24年後のはっくねる



プロモーションビデオの彼は少年にしか見えなかった


Holding Back The Years/Simply Red。高音がしわがれ声に変わるギリギリのところでバランスを取ったような声は、一度聞いたらたぶんたいていの人の耳に確実に残る。このプロモーションビデオで24年前のはっくねる氏はベレー帽をかぶっていて、くしゃくしゃの赤毛をたらしている。


かっこいいという評価とはちょっと違う。でも、初めて聞いたときに彼の声にしっかりとつかまってしまった。そしてこの音楽を初めて耳にした季節が秋だったことも、なぜかはっきりと覚えている。もしかしたらPVに写っているイギリスの風景が、秋のうっすらと黄色い光を帯びていることに引っ張られた結果の錯覚なのかもしれないけれど。


なぜ、唐突にSimply Redなのかといえば、今日たまたまテレビでライブを見たから。初めて彼のPVを見たときからたぶん24年が経っているはずなのに、はっくねる氏の声はちっとも変わってなかった。そして今日初めて、この人が自分とほとんど同世代であることも知った。もっとも彼が過ごしてきた24年間と私のそれは似ても似つかないというか、そもそも比べることさえおこがましいとは思うが。


ただ、この人が自分とほぼ同じ歳なのだということが、なぜかひっかかった。そして、我ながらまったく途方もないことを考えたものだとは思うのだけれど、なぜ自分はロックシンガーになれなかったのだろうという問いが頭の中に湧いてきたのだ。すると、自分にはこれまで生きてきた間に一体どれだけたくさんの選択肢があったのかとか、どこでどんな決断をしたんだろうなどという思いが後から後から浮かんできた。


そう、どうして自分がシンガーになれなかったのか、なんて答えははっきりしている。神の声を授からなかったからだ。はっくねる氏はそれを持っている。デビッド・ボウイも持っている。ミック・ジャガーも、ブライアン・フェリーも、ジョン・レノンも、ピーター・ハミル小山田圭吾も持っている。自分には、彼らのようなボイスは与えられなかった。それだけのことだ。


でも、もし与えられていたら、どうなっていたのか。そんなことはわからない。声だけいくらタレンティッドだったとしても、リズム感がなかったりメロディーセンスがなければ(今の自分がそうだ)やなりシンガーになどなれなかっただろう。


では、はっくねる氏は、いつ自分の才能に気づいたのだろう。あるいはシンガーとしての才能を持って生まれた人はみんな、いつか、自分の才能に必ず気づくのだろうか。気づく人は、何歳ぐらいに、どんなキッカケでそれを知るのだろうか。自分の才能を自覚した人がみんな、シンガーになれるわけでもないのだろう。


ともかく24年後に見たはっくねる氏は、24年前よりも確実に歌がうまくなっていた。すごいことだと思う。そしてSimply Redのステージを見ていると、もう一つ妙な思いが浮かんできた。もし次に生まれ変わることができるのなら、世界を旅して回るブルースバンドのギターメンになりたい、などと妄想した。



昨日のI/O

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昨日の稽古:

・懸垂、レッシュ式腹筋、ジョギング