ビジネスとしてのプロ野球


年間120万円vs1500万円以上


日米プロ野球選手のOBがもらえる年金である。

私は現役生活15年以上のOBが対象になる最高額を受給しているが,それは年額120万円。大リーグで7年もやれば、50歳から1500万円以上が終身保証だ(日本経済新聞2008年10月7日付朝刊37面)。


上記の文章を書いている「私」とは阪神タイガースOBの鎌田実さん。日本選手の年金は月額120万円の誤りでは決してない。つまりアメリカとは10倍以上の差があることになる。しかも

なかなか信じてもらえないが、10年ほど前までは今の半額だったのである(前掲紙)


もちろんプロ野球をめざす選手の動機がお金だけにあるとは思わない。プロになるということは、それだけに専心努力するわけだ。一年中ずっと野球漬けの生活を送ろうと思えば、何よりもまず好きでなければ続かないだろう。では、好きだけでやっていけるのか。


ただ好きなことをやって、それで食べていけるのであれば誰も苦労はしない。好きなことを一生懸命やる、それが誰かにとっての価値となる。だから対価を得ることができる。その対価で日々の糧を得る。これが世の中の仕組みというものだ。だから好きなことに関する才能にまず恵まれ、それをやる機会を得て、一人でも多くの人から対価を得られてこそ、人は好きなことを続けられる。


プロ野球の選手だって食べていかなければならない。稼ぎは多ければ多いほどいいのは当たり前である。ましてや仕事をやる上で抱えるリスクは極めて大きい。ケガや故障をして活躍できなければ解雇されてしまうだろう。あるいは体はどこも悪くなくとも、結果としてよい成績を出せなければやはり辞めなければならない。むしろ毎年のように好成績をあげ続けられる選手など、本当にごく一握りといったほうが正確だろう。


引退後の生活をどうするのか。プロ野球関係の仕事に就ける人が、全引退選手のうちどれぐらいの割合になるかといえば、直感的には多くて3割程度だと思う。残りの人たちは、まだ30年から40年は続く人生をどうやって過ごすのかを考えなければならない。


その時の経済的な支えが、最高でも年間120万円の年金である。


自分の能力をメジャーリーグが評価してくれるのであれば、引退後までの人生設計を踏まえて挑戦したいと考える選手がでてくるのは当然ではないか。日本のアマからいきなりメジャーへ行こうとする田沢純一選手はパイオニアとして賞賛されこそすれ、そのチャレンジングな行動を制限するような動きがあってはならない。強くそう思う。


ここで思い起こすべきは、野茂さんが大リーグ挑戦を宣言した時の騒動だ。いわゆる識者たちは一様に、しかもプロ野球OBが先頭に立って野茂さんの勇気を萎えさせるような言動に走った。しかし、野茂さんはそんな雑音には耳を貸さず、見事なまでの先駆者となった。日本プロ野球界にとってだけではなく、長引いたストの影響で人気が落ちていたメジャーリーグに再び観客を取り戻しさえしたのだ。


イオニアスピリットこそを何より大切にするアメリカ人気質に、野茂さんがピッタリフィットした結果である。


そしていま、田沢選手が第二の野茂になろうとしている。にも関わらず日本プロ野球機構が取ろうとしている対応はあまりにも情けないではないか。ドラフトを拒んで海外球団と直接契約した選手は帰国後、一定期間ドラフトの対象とならない。こんな馬鹿げたルールで選手に脅しをかけるらしい。


ガラパゴス化といえば、ケータイ業界だけの話だと思っていたら、プロ野球もとんでもなくガラパゴスだったようだ。それじゃダメなんじゃないんだろうか。そんな内向きの論理だけに支えられたビジネスモデルでは、何より従来のプロ野球ファンが離れていってしまう。今でさえすでに、ペナントレース最後のデッドヒートを繰り広げている阪神や巨人戦のテレビ中継がなくなっているのだ。テレビ局は冷静に、視聴率が取れない=ビジネスにならないと判断している結果だろう。


テレビ局が見放し、ファンが見放し、能力の高い選手ほど見限ってしまうような日本のプロ野球にだけはなってほしくない。切に願う。ここは一番、田沢選手に「せっかくメジャーから声をかけられたんだから、思いきってやって来い。もし、うまくいかなかったら日本に戻ってくれば良いから」ぐらいのことを、長嶋さんや星野さんあたりが一発バシッといってくれないものだろうか。



昨日のI/O

In:
デリリウムカフェ菅原氏インタビュー
Out:


メルマガ最新号よりのマーケティングヒント

「クルマの技術を応用する」
http://blog.mag2.com/m/log/0000190025/
よろしければ、こちらも。

□InsightNow最新エントリー
「勝ち馬(=Google)に乗る」
http://www.insightnow.jp/article/2087

昨日の稽古:富雄中学校武道場

・縄跳び/柔軟体操
・基本稽古
・ミット稽古
・受けの稽古
・組手稽古