CM乱発のカラクリ


前年対比16%減


危機的な落ち込み状況となっているのがパチンコ市場である。

社会経済生産性本部がまとめた「レジャー白書2008」によると、2007年の余暇関連市場は74兆5370億円で、前年比5.8%減だった。規制強化があったパチンコ市場の落ち込みが主因で、同本部はパチンコをのぞく市場規模はほぼ横ばいと分析している(日経MJ新聞2008年8月4日付4面)。


パチンコ業界が非常に厳しい状況に追い込まれるという話は、一昨年からすでに出ていた。その頃にはパチスロに対する大幅な規制強化が決まっていたからだ。当時、顧問として関わっていた広告代理店さんでも、地元のパチンコチェーン店が大口顧客の一社であり、その対応策をいろいろ考えていたのだ。


そもそもパチスロに対して、なぜ規制が強化されたのかといえば、いわゆる爆裂機によるパチンコ中毒問題が起こっていたから。一説によれば、一回大当たりが出れば何十万円にもなるような機種があったという。そりゃ、中毒にもなるでしょう。そんな一攫千金を夢見てはパチスロに耽る人の中には、当然爆裂的に負ける人も出てくる。社会問題となる。規制が強化されるという、ごく自然な流れによって業界は締め付けを受けることになった。


ところで、最近テレビを見ていて何か気づくことはないだろうか? 私はそんなに長い時間テレビを見ているわけではないから、もしかしたら間違っているかもしれないのだけれど、やたらとパチンコのコマーシャルが多いと思う。それも、一体これは何のCMなんだ、と思ったらパチンコだったというケースが多い。これが非常に不思議でならない。


パチンコ屋さんが「当店は、こんなにサービスが良いですよ。出玉もばっちりですよ。お越しくださいね」とアピールするなら、百歩譲ってまだわからないこともない。実際にテレビCMは流さないけれども、チラシならよく入っている。もちろん費用対効果を考えれば、高いコストをかけてテレビでコマーシャルを流す意味はほとんどないと思うけれど。


ところが、いまテレビで流れているのはパチンコ屋さんのCMではない。パチンコメーカーの新商品(新機種と言った方が正確な表現なのだろう)のCMである。これは、一体、誰に対して、どんな狙いを持って出稿されているのか。そこが、不思議でならなかった。


もちろん日本にはそれなりのボリュームのあるパチンコファンがいる。その人たちに対して、新機種が出ましたよとアピールすることが、まったくのムダだとは思わない。しかし、費用対効果が合うのかどうか。出稿量はかなり多く、ゴールデンタイムにもそこそこ流れている。制作費だって、タレントやヨン様を使ったりしてそれなりにかかっていそうだ。コストパフォーマンスが合うとは思えない。


そもそもコアなパチンコファンが、そんなイメージCMに釣られるものだろうか。ファンにとってのパチンコの価値とは、基本的に一攫千金、これしかないではないか(違うのかしらん)。新しい、いろんな機能を実装されたパチンコ機が出たからと言って、それに飛びつくだろうか。もしかしたら飛びつくのだろうか。


とはいえ、仮に「あの新型機、すごぉ〜い。あれで遊んでみたい」と思ったマニアがいたとしても、テレビCMを見ただけではどこのパチンコ屋に行けば、その台があるのかがわからないではないか。というぐらいにわけのわからないCMだったのだが、業界と少し関わりのある人から内情を聞いて、そのカラクリがわかった。


あのCM攻撃は実は、パチンコ屋さんに対するプレッシャーだというのだ。つまり、こういうことである。パチスロに対する強烈な規制のおかげで、パチンコ店の集客はがたがたになった。経営状態が悪化している店が増えている。そうなると、店の方ではおいそれとは新台入れ替えに踏み切るわけにはいかない。何しろ最新鋭のパチンコ台は高いのである。


パチンコメーカーにとっては、パチンコ台がはけないことは致命的である。そこでCM作戦に打って出た。メーカーとしてはどんどん新機種を出していることを広くエンドユーザーに直接アピールする。これがパチンコ屋さんにどんな影響を与えるか。


それでなくとも熾烈な生き残り競争に置かれている店としては、何としても今来ているお客さんをつなぎとめたい。そのためにアピールできる手段は何か。一つには、とにかくよその店にはない新台を揃えることがある。これが差別化その一である。必死なお店ほど、経営的に少々無理をしてでも新台に飛びついてくれるだろう。


もう一つ、差別化につながる販促策がある。あるのだけれど、こちらはちょっとイリーガルだから、公表することは差し控えておく。この先はあくまでも勝手な推測だけれど、新台をがんばって導入してくれているお店に対しては、メーカーサイドでも特別な支援をやっているのかもしれない。


いずれにしてもパチンコのCM出稿の裏には、なかなか複雑な事情が絡んでいるようだ。



昨日のI/O

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昨日の稽古:

懸垂・レッシュ式腹筋