究極のロングテール


CD1枚¥14,980


キャンディーズのデビューシングル『あなたに夢中』のCDバージョンについたお値段である。もちろん中古品である。ちなみにデビューシングルが入っているアルバム『あなたに夢中』なら、モーラでダウンロードできる。これなら全12曲でも1050円である(とはいえ、またもMacには対応しとらんようだけれど)。


あるいは太田裕美のデビューシングル『雨だれ』は楽天で1500円で買える。とまあ、なぜデビューシングルにこだわるかといえば、どっちも持っているからだ。キャンディーズのシングルはたぶん中1の時、テレビで見てすぐにレコード屋さん(といっても知らない人の方が多いのだろうな)に買いに走った。スーちゃん、めっさカワイと思った。


太田裕美は中3のときか。やっぱりテレビで見て、すぐに……。そんな他愛もないことを自慢したいのではなくて、こうしたいわゆるレアものがこれからは、決してレアものではなくなるのではないか、というお話である。


なぜならコロムビアミュージックエンタテイメントが11月から、CDの受注生産サービスを始めるからだ。このサービスではCDの注文を1枚から受け付けてくれる。とりあえずは在庫切れや廃盤となったアルバムCDを中心に500タイトルの注文を受け付けるようだ。将来的にはタイトル数を1500に増やす予定であり、さらには他のレコード会社の過去の作品の受託生産も引き受ける構想もある。


ブラボー!

CD生産に必要な音楽データやジャケットの印刷データは、同社のデータセンターからネットワーク経由で物流拠点に配信する。納期は最大で2〜3日。販売金額は通常のCDと同じに設定する(日経産業新聞2008年8月13日付2面)


これぞデジタルデータの恩恵をフルに活用して、究極のオンデマンドであり、One to Oneであり、ロングテールではないか。このサービスが実にすばらしいのは、次の3点。


まず通常のCDを同じ価格であること。これが画期的である。なぜ、そんなことができるかといえば、工場でプレスして作る通常のCD生産ではなく、CD−Rに直接データを書き込んで生産するから。しかもデジタル印刷を活用すれば、ジャケットも商業印刷なみの品質を出すことができるという。


次がたったの1枚からでも注文を受け付けてくれること。ネットを使えばギャザリングという手法もあるが、このサービスはそんな面倒も不要である。「ほら、あの、昔よく聴いたあれ。あの曲を、どうしてももう一度聞きたいねん」というリクエストに速攻で答えてくれる。ということは、たとえば結婚記念日に二人の想い出の曲を奥様にプレゼント、なんて粋な演出もできちゃうわけだ。


そして、これがわずかに最高でも3日の納期でできてしまうこと。何ともすばらしいと思いませんか。


CD−Rにデータを書き込むとはいえ、音質や耐用年数は普通のCDを変わらないという。これはちょっと大げさかもしれないが革命的なサービスだと思う。と同時にもしかしたら中古レコード/CDショップにとっては、致命的な競合となる可能性もある。当面は注文を受け付けるタイトル数があまりにも限られているので、直ちに人気が爆発することはないだろうけれど。


しかし、これは明らかにユーザーにとって極めて価値の高いサービスである。こんなサービスがあるなら、作ってほしいCDはいっぱいあるぞという方が、世の中にはたくさんいらっしゃるだろう。私だってあの懐かしい『Circle Game』を何とかしてもう一度、オリジナル(かな?)で聞きたいと願うことしきりなのだ。


もちろん、わざわざCDというモノとして持たなくても、音楽なんてデータで持っていればいいじゃないかという考え方もある。それはそれでよくわかる。しかし、たぶん本というモノがなくならないのと同じで、CDというモノもなくならないのではないだろうか。モノの持つ確かな手触りみたいなものを、好むというか求める人は確実にいると思う。


とりあえず盆に実家に帰ったら『あなたに夢中/キャンディーズ』と『雨だれ/太田裕美』を探してこようっと。でも、それをどうやって聴いたらええんやろ。





昨日のI/O

In:
『頭がよくなり立体思考法/香山リカ
Out:
樋渡・武雄市長インタビューメモ


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昨日の稽古:

・レッシュ式腹筋
拳立て