メガロスの強み


大手5社の中で唯一、会員が増加


フィットネス業界5位のメガロスである。大手4社とは前回のエントリーで取り上げたコナミスポーツを筆頭に、セントラル、ルネサンスティップネスのこと。メガロスは5社の中では最後発だが、着実に伸びてきた。バックには筆頭株主でもある野村不動産が控えている。


このあたりの出自の違いが、フィットネス業界全体がシュリンク傾向にある中で、他社とは違い成長を遂げている要因だろう。では野村不動産がバックについていることで、同業とはどんな違いがあるのか。純粋な意味でのビジネスモデルに違いがあるのだと思う。


もちろん表面的には、やっていることはまったく同じだ。箱ものを作って、その場所を利用する会員を集め、会費収入を得る。しかし、おそらくは提供しようとしている価値が、他社とは異なっているのではないだろうか。すなわちフィットネス=運動→健康といった考え方が、この業界では一般的であり、その場合の提供価値は運動→健康である。この価値に対して、会費という対価を受けとる。これが従来型のフィットネスビジネスモデルだ。


ところが、どうもメガロスが提供しようとしている価値は、従来型フィットネスとは違うように思える。ホームページに掲載されている社長のあいさつでは『How young are you?』なるキャッチフレーズが合言葉として記されており、「メガロスはいつも貴方のおそばで、『第2の我が家」としてお役に立ちたいと願っております」と書かれている。このあたり、野村不動産の色が出ていると読むのはうがち過ぎだろうか。


ともかく、この「第2の我が家」という発想は、確実に他のフィットネスクラブと一線を画している。メガロスが提供しようと考えているのは、何よりもまずは心地よく過ごせる場なのだろう。だからこそ、後発の強みを活かしてスタジオやジムを、可能な限りゆったりとしたスペースに作り上げてきた。機器を詰め込めば効率性は高まるが、狭苦しさが圧迫感をもたらす。従来のフィットネスクラブでは、ともすればこうした効率性重視で空間作りが行なわれてきたのに対して、メガロスは明らかに異なるコンセプトで空間作りを行なっている。


さらに、ここ最近同社が力を入れているのが高齢者対応である。団塊世代の大量リタイアを控えて当然、各社一様に「次は高齢者を狙え」が合言葉となっていた。お金も時間もある高齢者こそは、フィットネス業界にとって最後の金鉱だ。特に昼間の空いている時間帯の利用客として、これほどありがたいものはない。


だから、どこもかしこも高齢者を狙っている。ところが高齢者を狙ったようでいて、では広告宣伝も高齢者向けになっていたかというと、そうではない。イメージ戦略としては、やはり若々しさであり、美しさを打ち出さなければならない(という考え方から抜け出すことができない)。だからたとえば駅や電車内で見かけるポスターなどに使われるビジュアルは、決まって若い女性である。


関西にはメガロスがないゆえ、そのポスターなどを見かけたことはない。だから、そのビジュアルイメージがどのようなものかは知らない。しかし、メガロスでは「百歳まで健康で生きる」ことをテーマにした高齢者層専用メニューが用意されているという。もとより、こうしたメニューは他社にもあるかも知れない。しかし、おそらくメガロスとはニュアンスの異なる内容になっているはずだ。


なぜ、そう思うのか。くどいようだが出自の違いが決定的だと思うからだ。以前、関わっていたフィットネスクラブでは、スタッフはもとより店長も、本店の企画におられる方々も、皆さん揃って運動系の出身者ばかりだった。他社のスタッフ構成について詳細を調べたことはないが、当のフィットネスクラブの方の話では「同業の集まりなどで話をすると、やっぱりみんな似てますよ。だから話が合いますね。みんな、運動するのが大好きな人たちだから、さっぱりしているし」みたいな感じだった。


だから、である。お客様に対しても、基本的にこの人たちは「お客様も体を動かすの大好きで、楽しいから、フィットネスクラブにやってくるのだ」と考えてしまう。もちろん、そう考えることが一概に悪いわけではない。そもそもフィットネスをやろうと思い立って行動する人たちの大半は、そうした運動大好き派だろう。


しかし、高齢者は違う。彼らが求めているのは、まず何よりもホスピタリティなのだ。クラブに求めているのは、健康作りもだが、友だちやおもてなしや、快適さである。中にはお風呂に入りにくるだけの方もいらっしゃる。そんな方達が、自分たちをもてなしてくれる相手として好ましく思うのは、運動大好きなスタッフか、それともたとえばホテルのコンシェルジュのようなスタッフか、どちらだろうか。


といったところを、うまく突いたがゆえの会員増なのではないだろうか。「骨粗しょう症対策」とか「寝たきりを予防する筋力トレーニング」などのセミナーを実施しているフィットネスクラブが、メガロス以外にあるかどうか。コンビニフィットネスとは明らかに違う路線で勝負しているメガロスは、この先も伸びていくのではないだろうか。




昨日のI/O

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コンサルティング営業/ディック・コナー、ジェフ・ダビッドソン』
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アシックス三村氏インタビューメモ
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昨日の稽古:

・自転車こぎ