションアーキテクトなる仕事を人に説明するなら、これを何に見立てれば良いか。考えることしばし。まず翻訳者という説明を思いつく。たとえば、自社の製品の良さをクライアントに説明したい時に活躍する翻訳者である。
つまり自社の製品の良さを、自社の立場からいくら思い入れたっぷりに語ったとしても、その言葉はクライアントにとってはまったくの外国語として響き、ゆえに理解されないことが多い。クライアントにはクライアントの立場があり、求めているところがある。自社のポジションとクライアントのそれはほぼ間違いなく異なっている。だから自社製品のメリットを、クライアントにわかりやすい言葉に翻訳する人が必要となるわけだ。
ということは、たとえばBtoCの世界ではほとんど常識である(だからといって、すべてのBtoC企業がきちんとできているわけでもない。むしろ独りよがりな広告に莫大なお金をかけて、下手打ってるなあと思う会社さんもある)。
ところがBtoBの世界では、まだまだ理解されていない。メーカー志向の罠に落ちてしまい、技術的にこんなに(自社視点で)優れた製品なんだからわかってくれない方がおかしいなどと言い出されることもある。だから、本当ならすばらしい製品なのに、その価値を理解されずに埋もれさせてしまうことがある。実にもったいないことだ。
そういう意味では、コミュニケーションアーキテクトとは「お見合いをお世話するのが好きな近所のおばちゃん」みたいなところもあるかもしれない。つまり、ある企業から何かの製品についての説明を受ける。これはお見合いにたとえるなら釣書を受けとるようなものだ。そして受けとった釣書を、誰に、どんな言葉を添えて渡せば、見合いまでこぎ着けられるかを考える。そんな役割である。こういうときには、お一人様ネットワークが役に立つ(→ http://www.insightnow.jp/)
はたまた、お寺の和尚さんみたいなところもあるんじゃないだろうか。つまり和尚さんが語るのは、仏さまの言葉を皆の衆にもわかり易く伝わるよう噛み砕いた説明である。そのシチュエーションを会社に置き換えるなら、社長や経営トップ陣の考えていることを、普通の社員の腹に落ちる言葉に置き換えてあげる仕事である。
おお〜、なるほど。
絵に描くとすれば、入口と出口が一つずつ(というとちょっと能力に劣るようなイメージがありそうで気に入らないが、まあわかりやすさを優先するから良しとしよう)あるブラックボックスみたいなものだ。ただしボックスとは言っても、決して角張った箱をイメージしないでいただきたい。どちらかといえば不定形、風船を膨らましたような変幻自在な素材からできているとイメージしてほしい。
そして誰かが発した言葉を、箱の中でごにょごにょやって、伝えたい相手にわかりやすい言葉として出す。
こう書くと企業からクライアントへという一方向的なイメージがあるけれども、もちろんそれだけじゃない。逆の場合もある。つまりお客さんが「ここがちょっと不満なんだよなあ」と思っていることを、企業に伝わるように加工してあげるのも大切な役割だ。企業さんにとっては、むしろこうしたユーザーの本音をお伝えする役目の方が役に立つと思う。
というような仕事をしているわけですね、私は。
というような仕事をできるので、
というような仕事があれば、ぜひ。
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昨日の稽古:
・腹筋