顔面組み手


十発めまでは数えていた


昨夜、昇段審査を受けさせていただいた。わが空研塾では昇段審査は五人組み手となる。基本的に三人めまではいわゆるフルコンタクトルールでの組み手、残りの二人が顔面ありルールになる。正確を期すならば次のような規定がある。
一人目は、つかみ・引っかけなし
二人目は、つかみ・引っかけあり
三人目は、つかみ・引っかけ・タックル・投げあり
四人目は、スーパーセーフをつけての顔面あり/つかみ・引っかけなし
五人目は、顔面あり・つかみ・引っかけ・タックル・投げあり


ただ、私はたぶん最高齢者ということもあり、若干ルールを変更してくださった。時間も短くしていただいた。とはいえ顔面ありでの二人組み手は変わらない。そこで最後に相手をしてくださったのが、A先輩。この四ヶ月ほどずっと顔面スパーリングの稽古をつけていただいた方だ。


「始め」の声のあと、最初にもらったのははたぶん左ストレートだったはずだ。これはまともに入った。何しろこちらの身体はまったく反応していない。そもそも手で受けられるレベルの速さじゃない。頭が真っ白になった。これではまずいと、一体何発殴られるのかを数えることで、意識をちゃんと保とうと思ったのだけれど、途中で吹っ飛んだ。


四人めまでの審査のことはだいたい覚えている。けれども、五人めでは何が起こったのか、ほとんどまったくわからない。距離を考えて、殴られる前に左右に動くこと、相手が簡単に間合いを詰めて来れないように前蹴りを出すこと、最後はせめて手で顔面カバーすること。これまでに教えてもらったことが何一つ出せなかった。


終わった後に塾長からは「とりあえず倒れなかったから」と声をかけていただいた。しかし、それは正確には倒れなかったのではなくて、倒れるような技をもらわなかったからだと思う。より正しくは、そんな技を先輩が出さなかったというべきだ。


自分が覚えている限りでは、A先輩が出されたのは顔面へのストレートだけだった。もし、ストレートにアッパーやフックを混ぜられていたら、あるいは顔面だけに意識がいっている中でボディを叩かれていたら。そしてそもそも蹴りをほとんど出してこられなかったが、上段を蹴ってこられていたら。


たぶん立っていられなかったはずだ。


情けない話だけれどそれぐらい手加減してもらったということだろう。そして真剣な顔面ありというのは、これほどまでに次元の違う組み手になるということ。普段の稽古とはまったく次元が違う。そのことがはっきりとわかった。武術として、身を守るための稽古をするなら、いつも顔面を意識していないと駄目ということも身を以て痛感した。


黒帯の審査を受けさせてもらうことが決まってから、ずっと顔面を意識した稽古をしてきたつもりでも、この体たらくである。逆にいえば、それぐらい顔面ありとなしでは身の守り方も違ってくるということだろう。そして現実に身を守らなければならないような状況に陥ったときに相手に対して「じゃあ、顔面は反則ということで」などと悠長なことを言っていられるわけもない。顔面が決定的に大切なのだ。


とはいえ顔面ありの稽古はとても難しく、厳しい。この四ヶ月間ほどは土曜日の稽古が少しだけ憂鬱になることもあった。もちろん相手をしてくださる先輩は、きわめてこちらのことを気遣ってくださる。だから顔面をまともに殴られることはなかった。それでも軽いパンチは何度か当たる。そのたびにコンタクトレンズが飛んでいったり、首を少し痛めたりする。


首相撲の稽古もつけてもらった。これでいかに自分の首が弱いかを自覚し、だから少しずつ首を鍛えもした。ライトスパーで徐々に目慣らしをし、少し首を鍛えたおかげで、いきなり顔面を殴られても少しだけ耐えることができたのだと思う。これは自分にとってはかなりなストレッチだったけれど、おかげで少しまた何かを学ぶことができた。


このような審査を受ける機会を作っていただいた塾長、中西さん、尚さん、本当にありがとうございました。ずっと稽古をつけていただいた愛甲先輩、本当にありがとうございました。稽古の成果は何も出せなかったけれども、愛甲先輩に導いてもらったことでこれからの自分にとってきわめて貴重な経験を積むことができました。ありがとうございます。


そして稽古でいつも相手をしてくださる道場の先輩、皆さん、昨日の審査で相手をしたくださった方々、本当にありがとうございました。


昨日のI/O

In:
Out:

メルマガ最新号よりのマーケティングヒント

「人材はスカウトするもの」
http://blog.mag2.com/m/log/0000190025/
よろしければ、こちらも。
□InsightNow最新エントリー
「最終兵器Googleストリートビュー
http://www.insightnow.jp/article/2050


昨日の稽古:

昇段審査