シュフー!と未来のチラシ
月間ページビュー5000万!
凸版印刷が運営する電子チラシ検索サイト『Shufoo!(シュフー!』である。名は体を現すという格言通り『シュフー!』は、主婦にターゲットを絞り込んだサイトである。
『シュフー!』はこれまでにもこのブログで何回か取り上げたことがある。いずれ紙のチラシ、特にスーパーの売り出しチラシは『シュフー!』に切り替わっていくとみていたが、そのスピードに加速が付いているようだ。
2008年4月現在で約300社、一万店が利用し、ここ二年で導入店舗は約5倍に増えた。サイト訪問者は月間5000万ページビューに達する。ポータルサイト大手のヤフーとの連携やテレビ向けのネットサービス「アクトビラ」向けへの提供開始など、配信先の拡大で媒体価値を高め、広告収入の獲得増を狙う(日経産業新聞2008年9月10日付2面)。
前回紹介した時点では、まだ100社4000店舗1000万ページビューだった。これが約2年前の話だから、この間の伸び率はページビューだけを取ってみても5倍になる。なぜ、ここまで伸びたのか。状況がどう変わったのか、これはとても興味深いテーマだ。
いずれ伸びることが目に見えていたサービスであることは間違いない。何しろ紙のチラシに比べれば、ユーザーの利便性は圧倒的に高いのだ。電子チラシなら見たい部分を拡大してみることができたり、安売り情報を検索して探したりできるのだ。とても便利である。2年前のエントリーでは、ケータイ回線の高速化&パケット定額制への移行が普及の起爆剤になると書いたが、そうしたインフラも今や完全に整備されている。
もちろん、この間に凸版印刷もさまざまな試行錯誤を重ねているはずだ。その結果、表に見えている要因としては次のサービスが大きく効いているはずだ。
シュフーは主婦の行動パターンに目をつけた。チラシで値段の安い食材を探して、メニューを考えるのだ。そこで辻調理師専門学校と組んで、約2500のレシピを掲載することにした。
例えば、サイト内で「ナス」が安いと表示された場合、「ナス」に関連するメニューを紹介する。料理に必要な食材を表示し、買い物で必要な食材を忘れないよう携帯電話に転送できるようにした(前掲紙)。
ポイントはここ、ケータイと連動するサービスを実装したことによってユーザー(=主婦)の利便性が飛躍的に高まった。
このサービスが実現するユーザーメリットを簡単にまとめれば
1.安い食材をシュフー!で簡単にチェックできる
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2.その食材を使ったレシピも一緒にゲットできる&必要な食材をいちいちメモせずともワンタッチでケータイに送ることができる
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3.メニューに必要な食材を店でケータイを見ながら買える(=買い忘れがない)
主婦にとって、もっとも面倒なメニューを考える作業が、シュフーを使えばショートカットできるわけだ。このサービスが忙しい主婦、少しでも食費を倹約したい主婦、それでいて家族にはおいしい食事を食べさせてあげたい主婦から大歓迎されたことは明らかだろう。しかもケータイの絡ませ方も実にうまい。
ただいくらシュフー!が便利だからといって今すぐに紙のチラシがなくなることはないだろう。まだまだパソコンもケータイも使いこなせない主婦は多く、彼女たちを切り捨てるわけにはいかない。しかしエリアによって、たとえば若い世代が圧倒的に多い住宅地などでは、紙のチラシをやめるスーパーが出てきてもおかしくはない。
そして5年後、10年後を想定したときに、どうなっているのか。次の利便性を考えれば、電子チラシを見て、必要な食材をオンラインで発注できればもっと便利ではないか。発注したアイテムを配送までサービスしてもらうのか(これには当然コストがかかってくるだろうけれど)、あるいは取りまとめておいてもらって店(もしくは近隣のデポセンターみたいなところ)まで取りに行くのか。そこはユーザーに任せるような時代が来ることも考えられる。
もし、シュフー!がそこまで読んでいたとすれば、表面化はしていないもののバックヤードではそこまでの受発注システムを備えている可能性もある。あるいは少なくともそこまでの拡張性を踏まえたシステム構築をしていることは十分に考えられるだろう。
そして、仮にシュフー!がそこまでのビジネスモデルを踏まえているとすれば、これはネットビジネスでの画期的なモデルとなり得るのではないだろうか。通常のネットビジネスといえば、とりあえずアクセスユーザーを集め(=サイトの媒体価値を高め)、広告フィーを稼ぐGoogle型である。ところがシュフー!の場合は、コンテンツそのものが広告であり、収益は広告掲載と受発注インフラの使用料ということになる。これはまったく新しいネットビジネスモデルだと思うのだけれど、どうなのだろうか?
ただ、このサイトを運営しているのが凸版印刷であり、同社がネットの出現時からネットの脅威と紙媒体の衰退に対して危機意識を持っていたとすれば、そこまでの構想を持っていることはあり得ると思う。
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