ことばの力


世界でただ一人、自分を客観的に見ることができる男


といえばゴルゴ13しかいない。そう信じていたのだが、実は世界にはもう一人、自分を客観視できる人がいたらしい。福田前(というのは、まだ気が早いのだろうが)首相である。


昨夜の辞任会見で、最後に毎日新聞の記者が質問を投げかけた。会見が人ごとのように見えるが、どう思うかという問いかけに対して、少し気色ばんだ様子で答えられたのが次のセリフ。


「私は自分自身を客観的に見ることができるんですよ。あなたとは違って」


これ、もしかしたら今年の流行語の一つになるかもしれない。マンガと比べては失礼に当たるかもしれないが、福田さんは確かにこういった。首相の最後の言葉は結構印象深かったようで、件の質問をした記者が所属する毎日新聞には当然、掲載されている。日経でも社会面では大きく取り上げられている。


あのひと言を聞いた時、正直、この人は本当はあまり賢くいねんなと思った。逆説的な物言いになるけれども「自分のことを客観的に見ることができる」人が、辞任会見の最後で「私は自分自身を客観的に見ることができるんですよ。あなたたちと違って」などといえば、一般的にどう思われるかということに考えが至らないはずがないではないか。


つまり本当に「自分のことを客観的に見ることができて」、そのことを広く伝えたいのであれば、もう少しTPOをわきまえたことばを選んで然るべきだと思うのだ。もしかしたら、そこまでを「客観的に」計算した上であえて言ったのだとすれば、客観的には「私は客観的に物事を判断できない人間なんですよ」ということを伝えたかったのだ、と深読みできないこともないわけだけれど。


人を動かすのは、ことばである。


首相の職務とは、ことばによって、その国(まわりにいる政治家、官僚そして国民すべて)を動かしていくこと、これに尽きる。であるとすれば、とても残念なことだけれども、現首相も前首相もその力を持っていなかったということなのだろう。そして考え方に完全に同意することはできなかったが、小泉さんは言葉の力を持っていた人なんだと思う。


ここで少し海外の指導者を見てみるとどうだろうか。


たとえば中国の胡主席はどうか。伝わってくるニュースは、情報操作されたものでしかないだろうから、主席の本当のことばがどんなものなのかは知る由もない。しかし、たとえば安倍さん、福田さんとは決定的な違いが二つある。


それは胡主席は、日本の13倍ぐらいの人口の中のトップであることと、二世ではないことだ。単純に競争率で考えてみれば、胡主席はおそらく13億人との競争を勝ち抜いて中国の指導者にまで登り詰めた。


これに対して二世議員としてスタートした安倍氏や福田氏は、競争が始まった時点ですでに相当なアドバンテージを得ていたはずだ。とすれば、その競争は(もちろん、私には想像もできないぐらい過酷なものだろうけれど)胡主席が乗り越えてきた試練よりも緩かった可能性は高い。逆に胡主席は数々の難局を自らのことばで乗り切ってきたのではないだろうか。


あるいは、つい先日までやはり熾烈な選挙を戦っていたヒラリーさんとオバマさんと比べてどうか。こちらは幸いなことにYouTubeで探せば、いくらでも演説を見ることができる。ざっと生の声を聞いた限りでは(細部までを正確に聴き取れたわけではないけど)、その演説は力に満ちている。


福田さんの昨日の会見の最初のか弱く震えるような声とは、大違いである。いかにも日本人的な方なのだなと思う。小泉さんの下で仕えていらっしゃったときには、才気のある人だと評価もさせていただいたいのだ。しかし結局は国の長として、そのことばに力が足りなかったということなのだろう。


次の首相には、ぜひ強い言葉の力を持つ方になっていただきたいと心から願う。そうじゃないと、これだけ資源争い、食料争いが厳しい状況になってきている中で、世界の指導者たちとまともに渡り合うこともできないようでは、資源貧国日本の将来は真っ暗である。


この際だから、たとえばブレアさんを呼んできて帰化してもらって首相になってもらうとか、あるいはクリントンさんでもいいのではないか。強さでいえばプーチンさんなんかも(トラとやりあって勝ったらしいし)よいのでは、と思ったりするのだけれど。


日本人限定で、という枠をどうしても外すことができないのなら、本当に思いきって小池さんとか野田さんを担ぎ上げてしまえばどうなんだろう。選挙に勝つには、それぐらい思いきった手を打つしかないんじゃないだろうか。


昨日のI/O

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昨日の稽古:富雄中学校武道場

<少年部>
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<一般部>
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