iPhoneでAppleが狙うもの


発売開始後、わずか3日間で100万台


7月11日、世界21カ国でiPhone3Gが一斉発売された。その販売台数がとんでもないペースになっているようだ。日本でも先行発売されるソフトバンクの表参道店前には行列ができ、その様子がニュースで取り上げられていた。昨日、一昨日あたりはいろんなニュースでとりあえず一回はiPhoneが話題となったんじゃないだろうか。


IT系のニュースやブログでもiPhone関連のエントリーが多く上がっている。反応は賛否両論といったところだろうか。当初からワンセグ機能がないとか、おサイフケータイではないことはわかっていたから、それは措くとして。意外に評判が悪いのがキーボードの使い勝手だったり、ソフトバンクのショップ対応だったりする。


といった問題も、マカーとしてはまあ何となく予想通りである。いわゆるマカーには2タイプが存在する。いずれもMacを心から愛することに変わりはないが、新製品が出た時の反応が異なるのだ。すなわちMacの新製品には初期不良があることは重々承知の上で、それでも買ってしまうややアディクトな方々と、とりあえず初期不良が収まるのを待ってからおもむろに買う実用派の方々である。


モノがMacファン以外はあまり関心をもたないようなアイテムなら、それで何も問題はなかったのだ。マカーの間で「今度の●●、このあたりが弱いという話だったけれど、やっぱりその通りだった・・・」みたいな話が流通するだけだから。


ところがiPhoneの場合は、マカー以外の方も数多く初期不良を抱えている新製品に飛びついた。しかも既存のケータイユーザーとしての視点でiPhoneを捉えておられる方も多い。そこで「iPhoneって騒ぎはすごいけれど、意外に使えないんじゃね」みたいな意見が出てきているのだろう。


しかし、である。少し冷静に状況を引いたところがみたときに、何が浮かび上がってくるだろうか。AppleiPhoneによって、通信サービスの世界で一大覇権を握ろうとしているとも読める。それぐらい激烈な変化が水面下で起こりつつある。


変化の一つは、iPhoneの「ための」サービスが続々と登場していること。たとえばリクルート

パソコン向けのグルメ情報「ホットペッパー.jp」と連動した専用サイトを開設する。サイト閲覧時に営業している店舗を自動的に絞り込んで表示する機能や、専用の電子クーポンなどを追加したのが特徴だ。
ヤフーも専用ポータルサイトを開設。タッチパネル操作が前提の画面で、指でページをめくる感覚で約四十種類のサービスを無料で楽しめる(日経産業新聞2008年7月11日付け2面)。


ソフトバンクはもちろんドコモでも(あるいはauでも)何らかの特定のケータイ機種が新発売されるのに合わせて、新しいサービスがいろいろな企業から次から次へと用意された、なんて話はこれまで聞いたことがない。iPhoneだから、新しいサービスが提供される。これは裏を返せばサービス提供事業者は、iPhoneのための新しいサービスがビジネスになり得ると考えている証拠だろう。各社ともに、いずれiPhoneユーザーがそれなりのボリュームをもつ可能性があると踏んでいるのだ。


そしてもう一点。iPhoneiPod touchと同じく無線LANでのネット接続が可能だ。これが一体、何を意味するのか。無線LANにつながるスポットで使うのなら、iPhoneソフトバンクの通信網を使わずにネット接続できるということではないのか。これってもしかしたら、とんでもないポジションチェンジである。


仮にドコモのケータイを使って、ドコモの通信網を使わずにネット接続できるなんてことがあり得るだろうか。そんなことが実現すれば、Gmailならメールのやり取りさえもキャリアの通信網を使わずに可能だ。確かに通話は無理だけれど、と書いて、違うかもしれないと思い直した。ネットにつながりさえすればスカイプが使えるではないか。現時点でiPhone対応のスカイプがあるのかどうかは知らない。仮にないとしても、今後間違いなく出てくるだろう。


すると、今回のiPhone登場が違った見え方をしてくる。AppleはとにかくiPhoneを少しでも安く売り、日本をはじめとする各国内で多くのシェアを取りたいと考えた。では、安く売るためにはどうすればいいのか。通信キャリアと組んで、本来の価格との差額を負担させればよい。これならAppleは自腹を切ることなく、iPhoneを安くすなわち多くの人に届けることができる。


その上でAppleはさらにどうやって稼ごうと考えているのか。サービスである。そのためにわざわざiPhone向けのソフト開発キットを、全世界で数十万人といわれる開発者にバラ撒いたのだ。狙いはぴたりと当たり、世界中の開発者が先を競ってサービス開発に励んでいる。そのためにAppleが支払うコストはゼロである。開発されたソフトはapp storeで販売される。つまりAppleには手数料が入る。


しかもiPhoneを通信キャリアのネットワークに頼らなくても使えるようにする無線LANはいま、猛烈な勢いで整備が進んでいる。そうしたインフラで使えるiPhoneが爆発的に売れている。世界21カ国で同時に。発売後わずか3日間で、新たに100万人のユーザーを獲得するペースで。


恐るべし、Apple




昨日のI/O

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『「力強い」地方づくりのためのあえて「力弱い」戦略論/樋渡啓祐』
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大和学園副校長・安田和彦氏インタビュー記事


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昨日の稽古:

・懸垂、拳立て、腹筋